前橋には利根川と広瀬川が流れ、北に赤城山がある。高齢化率の記事で2050年に39.7%になる推計を示した。避難が難しい人は増えていく。
観光の記事で、赤城山が県の観光統計における調査地点であることを示した。山は災害の要因にもなり、人を呼ぶ資源にもなる。
では、災害はどれだけ起きているのか。
23年間の災害復旧費は1人当たり898円。桐生市10,395円の8.6%にとどまる。太田市319円に次いで少ない。
発生したのは23年中11年。桐生と高崎の19年に対し、半分ほどである。
ただし消防団員は49年で27.1%減った。備える側の人数は、着実に減っている。
対象範囲
消防費と災害復旧費は総務省「社会・人口統計体系」D行政基盤(統計表ID 0000020104)による。市区町村別で取れるのは2000〜2022年度の23年分である。1980年度からの枠はあるが、1999年度以前は数値が入っていない。
消防職員数と消防団員数は都道府県版(統計表ID 0000010111)による。市区町村別は公表されていないため、この記事の人数は群馬県の値である。
1人当たりの額は当サイトが算出した。市区町村の人口は国勢調査の年しか取れないため、2022年度の費用を2020年の人口で割っている。
水害の被害は国土交通省「水害統計調査」(統計表ID 0003155664)による。市区町村別が取れるのは2006〜2014年の9年分で、それ以降は更新されていない。
ハザードマップ、避難所の数と収容人数は、この記事では扱わない。前橋市の公表はPDFのみで、収容人数の記載がない。国土数値情報にはGISデータがあるが、集計済みの数値ではない。
災害復旧費は、市によって32.6倍違う
23年間の災害復旧費を、人口で割って比べる。

最も多いのは桐生市の10,395円、最も少ないのは太田市の319円。32.6倍の開きがある。
前橋市は898円で、5市中4番目。桐生市の8.6%にとどまる。
発生の頻度も分かれる。桐生市と高崎市は23年中19年、前橋市は11年、伊勢崎市と太田市は4年。毎年のように出る市と、ほとんど出ない市がある。
水害の被害額も見ておく。前橋市の2006〜2014年の9年で、2011年の868,218千円が合計の76.2%を占める。被災家屋があったのは2008年4棟、2010年5棟、2011年12棟の3年だけだった。
割合が下がったのは、消防費が減ったからではない
消防費が歳出に占める割合は、2010年度3.95%から2022年度2.79%へ下がった。1.16ポイントの低下である。

22年間で消防費は21.4%増、歳出は48.1%増。どちらも増えているが、歳出のほうが速い。
転換点は2020年度である。歳出が1年で35.2%増えた。同じ年に消防費は11.1%減っている。割合が3.62%から2.38%へ落ちたのは、この年の歳出増による。
2020年度の歳出増は特別定額給付金などが考えられるが、この統計に内訳はない。確かめられない。
1人当たりの消防費で見ると、前橋市13,048円は5市で4番目。桐生市21,060円が最も高く、前橋市の1.61倍である。
団員が減り、職員が増えた
備える側の人数を見る。

消防団員は1975年度14,572人から2024年度10,630人へ、27.1%減った。
一方で消防職員は1,530人から2,636人へ72.3%増えている。逆の方向に動いている。
団員を職員で割ると、1975年度の9.5倍から2024年度の4.0倍へ。担い手の構成が入れ替わった。
直近20年(2004→2024年度)で見ても、団員は17.7%減、職員は8.7%増である。全国も団員18.8%減、職員8.6%増でほぼ同じ動きをしている。
どこに、いくつあるか
団員が減っているという数字に、配置を重ねてみる。

前橋市の消防施設は12か所。消防局(中央消防署と同一庁舎)、消防署5、分署6である。
一方、消防団の拠点は64か所ある。6方面団・20分団で、63の部と器具置場1である。
署1か所あたり5.3拠点。地図では、署と署のあいだを団の拠点が埋めている。
団員が減るということは、この64の点が薄くなるということである。
署は12か所に分かれている
