前橋市の消費支出は月32.6万円|物価は最低なのに【2024年】

前橋市の1世帯当たり消費支出は月325,546円で、全国301,797円を23,749円上回る。1人当たりでは全国の112.9%になる。群馬の物価は全国最低だが、支出は全国より多い。10費目の支出額を全国と表で比べた。

生活コストの記事で、群馬の物価が全国最低であることを示した。消費者物価地域差指数は前橋市が52都市中52位(2025年)。前橋市の貯蓄の記事では、貯蓄も負債も県内最多だと書いた。

では、前橋の世帯は実際にいくら使っているのか。物価が安いなら、支出も少ないはずである。

令和6年全国家計構造調査で、前橋市単独の家計収支が取れる。数字は逆だった。

前橋市の1世帯当たり消費支出は月325,546円。全国301,797円を23,749円上回る。

世帯人員は前橋2.77人、全国2.90人。1人当たりに直すと差はさらに開き、全国の112.9%になる。

ただし集計世帯数は140世帯。費目別の内訳は振れが大きく、断定的には読めない。

対象範囲

総務省統計局「令和6年全国家計構造調査」家計収支に関する結果による。市別の数値は表1-0(経済圏・15万以上市)、全国と群馬県は表1-1から取った。

調査期間は2024年10月・11月の2か月間である。年間を通した平均ではない。季節性のある支出(暖房費、年末の交際費など)は、この2か月の状況を反映している。

対象は二人以上の世帯・全世帯。単身世帯は含まない。収入に関する項目は勤労者世帯でのみ公表されるため、そちらは区分を分けて記載する。

前橋市の集計世帯数は140世帯である。全国の30,970世帯、群馬県の580世帯と比べて標本が小さい。消費支出の総額はこの規模でも傾向を示せるが、費目を細かく割るほど誤差が大きくなる。この記事では総額と大きな費目を中心に扱い、細かい内訳は参考として示すにとどめる。

物価は全国最低。それでも支出は全国より多い

前橋市の1世帯当たり消費支出は、1か月325,546円である(総務省統計局「令和6年全国家計構造調査」表1-0)。

全国は301,797円、群馬県は313,845円。前橋は全国を23,749円、群馬県を11,701円上回る。年に換算すると全国との差は約28万5千円になる。

1か月間の消費支出。前橋市32.55万円、群馬県31.38万円、全国30.18万円。1人当たりでは前橋11.75万円、群馬10.57万円、全国10.41万円
1世帯当たりと1人当たりの消費支出(二人以上の世帯、2024年10月・11月)
1世帯当たり消費支出 325,546円 全国301,797円を23,749円上回る
1人当たりでは 112.9% 世帯人員が少ないぶん差が開く
集計世帯数 140世帯 費目別の内訳は振れが大きい

1世帯当たり1か月の消費支出(2024年10月・11月)

前橋市 325,546円
群馬県 313,845円
全国 301,797円

バーの長さは前橋市を100としたときの比率。世帯人員は前橋2.77人、群馬2.97人、全国2.90人で、1人当たりに直すと前橋は全国の112.9%になる。

世帯人員を考えると差はさらに開く。前橋の世帯人員は2.77人で、全国2.90人、群馬県2.97人より少ない。消費支出を世帯人員で割ると、前橋117,526円、全国104,068円、群馬県105,672円。1人当たりでは全国の112.9%になる。

物価が安い地域で、支出が多い。この2つは矛盾しない。価格が安くても、買う量が多ければ支出は増える。

費目別に見ると、住居と交通・通信が大きい

全国を100として、前橋の各費目がどの位置にあるかを見る。

前橋市の費目別支出の全国比。住居136.5、交通・通信119.1、被服112.1、教育85.2、光熱・水道93.5
費目別の支出額(全国を100としたとき、2024年10月・11月)

全国を上回るのが8費目、下回るのが2費目。最も高いのが住居の136.5、次いで交通・通信の119.1、被服112.1。低いのは教育85.2と光熱・水道93.5である。

