通勤先の記事で、前橋の通勤圏が群馬県内で閉じていることを示した。家計収支の記事では、交通・通信費のうち自動車等維持が全国の1.6倍だったことも見た。
車がなければ成立しない生活圏である。その裏側を数字で見る。
群馬県の交通事故は、人口当たりの発生件数が全国1位だった。ただし死者数は違った。
群馬県の人口10万人当たり発生件数は481.2件で全国1位。全国231.8件の2.08倍。負傷者数も全国1位。
ただし死者数は10万人当たり2.5人で全国25位。全国2.1人と大きくは変わらない。
前橋市は10万人当たり570.0件で県内3位。全国平均の2.46倍にあたる。
対象範囲
群馬県警察「群馬の交通事故統計」令和7年版による。市町村別の数値は同年報の「市町村別交通人身事故発生状況」から取った。全国の数値は同年報の全国比較表による。
対象は人身事故である。物損のみの事故は含まれない。
前橋市と高崎市は2つの警察署の管内に分かれているため合算した。前橋市は前橋警察署と前橋東警察署、高崎市は高崎警察署と高崎北警察署である。他の33市町村は単独署の管内で、合算は不要だった。
人口10万人当たりの値、県内順位、1件当たりの死者数は当サイトが算出した。公表値ではない。人口は総務省「社会・人口統計体系」の住民基本台帳人口(2024年度)を使った。
e-Statの市区町村データにも交通事故発生件数の項目があるが、2009年度で収録が止まっている。最新の市町村別を見るには県警の年報を使うしかない。
発生件数は全国1位。死者数は25位
群馬県の人口10万人当たり発生件数は481.2件。全国は231.8件なので、2.08倍である。47都道府県で最も多い。
負傷者数も10万人当たり592.9件で全国1位。全国273.4件の2.17倍にあたる。

ところが死者数は違う。10万人当たり2.5人で、全国2.1人の1.19倍。47都道府県では25位で、ちょうど真ん中である。
発生件数と負傷者数が1位なのに、死者数は25位。この3つは同じ方向を向いていない。
1件当たりの死亡率は、全国の6割
事故の件数で割ると、この構図がはっきりする。
群馬県は人身事故9,095件で死者48人。1万件当たり52.8人である。全国は287,023件で2,547人、1万件当たり88.7人。

群馬の1件当たり死亡率は、全国の0.59倍である。事故は2倍起きているのに、1件が死亡に至る割合は6割にとどまる。
年報には近県比較の項目があり、群馬の四輪車乗車中の死者が全死者に占める割合は45.8%で、全国34.1%を11.7ポイント上回る。死者の内訳も、車に乗っている人に寄っている。
前橋は県内3位。3年で16.1%減った
前橋市の人身事故は令和7年で1,876件。人口10万人当たりでは570.0件になる。

県内35市町村では3位。上位は伊勢崎591.3、太田585.9、前橋570.0と続く。高崎508.8は4位、桐生299.5は23位である。
全国平均231.8件と比べると、前橋は2.46倍にあたる。
ただし減っている。前橋の発生件数は令和5年2,236件、令和6年1,906件、令和7年1,876件。3年で16.1%の減少である。県計は9.4%減、全国は6.8%減なので、前橋の減り方は県や全国より大きい。
県内35市町村をすべて並べると、次のようになります。
| 順位 | 市町村 | 人口10万人当たり発生件数(件) |
|---|---|---|
| 1 | 伊勢崎市 | 591.3 |
| 2 | 太田市 | 585.9 |
| 3 | 前橋市 | 570.0 |
| 4 | 高崎市 | 508.8 |
| 5 | 上野村 | 494.6 |
| 6 | みどり市 | 489.0 |
| 7 | 吉岡町 | 450.5 |
| 8 | 渋川市 | 449.4 |
| 9 | 玉村町 | 443.6 |
| 10 | 長野原町 | 432.9 |
| 11 | 大泉町 | 410.5 |
| 12 | 邑楽町 | 403.0 |
| 13 | 安中市 | 383.0 |
| 14 | 藤岡市 | 381.8 |
| 15 | 東吾妻町 | 373.1 |
| 16 | 沼田市 | 340.0 |
| 17 | 神流町 | 330.9 |
| 18 | 草津町 | 330.3 |
| 19 | 館林市 | 317.6 |
| 20 | 甘楽町 | 307.2 |
| 21 | 明和町 | 306.9 |
| 22 | 川場村 | 302.7 |