消防署5は中央・東・西・南・北。市内を5つの区域に分けている。
分署6は千代田・赤坂・宮城・利根・城南・白川。宮城・白川は合併した旧町村の区域にある。
| 施設 | 区分 | 住所 | 地域 |
|---|---|---|---|
| 消防局・中央消防署 | 本部・署 | 朝日町四丁目22-2 | 中央 |
| 千代田分署 | 分署 | 千代田町一丁目1-21 | 中央 |
| 赤坂分署 | 分署 | 上泉町1425-1 | 中央 |
| 東消防署 | 署 | 樋越町62-1 | 東 |
| 宮城分署 | 分署 | 馬場町896 | 東 |
| 西消防署 | 署 | 大渡町二丁目3-5 | 西 |
| 利根分署 | 分署 | 小相木町392-1 | 西 |
| 南消防署 | 署 | 西善町766-2 | 南 |
| 城南分署 | 分署 | 二之宮町1150-3 | 南 |
| 北消防署 | 署 | 上細井町1794-1 | 北 |
| 白川分署 | 分署 | 富士見町小沢191-1 | 北 |
消防局と中央消防署は同じ庁舎にある。そのため12施設だが、地図上は11の点になる。
各施設の連絡先や担当区域は、前橋市消防局の一覧ページで確認できる。
団の拠点は64か所
消防団は6つの方面団に分かれる。方面団ごとの拠点数は次のとおりである。
| 方面団 | 拠点数 |
|---|---|
| 第1方面団 | 6 |
| 第2方面団 | 8 |
| 第3方面団 | 11 |
| 第4方面団 | 15 |
| 第5方面団 | 15 |
| 第6方面団 | 9 |
| 合計 | 64 |
第4方面団と第5方面団が15拠点で最も多い。第1方面団は6拠点で最も少ない。
各分団の担当地域と所在地は、前橋市消防局の消防団のページで公表されている。
配置と人数は別の話である
この節で示したのは拠点の数であり、団員の数ではない。
前の節で見たとおり、市町村別の消防団員数は公表されていない。この記事で扱った27.1%減は群馬県全体の数字である。
拠点が64あることと、そこに何人いるかは別である。拠点の数が変わらなくても、1拠点あたりの人数は減りうる。
この一覧は2026年9月時点のものである。
この数字をどう読むか
ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。
地形と一致している
災害復旧費が多いのは桐生市と高崎市。少ないのは太田市と伊勢崎市である。
桐生市は山地が市域の多くを占め、高崎市も西部に山間部がある。太田市と伊勢崎市は平野が中心である。
前橋市は898円で、平野の2市に近い水準にある。市域の北部に赤城山の南麓が広がるが、市街地と人口の多くは平野部にある。
ただしこの統計に地形の区分はない。関係があるように見えるというだけで、確かめてはいない。
1人当たりで見ると、小さい市ほど高い
1人当たりの消防費は桐生市21,060円、太田市17,496円、伊勢崎市14,516円、前橋市13,048円、高崎市12,608円。
人口は高崎372,973人、前橋332,149人、太田223,014人、伊勢崎211,850人、桐生106,445人。人口が少ない市ほど1人当たりが高い。
消防は署所と車両と人員を一定数そろえる必要がある。人口が少なくても、必要な規模は大きくは変わらない。
歳出の記事で、1人当たり歳出は前橋469,794円・高崎483,784円で差が3%ほどしかないことを示した。費目によって、規模の効き方が違う。
分子と分母、また
消防費の割合が下がったのは、歳出が増えたからだった。消防費そのものは22年間で21.4%増えている。
同じ形は他の記事でも扱った。高齢化率の記事で2050年に39.7%になるのは高齢者が増えるからではなく15〜64歳が減るから、年金の記事で依存度79.8%が高いのは年金が多いからではなく勤め先収入が少ないから。
割合を見るときは、分子と分母のどちらが動いているかを確かめる必要がある。
減っているのは、お金ではなく人
消防費は増え、災害復旧費も少ない。それでも消防団員は49年で27.1%減った。
