前橋市の出生率は1.41|待機児童0人【2018〜2022年】

前橋の人口減少について語られるとき、少子化という言葉が一緒に出てくることが多い。子どもが生まれないから人が減る、という説明である。

ただ、出生率の数字を見ると、その説明は前橋には当てはまらない。前橋の合計特殊出生率は全国も群馬県も上回っている。保育所の定員も余っていて、待機児童はいない。

世帯の形も見ておきたい。ひとり親世帯の記事で、前橋の母子世帯が1,731世帯であることを示した。

この記事では、市区町村別の合計特殊出生率と、保育所等の定員・待機児童数を並べる。前橋で何が起きているのかを、生まれる側と受け入れる側の両方から見る。

前橋市の合計特殊出生率は1.41。全国1.33、群馬県1.38をどちらも上回る。

群馬県内35市町村では11位、12市の中では4位。高崎市1.40より上にいる。

保育所等の利用定員9,221人に対し、実際の利用は7,809人。1,412人分が空いており、待機児童は0人である。

対象範囲

合計特殊出生率は、厚生労働省「平成30年〜令和4年 人口動態保健所・市区町村別統計」による。2018年から2022年までの5年分をまとめて算出した値である。市区町村単位の合計特殊出生率はこの形式でしか公表されておらず、単年の数値は存在しない。次回の公表は令和5〜9年分になる。

保育所等の定員・利用児童数・待機児童数は、こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」による。2025年4月1日現在の断面である。定員は保育所、幼保連携型認定こども園、幼稚園型・地方裁量型認定こども園、地域型保育事業(小規模・家庭的・事業所内・居宅訪問型)の合計で、企業主導型保育事業と地方単独事業は含まない。

両者は調査も対象年も異なる。同じ時点の比較ではないことを踏まえて読んでほしい。

前橋の出生率は、県内で上位にある

前橋市の合計特殊出生率は1.41である(厚生労働省「平成30年〜令和4年 人口動態保健所・市区町村別統計」統計表、2018〜2022年)。同じ期間の全国は1.33、群馬県は1.38で、前橋はそのどちらも上回っている。

群馬県内35市町村の中では11位。12市に絞ると4位になる。前橋より上にいるのは太田市1.53、伊勢崎市1.47、みどり市1.42の3市だけで、高崎市は1.40で前橋のわずかに下である。

群馬県内12市の合計特殊出生率。太田1.53、伊勢崎1.47、みどり1.42、前橋1.41、高崎1.40、最下位は桐生1.15
群馬県内12市の合計特殊出生率(2018〜2022年の5年平均)
合計特殊出生率 1.41 全国1.33/群馬1.38を上回る
県内12市での順位 4位 35市町村では11位
保育所等の空き 1,412人分 待機児童は0人

県内で最も低いのは桐生市の1.15で、町村を含めると板倉町の1.10が最下位になる。最も高いのは吉岡町の1.65である(同統計表)。

参考までに、同じ期間の東京都は1.11、東京都区部は1.08だった。前橋との差は0.30ポイント以上ある。

県内35市町村をすべて並べると、次のようになります。

順位市町村合計特殊出生率
1吉岡町1.65
2太田市1.53
3嬬恋村1.50
4伊勢崎市1.47
4大泉町1.47
6高山村1.46
6昭和村1.46
8榛東村1.45
9片品村1.43
10みどり市1.42
11前橋市1.41
12高崎市1.40
13上野村1.37
13長野原町1.37
13川場村1.37
16中之条町1.36
17神流町1.34
17南牧村1.34
17みなかみ町1.34
20玉村町1.33
21千代田町1.32
22草津町1.31
22邑楽町1.31
24沼田市1.29
24甘楽町1.29
26明和町1.28
27渋川市1.25
28富岡市1.24
28安中市1.24
30館林市1.22
30藤岡市1.22
32下仁田町1.21
33東吾妻町1.20
34桐生市1.15
35板倉町1.10

保育の枠は、1,412人分余っている

2025年4月1日現在、前橋市の保育所等利用定員は9,221人。実際に利用している児童は7,809人である(こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」)。差は1,412人分で、定員充足率は84.7%になる。

待機児童は0人である。前橋だけではなく、群馬県内35市町村のすべてが0人だった。

群馬県内5市の保育所等利用定員と実際の利用児童数。前橋は定員9,221人に対し利用7,809人で充足率84.7%
群馬県内5市の保育所等利用定員と利用児童数(2025年4月1日現在)

県内5市を比べると、最も枠が詰まっているのは伊勢崎市で充足率94.5%。次いで太田市88.9%、高崎市87.3%、前橋市84.7%、桐生市75.2%と続く。前橋は下から2番目である。

全国の定員充足率は88.4%で、前年から0.4ポイント下がった。前橋はこれを3.7ポイント下回っている。全国の待機児童数は2,254人、待機児童がいる市区町村は1,741市区町村のうち211にとどまる(同取りまとめ)。

この数字をどう読むか

ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。

前橋が失っているのは、生まれた子どもではなく育った20代である

前橋市の人口社会増減の記事で、前橋は2025年に96人の転入超過だったこと、そして失っているのは20〜24歳だけ(日本人で486人の転出超過)であることを示した。65歳以上はむしろ329人の転入超過である。