金額で見ると、全国との差23,749円のうち、交通・通信が8,250円(35%)、住居が7,917円(33%)を占める。この2費目で差の7割近くになる。

住居費の中身は、家賃ではなくリフォーム

住居費が全国の136.5%というのは、直感に反する。持ち家が多い地域は家賃を払わないため、住居費は低く出るのが普通だからである。

内訳を見ると理由が分かる。前橋の住居費29,588円のうち、家賃地代は9,095円にとどまり、設備修繕・維持が20,493円を占める。さらにそのうち19,747円が「工事その他のサービス」である。

全国の工事その他は6,736円、高崎市は5,524円。前橋だけが全国の2.9倍になっている。

これは実態というより、標本の振れと考えるのが妥当である。リフォームは数年に一度の不定期支出で、140世帯のうち数世帯が大規模工事をすれば平均が大きく動く。産業構造や住宅事情が近い高崎市が全国並みであることも、この見方を支持する。

住居費の高さを前橋の特徴として読むことはできない。

交通・通信は県内で見ると低いほう

交通・通信は全国43,196円に対して前橋51,446円で119.1%。ただし群馬県は58,090円で、前橋は県平均を6,644円下回る。高崎60,452円、太田56,684円と比べても低い。

内訳では自動車等維持が27,741円で、全国17,664円の1.6倍。通勤先の記事で、前橋の通勤圏が群馬県内で閉じていることを示した。車がなければ成立しない生活圏である。交通・通信の高さは、この構造と整合している。

前橋市と全国の1世帯当たり1か月の消費支出を、10費目で並べる(二人以上の世帯、2024年10月・11月)。

費目前橋市(円)全国(円)全国=100
消費支出325,546301,797107.9
食料92,55988,724104.3
住居29,58821,671136.5
光熱・水道21,71323,22793.5
家具・家事用品13,31412,339107.9
被服及び履物12,26210,937112.1
保健医療15,44015,107102.2
交通・通信51,44643,196119.1
教育10,11711,87685.2
教養娯楽30,53329,545103.3
その他の消費支出48,57445,175107.5

全国=100は前橋市の支出額を全国の支出額で割った値で、当サイトが算出した。前橋市の集計世帯数は140世帯で、費目ごとの値は振れが大きい。

収入と、使い切らずに残る分

収入は勤労者世帯でのみ公表される。前橋市の勤労者世帯(二人以上)の実収入は月677,544円。ここから税と社会保険料128,602円を引いた可処分所得が548,942円である。

消費支出は344,845円なので、可処分所得に対する割合は62.8%になる。これを平均消費性向と呼ぶ。

全国は65.9%、群馬県は66.4%。前橋のほうが、可処分所得に対して使っている割合は低い。収入が多いぶん、支出を差し引いた残りも大きくなる。

この数字をどう読むか

ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。

「物価が安い」と「支出が少ない」は別のこと

生活コストの記事で示した消費者物価地域差指数は、同じものを買ったときの価格を比べたものである。前橋市は52都市中52位で、全国で最安だった(2025年)。

今回の家計収支は、実際にいくら使ったかである。安く買えることと、支出が少ないことは別の話になる。価格が安ければ、同じ金額でより多く買える。車を持つ、広い家に住む、量を買う。前橋の消費支出が全国を上回るのは、その帰結として説明できる。

物価の安さは、支出を減らす方向にも、消費を増やす方向にも働く。どちらに出るかは、この2つの統計を並べて初めて分かる。

貯蓄の記事と、つながる

前橋市の貯蓄の記事で、貯蓄1,781万円も負債888万円も県内4市で最多だと示した。今回の平均消費性向62.8%は、全国65.9%より低い。

収入が多く、使う割合は低く、貯蓄も負債も多い。この4つは矛盾しない。住宅ローンを組んで家を持ち、車を持ち、それでも手元に残る額がある。そういう家計像が浮かぶ。

ただし今回の数字は勤労者世帯のもので、貯蓄の記事は全世帯である。区分が違うので、そのままつなげることはできない。

140世帯という制約は、記事の書き方を変える

この記事では、住居費が全国の136.5%という目を引く数字を、前橋の特徴として書かなかった。標本140世帯で、しかも不定期支出だからである。

同じ調査の他市を見ると、高崎市の保健医療は全国の2.1倍、伊勢崎市と太田市の教育は全国の3割弱になっている。70世帯規模の単年値では、こうした振れが普通に起きる。