職員が72.3%増えたことで、総数の減り方は緩やかになっている。ただし団員と職員は役割が違う。団員は地域に住み、平時は別の仕事をしている。
将来人口の記事で2050年に18%減、高齢化率の記事で15〜64歳が28.4%減る推計を示した。団員のなり手も、同じ母数から出てくる。
ただし団員数の市区町村別は公表されていない。前橋市で何人減ったかは分からない。
このデータの限界
- 1人当たりの額、割合、指数、増減率は当サイトが算出したものである。公表値ではない。
- 市区町村別の消防費・災害復旧費は2000〜2022年度しか数値が入っていない。1999年度以前と2023年度以降は取れない。
- 市区町村の人口は国勢調査の年しか取れないため、2022年度の費用を2020年の人口で割っている。
- 消防職員数と消防団員数の市区町村別は公表されていない。この記事の人数は群馬県の値である。
- 水害統計調査の市区町村別は2006〜2014年で更新が止まっている。
- ハザードマップ、避難所の数と収容人数は扱っていない。前橋市の公表はPDFのみで収容人数の記載がなく、国土数値情報のGISデータは集計済みの数値ではない。
- 2020年度の歳出増の内訳は、この統計では確かめられない。
- 災害復旧費と地形の関係は、この統計からは確かめられない。地形の区分が含まれていない。
- 災害復旧費は市が負担した額であり、被害の大きさそのものではない。国庫補助の有無や災害の種類によって変わる。
よくある誤解
「群馬は災害が少ない」
市によって大きく違います。23年間の災害復旧費は1人当たりで桐生市10,395円、太田市319円で32.6倍の開きがあります。前橋市は898円で、少ないほうに入ります。
「消防にかけるお金が減っている」
前橋市の消防費は2000年度から2022年度で21.4%増えています。歳出に占める割合が下がったのは、歳出全体が48.1%増えたためです。
「消防の人員が減っている」
群馬県の消防団員は49年で27.1%減りましたが、消防職員は72.3%増えています。団員と職員では役割が違うため、合計だけでは実態が見えません。
Q&A
前橋市の避難所は何か所ありますか
この記事では扱っていません。前橋市は指定緊急避難場所・指定一般避難所・自主避難所・指定福祉避難所の一覧をPDFで公開していますが、収容人数の記載がありません。最新の情報は前橋市の避難所のページでご確認ください。
土砂災害警戒区域はどれくらいありますか
前橋市の公表では土砂災害警戒区域71か所、特別警戒区域67か所、急傾斜地危険区域12か所です(2026年4月1日時点)。詳しくは前橋市のハザードマップのページをご覧ください。
災害復旧費とは何ですか
災害で壊れた道路、河川、農地などを元に戻すために市が支出した費用です。市の負担額であり、被害の総額とは異なります。国庫補助の有無によっても変わります。
前橋市の消防団員数は分かりますか
この統計では分かりません。消防職員数・消防団員数の市区町村別は公表されていないためです。群馬県全体では2024年度で団員10,630人、職員2,636人です。
次の更新はいつですか
社会・人口統計体系は毎年更新されますが、市区町村の財政データは2022年度が最新です。水害統計調査の市区町村別は2014年で更新が止まっています。
出典
- 総務省「社会・人口統計体系」D行政基盤 市区町村データ(統計表ID 0000020104)、K安全 都道府県データ(統計表ID 0000010111)/e-Stat 地域統計
- 国土交通省「水害統計調査」市区町村別水害被害(統計表ID 0003155664)/e-Stat
- 前橋市「避難所一覧」「ハザードマップ」/前橋市
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| No | データ名 | 出典 | ダウンロード |
|---|---|---|---|
| 56 | 県内5市の消防費・災害復旧費と群馬県の消防力 1975〜2024年度 | 総務省「社会・人口統計体系」/国土交通省「水害統計調査」 | CSVを保存 |
更新履歴
- 2026年9月13日 公開
