財政の記事で財政力指数0.77を、歳出の記事で何に使っているかを見た。残るは入りの側である。
前橋市の歳入1,590.9億円は、どこから来ているのか。
県内5市を並べると、財政力指数という指標の中身が見えてくる。
前橋市の歳入に占める地方税は34.4%(2024年度)。5市では3番目で、太田45.1%、高崎35.6%が上にいる。
財政力指数の順序と地方税の割合の順序は、2022年度は5市で完全に一致したが、2024年度は伊勢崎と前橋が入れ替わった。
1人当たりの地方税は前橋166,422円で、伊勢崎150,845円を上回る。
対象範囲
2022年度までは総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」D行政基盤(統計表ID 0000020104)、2023年度と2024年度は総務省「市町村別決算状況調」による。どちらももとは各自治体の普通会計決算で、2022年度の値は両者で全項目が一致することを確かめた。人口は住民基本台帳人口(翌年1月1日)を使った。
最新は2024年度(令和6年度)である。歳入決算総額と地方税は1980年度から取れるが、地方交付税や国庫支出金などの内訳は2000年度からしか収録されていない。
歳入の主な項目は次のとおりである。
| 項目 | 性格 | 中身 |
|---|---|---|
| 地方税 | 自主財源 | 市町村民税、固定資産税など。市が自ら集める税 |
| 地方交付税 | 依存財源 | 国が集めた税を、財源が足りない自治体に配分するもの。財政力が低いほど多く配られる |
| 国庫支出金 | 依存財源 | 国が使い道を決めて出す補助金。生活保護費や公共事業への負担金など |
| 県支出金 | 依存財源 | 県が使い道を決めて出す補助金 |
| 地方債 | 依存財源 | 借入金。将来の返済が公債費になる |
構成比、1人当たり額、倍率は当サイトが算出した。公表値ではない。前橋市は2004年に大胡町・宮城村・粕川村、2009年に富士見村と合併している。時系列の数値には、その分の増加が含まれる。
財政力指数の順序と地方税の割合の順序は、伊勢崎と前橋で入れ替わった
前橋市の歳入決算総額は1,590.9億円。うち地方税が547.7億円で、構成比は34.4%である(総務省「市町村別決算状況調」2024年度)。
県内5市で並べると、太田45.1%、高崎35.6%、前橋34.4%、伊勢崎32.9%、桐生20.9%。前橋は3番目である。2022年度は33.6%で4番目だった。

財政力指数と並べると、2022年度は5市の順序が完全に一致していた。2024年度は太田0.94、高崎0.81、伊勢崎0.80、前橋0.77、桐生0.55で、地方税の割合とは伊勢崎と前橋の順が入れ替わる。
財政力指数は基準財政収入額を基準財政需要額で割った値で、分子の大半は地方税である。順序が近くなるのは定義から予想できる。ただし財政力指数は過去3年度の平均で、分母の基準財政需要額も市ごとに違うため、1か所の入れ替わりは起きうる。
前橋の地方税547.7億円の内訳は、市町村民税240.3億円と固定資産税228.0億円。この2つで85.5%を占める。
1人当たりで見ても、前橋は3番目
構成比は歳入総額に対する割合なので、総額の大きさに左右される。1人当たりの実額でも比べる。

1人当たり地方税は太田203,376円、高崎178,232円、前橋166,422円、伊勢崎150,845円、桐生126,619円。2022年度は構成比と1人当たりで伊勢崎と前橋の順が逆だったが、2024年度はどちらも前橋が上になった。
伊勢崎は歳入総額が837.7億円から971.2億円に増えたため、地方税はほぼ同じ321.1億円から319.9億円でも、構成比は38.3%から32.9%に下がった。構成比と実額は別の話である。
地方交付税の側はもっと差が大きい。1人当たりで桐生111,390円、前橋50,464円、高崎44,788円、伊勢崎42,619円、太田9,494円。桐生は太田の11.7倍を受け取っている(2022年度は7.9倍)。
財政力が低い自治体ほど交付税が多く配られる。制度がそう設計されているためで、桐生の数字は制度が機能していることを示している。
税収はバブル期までに2.1倍。その後34年で1.37倍
地方税は1980年度から取れる。2024年度までを並べる。