この記事の数字を重ねると、構図がはっきりする。出生率は県内上位、保育の枠も余っている。それでも人口が減っていくのは、生まれる数が足りないからではなく、生まれて育った人が20代で出ていくからである。

つまり前橋は、子どもを産み育てる場所としては機能していて、20代を留める場所としては機能していない。この二つは別の問題で、別の対策が要る。

「保育の受け皿を増やす」という打ち手は、前橋には効かない

待機児童ゼロで、定員が1,412人分空いている。この状態で保育所を増やしても、埋まらない枠がさらに増えるだけである。前橋の子育て環境の制約は、少なくとも枠の数ではない。

むしろ逆の心配がある。定員充足率は全国でも下がり続けており、前橋は全国平均をさらに下回っている。利用児童数に対して定員が多すぎる状態が続けば、施設の運営は苦しくなる。全国で保育所等利用定員が前年比1.5万人の減少に転じたのは、そのあらわれと見ることもできる。

受け皿の量ではなく、質や使い勝手のほうに論点が移っているということでもある。ただし、この調査からは保育士の数も、開所時間も、保育料も分からない。ここから先は別のデータが要る。

将来人口の減少は、出生率の低さでは説明できない

前橋の将来人口の記事で、2050年に18%減という推計を示した。県内主要4市で最も速いペースである。

ただ、その前橋の出生率は県内で上位にある。出生率が低いから将来人口が減る、という因果では説明がつかない。減るのは、子どもを産む年代の人口そのものがすでに少なく、さらに20代の転出でその層が削られていくからである。

前橋の高齢化率の記事で、高齢化率が上がる理由は高齢者が増えるからではないことを示した。それと同じ構造である。分母のほうが動いている。

このデータの限界

  • 市区町村別の合計特殊出生率は5年分をまとめて算出される。単年の推移は追えない。次回の公表は令和5〜9年分になる。
  • 合計特殊出生率は、その年の年齢別出生率がそのまま続いた場合に女性が一生に産む子どもの数を示す推計値である。実際の出生数ではない。
  • 人口規模が小さい自治体ほど、少数の出生の増減で数値が大きく振れる。町村の数値を市と同列に比べるときは注意が要る。
  • 保育所等の定員・利用児童数は2025年4月1日時点の断面である。年度途中の入所や退所は反映されていない。
  • 待機児童数は国の定義によるもので、育児休業中の場合や特定の施設のみを希望している場合などは含まれない。いわゆる隠れ待機児童は数に入っていない。
  • 定員充足率は、公表されている利用児童数を利用定員で割って当サイトが算出した。全国計では公表値の88.4%と一致することを確認している。
  • 出生率と保育のデータは、調査も対象年も異なる。同じ時点の比較ではない。

よくある誤解

「前橋は少子化が特に深刻」

出生率で見るかぎり、前橋は県内で上位である。1.41は全国1.33も群馬県1.38も上回る。前橋で深刻なのは出生率の低さではなく、子どもを産む年代の人口が減っていることのほうである。

「待機児童ゼロなら保育は十分」

国の待機児童の定義からは、育児休業中の場合や特定の施設のみを希望している場合が外れる。ゼロという数字は、希望どおりに入れた家庭がすべてという意味ではない。また、ゼロであることと定員が1,412人分空いていることは同じ事実の裏表でもある。

「出生率が高ければ人口は増える」

前橋は出生率が県平均を上回りながら、人口は減っている。人口の増減は、出生と死亡と移動の合計で決まる。出生率はそのうちの一つでしかない。

Q&A

なぜ毎年の出生率が出ていないのですか

市区町村単位では、単年だと出生数が少なく数値が安定しないためです。厚生労働省は5年分をまとめた値を、5年ごとに公表しています。都道府県単位であれば毎年の数値が出ますが、市区町村単位はこの形式のみです。

1.41という数字は高いのですか、低いのですか

相対的には高く、絶対的には低い、というのが正確です。全国1.33や群馬県1.38よりは高い一方、人口を維持するのに必要とされる水準は約2.07です。前橋も群馬も全国も、その水準を大きく下回っています。

隠れ待機児童とは何ですか

国の待機児童の定義から外れる児童を指す通称です。育児休業を延長している場合、特定の施設のみを希望している場合、自治体が独自に補助する施設を利用している場合などが該当します。国の公表値には含まれないため、実感との差が生まれる要因になります。保育施設への入所の申し込み方法は、前橋市の令和9年度保育関係施設入所申し込みのご案内のページで確認できます。

定員が余っているのに保育士が足りない、という話を聞きます

この調査から保育士の数は分かりません。定員は施設が受け入れられる児童数として届け出られた数値であり、実際に配置されている職員数とは別のものです。両者の関係を見るには、別の統計が必要になります。

次の更新はいつですか

保育所等関連状況取りまとめは毎年8月末ごろに、前年度4月1日時点の数値が公表されます。市区町村別の合計特殊出生率は5年ごとで、次回は令和5〜9年分になります。

出典

  • 厚生労働省「平成30年〜令和4年 人口動態保健所・市区町村別統計」統計表 市区町村別合計特殊出生率・標準化死亡比/概況ページ
  • こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」定員・申込者の状況/公表ページ

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(2025年4月1日)
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更新履歴

  • 2026年9月22日 公式窓口へのリンクを追加
  • 2026年9月21日 県内35市町村の一覧表を追加
  • 2026年9月2日 公開