| 23 | 桐生市 | 299.5 |
| 24 | 榛東村 | 266.5 |
| 25 | 下仁田町 | 244.6 |
| 26 | みなかみ町 | 241.8 |
| 27 | 片品村 | 229.1 |
| 28 | 富岡市 | 228.0 |
| 29 | 千代田町 | 221.2 |
| 30 | 嬬恋村 | 209.4 |
| 31 | 板倉町 | 200.6 |
| 32 | 中之条町 | 167.5 |
| 33 | 高山村 | 153.4 |
| 34 | 南牧村 | 140.2 |
| 35 | 昭和村 | 100.9 |
この数字をどう読むか
ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。
車社会の帰結として説明はつく。ただし証明はできない
群馬県の自動車保有台数は1,832,793台。人口1,889,525人に対し1人当たり0.97台である。運転免許人口は1,382,351人で、人口の73.2%が免許を持っている(群馬県警「群馬の交通事故統計」令和7年版)。
車の利用が多ければ、接触の機会も増える。人口当たりの事故が多いことは、車社会の帰結として説明がつく。
ただし証明はできない。全国の保有台数が同じ資料に載っていないため、保有台数当たりの事故率で全国と比べることができない。人口当たりで多いことと、車1台当たりで多いことは別の話である。
家計収支の記事で、前橋の自動車等維持費が1人当たり27,741円で全国17,664円の1.6倍だと示した。通勤先の記事では通勤圏が県内で閉じていることも見た。車への依存度は高い。
橋の記事で、前橋市が管理する1,284橋のうち築50年以上が33.8%で、20年後には80.7%になることを示した。
「事故が多い県」と「危険な県」は違う
発生件数と負傷者数が全国1位という数字だけを見れば、群馬は危険な県に見える。ただし死者数は25位で、1件当たりの死亡率は全国の0.59倍である。
この2つを合わせると、「軽微な事故が多い」という構図になる。市街地の低速域での接触が多ければ、件数は増えるが死亡には至りにくい。四輪車乗車中の死者が45.8%と全国より高いことも、歩行者事故より車同士の事故が多いことを示唆する。
ただし人身事故の計上基準は全国共通である。なぜ群馬で件数が突出するのかは、この統計からは特定できない。道路構造、交通量、通報や届出の慣行など、複数の要因が考えられる。
労働災害の記事で、群馬の労働災害度数率が1.68で全国2.14を下回る一方、労災保険の給付件数は労働者1,000人当たり72.7件で全国65.0件より11.8%多いことを示した。
前橋の減り方が大きい理由は分からない
前橋の3年間の減少率16.1%は、県計9.4%・全国6.8%を上回る。ただし比較できるのは3年分だけである。
令和5年の2,236件が高すぎた可能性もある。商店街の記事で見たとおり、コロナ禍からの人流の回復は年によって差がある。3年では傾向とは呼べない。
e-Statの市区町村データが2009年度で止まっているため、長期の推移を市町村別で追うことができない。県警の年報は3年分しか公開されていない。定点観測としては、これから積み上げていくことになる。
このデータの限界
- 人口10万人当たりの値、県内順位、1件当たりの死者数は当サイトが算出した値である。公表値ではない。
- 令和6年版・令和7年版の年報には全国順位の欄がない。この記事の順位は年報の都道府県別実数と住民基本台帳人口から算出した。
- 対象は人身事故のみで、物損事故は含まれない。
- 市町村別に取れるのは発生件数・死者数・負傷者数の3項目だけである。事故類型別、時間帯別、年齢層別、高齢者の関与はすべて県計のみで、市町村別の内訳はない。
- 県警の年報は令和5〜7年の3年分しか公開されていない。e-Statの市区町村データは2009年度で収録が止まっている。長期の推移は追えない。
- 保有台数当たりの事故率は、全国の保有台数が同じ資料にないため比較できない。
- 群馬で件数が突出する理由は、この統計からは特定できない。
- 外国人が関与した事故については、後述のとおり比較可能なデータがない。
外国人の事故と外免切替について
外国運転免許証からの切替(外免切替)と、外国人が関与した交通事故について、扱えるかを調べた。結論として、この記事では扱わない。理由を書いておく。
外免切替の統計は存在しない