1980年度187.5億円から1990年度400.5億円へ、10年で2.14倍になった。そこから2024年度547.7億円まで、34年で1.37倍である。
1995年度463.2億円から2005年度467.2億円まで、10年間ほぼ横ばいだった時期もある。伸びたのは1980年代で、以降は緩やかである。
ただし2004年と2009年の合併で市域と人口が増えているため、この増加分には合併による分が含まれる。実質的な伸びはこれより小さい。
この数字をどう読むか
ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。
財政3部作で見えたこと
3本の記事で、前橋の財政の輪郭が出た。整理しておく。
入りの側は、県内で中位である。地方税の割合34.4%は5市で3番目、1人当たりでも3番目。財政力指数0.77は全国1,718団体中254位で上位14.8%。課税対象所得の記事で示した全国234位・上位13.4%とほぼ同じ位置にいる。
出の側は、総額では高崎とほぼ同じである。歳出の記事で示したとおり、1人当たり歳出は前橋469,794円・高崎483,784円で差は3%ほど。人件費も扶助費も普通建設事業費もほぼ同じだった。
違うのは配分である。公債費が1.20倍。2022年度は普通建設事業費も1.33倍だったが、2024年度は0.99倍で差がなくなった。いま多いのは返す額である。将来負担比率55.5%は5市で最も高いが、高崎が41.0%に上がり差は縮んだ。
地方債の割合は5市で3番目。高崎との差はなくなった
歳入に占める地方債は前橋6.0%。桐生16.1%、伊勢崎7.0%に次いで5市で3番目で、太田5.8%、高崎5.6%を上回る。1人当たりでは前橋28,878円、高崎28,249円で1.02倍である。2022年度は7.6%で5市2番目、1人当たり1.32倍だった。
歳出で見た普通建設事業費が1.33倍から0.99倍になったのと、同じ向きの変化である。造る額の差がなくなり、借りる額の差もなくなった。入りと出が対応している。
桐生は2年で8.8%から16.1%に上がった。同じ年度の普通建設事業費の構成比も19.0%で5市最高である。同じ「地方債が多い」でも、投資が多いのか収入が足りないのかで意味が変わる。
1980年代の伸びは、もう起きない
地方税は10年で2.14倍になった時代がある。1980年度から1990年度である。財政の記事で、財政力指数のピークが1987年度の0.98だったことを示した。時期が重なる。
その後34年の伸びは1.37倍。合併分を含めてこの数字である。地価と所得が同時に上がる局面は、この45年で一度だけだった。
将来人口の記事で2050年に18%減という推計を、高齢化率の記事で39.7%まで上がる見通しを示した。市町村民税は働く人の所得にかかる。支える人が減る前提で、税収が伸びる材料は見当たらない。
一方で固定資産税は土地と建物にかかるため、人口減の影響を受けにくい。前橋の地方税の85.5%を市町村民税と固定資産税が占めており、そのうち固定資産税が228.0億円と41.6%を担っている。この構成が今後の支えになるかは、地価と住宅ストックの動き次第である。
このデータの限界
- 2022年度までは社会・人口統計体系、2023年度と2024年度は市町村別決算状況調の値である。2022年度で両者の全項目が一致することを確かめてつないだ。
- 地方交付税や国庫支出金などの内訳は2000年度からしか収録されていない。それ以前の構成は分からない。
- 構成比、1人当たり額、倍率は当サイトが算出した値である。公表値ではない。
- 前橋市は2004年に大胡町・宮城村・粕川村、2009年に富士見村と合併している。時系列の増加には合併による分が含まれる。
- 1人当たりの算出には住民基本台帳人口(翌年1月1日)を使った。国勢調査人口は毎年の値がないためである。
- 2020年度の国庫支出金634.6億円は特別定額給付金による一時的な増である。
- 普通会計決算に基づくもので、公営企業会計は含まれない。
- 地方交付税には普通交付税と特別交付税が含まれる。この統計では区分されていない。
よくある誤解
「地方税の割合が高い自治体ほど豊か」
構成比は歳入総額に対する割合なので、総額の大きさで動きます。2022年度は伊勢崎が構成比38.3%で前橋33.6%を上回りながら、1人当たり地方税は151,383円で前橋163,700円を下回っていました。2024年度は伊勢崎の歳入総額が971.2億円に増え、構成比は32.9%に下がっています。
「交付税をもらっているのは財政が苦しいから」
制度の設計どおりです。地方交付税は財源が不足する自治体に配分される仕組みで、財政力が低いほど多く配られます。全国1,718団体のうち、交付税を受け取らない不交付団体は77団体だけです(2024年度)。
「税収が増えているから財政は良くなっている」
1990年度から2024年度の伸びは1.37倍で、合併による市域の拡大分を含みます。同じ期間に民生費は増え続けており、財政力指数は0.92から0.77へ下がっています。税収の額だけでは判断できません。
Q&A
自主財源と依存財源の違いは
自主財源は市が自ら集めるもので、地方税、使用料、財産収入、諸収入などが該当します。依存財源は国や県から配分されるもの、または借入で、地方交付税、国庫支出金、県支出金、地方債が該当します。前橋の自主財源比率は47.3%で、5市では太田55.5%、高崎51.7%が上にいます(2024年度)。
市町村民税と固定資産税はどちらが多いのですか
前橋では市町村民税240.3億円、固定資産税228.0億円で、市町村民税がやや多くなっています(2024年度)。5市では伊勢崎が固定資産税のほうが多く、製造業の設備投資が反映されていると考えられます。太田も2022年度は固定資産税のほうが多かったものの、2024年度は市町村民税214.5億円が固定資産税195.7億円を上回りました。
合併の影響はどのくらいですか
この統計からは分離できません。2004年に3町村、2009年に1村と合併しており、その分の人口と税収が加わっています。時系列を読むときは、この点を踏まえる必要があります。
財政3部作は完結ですか
入りと出と指標を一通り扱いました。ただし何を造ったか、基金がどれだけあるか、公営企業がどうなっているかは扱っていません。必要に応じて稿を改めます。
次の更新はいつですか
年度次の統計です。2025年度分が公表され次第、更新します。
出典
- 総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」D行政基盤(統計表ID 0000020104)、A人口・世帯(統計表ID 0000020101)/e-Stat 地域統計
- 総務省「市町村別決算状況調」令和5年度・令和6年度(都市別)/総務省 地方財政状況調査関係資料
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| No | データ名 | 出典 | ダウンロード |
|---|---|---|---|
| ㊱ | 県内5市の歳入内訳 前橋市は1980〜2024年度の時系列 | 総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」D行政基盤(統計表ID 0000020104)、「市町村別決算状況調」 | CSVを保存 |
更新履歴
- 2026年9月24日 2024年度の決算に更新(結論を見直し)
- 2026年9月6日 公開