警察庁「運転免許統計」令和7年版を確認したが、外国運転免許証からの切替件数を集計した表は本編・補足資料のいずれにも存在しない。本編には集計対象外とする注記があるのみである。全国の数値も、都道府県別の数値も公表されていない。
同統計には「国外運転免許証の交付件数」の都道府県別表があるが、これは日本の免許保有者が海外で運転するために取得するもので、外免切替とは別物である。群馬県は2,965件(申請者の国籍別で日本人2,599件、外国人366件)だった。
国籍別の事故件数はあるが、分母がない
群馬県警の年報には「外国人の関係した交通人身事故」という項目があり、国籍別・当事者別の件数が掲載されている。警察庁は全国レベルの国籍別交通事故統計を公表していない。
ただしこの件数を記事で扱うことはしない。県内の国籍別の運転者数も走行距離も公表されていないため、分母がなく事故率を出せないからである。件数の多寡だけでは、特定の国籍の運転が危険かどうかは判断できない。
年報の定義にも注意が要る。件数は「外国人が第1当事者または第2当事者に係わる事故」であり、外国人に過失があった事故に限らない。死傷者数はその事故で死傷したすべての人を含み、日本人も含まれる。国籍は当事者の国籍であって、免許の取得国や運転歴は分からない。外国人同士の事故は両当事者に重複計上される。
当サイトは「印象論ではなく数字で」を掲げている。分母のない件数を国籍別に並べることは、その方針に反する。比較可能なデータが公表されれば、そのときに扱う。
よくある誤解
「群馬は事故が全国一多い危険な県」
人口10万人当たりの発生件数と負傷者数は全国1位です。ただし死者数は25位で、1件当たりの死亡率は全国の0.59倍にとどまります。件数の多さと危険度は同じではありません。
「車が多いから事故が多いのは当然」
説明としては自然ですが、確かめられていません。全国の自動車保有台数が同じ資料にないため、保有台数当たりの事故率で比較できないからです。人口当たりで多いことと、車1台当たりで多いことは別の話です。
「前橋は県内で最も事故が多い」
人口10万人当たりでは県内3位です。伊勢崎591.3件、太田585.9件が上にいます。発生件数の実数では前橋1,876件が最多ですが、これは人口規模によるものです。
Q&A
人身事故と物損事故の違いは
人身事故は死傷者が出た事故、物損事故は物の損壊だけの事故です。この記事の数値はすべて人身事故で、物損事故は含まれていません。物損を含めた件数は公表されていません。
前橋市内のどこで事故が多いのですか
この年報では分かりません。市町村より細かい単位の集計はありません。交差点別の発生状況は別途公表される場合がありますが、この記事では扱っていません。
高齢者の事故はどれくらいですか
群馬県全体では、65歳以上が関係した事故が3,249件で全体の35.7%、死者は27人で56.3%を占めます。ただし市町村別の内訳はありません。交通安全の取り組みは、群馬県警の交通安全のページで確認できます。
なぜ市町村別の長期推移がないのですか
e-Statの市区町村データには交通事故発生件数の項目がありますが、1980年度から2009年度までで収録が止まっています。県警の年報は3年分しか公開されていないため、市町村別で長期に追える公表データが存在しない状態です。
次の更新はいつですか
年報は年1回公表されます。令和8年版が出た時点で更新します。
出典
- 群馬県警察「群馬の交通事故統計」令和5年版・令和6年版・令和7年版/群馬県警察
- 総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」A人口・世帯(統計表ID 0000020101)A2301住民基本台帳人口
- 警察庁「運転免許統計」令和7年版(外免切替の集計がないことの確認)
データダウンロード
本記事で使用したデータは、CSVでご自由にダウンロードいただけます。ライセンスはCC BY 4.0です。
| No | データ名 | 出典 | ダウンロード |
|---|---|---|---|
| ㊳ | 群馬県35市町村の交通人身事故 発生件数・死者数・負傷者数(2023〜2025年) | 群馬県警察「群馬の交通事故統計」令和5〜7年版 | CSVを保存 |
更新履歴
- 2026年9月24日 関連する記事への内部リンクを追加
- 2026年9月23日 関連する記事への内部リンクを追加
- 2026年9月22日 公式窓口へのリンクを追加
- 2026年9月21日 県内35市町村の一覧表を追加
- 2026年9月6日 公開