貯蓄の分布の記事で、平均値が実態から離れることを示した。今回は別の問題である。平均値そのものが、標本の少なさで動いてしまう。市区町村単位の統計を読むときは、集計世帯数を確認する必要がある。

このデータの限界

  • 前橋市の集計世帯数は140世帯である。全国の30,970世帯、群馬県の580世帯と比べて標本が小さく、費目を細かく割るほど誤差が大きくなる。
  • 調査期間は2024年10月・11月の2か月間である。年間平均ではないため、季節性のある支出は偏る。
  • 住居費の高さは設備修繕・維持(工事その他19,747円)によるもので、不定期支出である。前橋の恒常的な特徴とは言えない。
  • 1人当たりの消費支出、平均消費性向、全国比は当サイトが算出した値である。公表値ではない。
  • 消費支出は二人以上の世帯・全世帯、収入は二人以上の世帯・勤労者世帯の数値である。区分が異なるため、両者を直接つなげることはできない。
  • 単身世帯は含まない。単身世帯を含めた総世帯では数値が変わる。
  • 市別の表は収支項目が中分類173区分で、全国表の細分類411区分より粗い。
  • 群馬県からは15万人以上の4市のみが収録されている。他の市町村の数値はない。

よくある誤解

「物価が安いから前橋は生活費が安い」

物価は安いのが事実です。ただし実際の消費支出は全国を月23,749円上回ります。1人当たりでは全国の112.9%です。安く買えることと、支出が少ないことは別の話です。

「前橋は住居費が高い」

この調査ではそう出ていますが、中身は家賃ではなくリフォームなどの工事費です。集計世帯数140世帯の単年値で、不定期支出は大きく振れます。恒常的な特徴として読むことはできません。

「消費支出が多いのは家計が苦しいから」

逆の可能性もあります。勤労者世帯の平均消費性向は62.8%で、全国65.9%より低い。可処分所得に対して使っている割合は小さく、手元に残る額は大きくなります。

Q&A

なぜ調査期間が2か月なのですか

全国家計構造調査は5年ごとの大規模調査で、家計簿の記入を2か月間お願いする設計になっています。毎月実施される家計調査とは目的が異なり、地域別・世帯属性別に細かく見られる代わりに、期間が限られます。毎月の家計調査の結果は、総務省統計局の家計調査のページで確認できます。

140世帯で信頼できるのですか

消費支出の総額のように金額が大きく毎月発生する項目は、この規模でも傾向を示せます。一方、リフォーム費用のように不定期で高額な項目は、少数の世帯の行動で平均が動きます。この記事では総額を中心に扱い、細かい費目は参考にとどめました。

住宅ローンの返済は含まれますか

含まれません。住宅ローンの返済は資産の形成にあたるため、消費支出には計上されません。住居費に含まれるのは家賃地代と設備修繕・維持です。

前橋の借家率は分かりますか

同じ調査に現住居の所有関係別の集計があり、前橋市(二人以上の世帯)の借家率は25.3%と算出できます。持ち家が約4分の3です。ただし借家の種類まで分けると標本が極小になるため、この記事では扱っていません。

次の更新はいつですか

全国家計構造調査は5年ごとです。次回は令和11年(2029年)調査となり、結果の公表は2031年ごろが見込まれます。

前橋市の1か月の生活費はいくらですか

二人以上の世帯の消費支出は1か月325,546円です(2024年10月・11月)。全国の301,797円を23,749円、群馬県の313,845円を11,701円上回ります。前橋市の集計世帯数は140世帯です。

前橋の車の維持費は全国より高いですか

自動車等維持は月27,741円で、全国17,664円の1.6倍です。交通・通信全体では51,446円で全国の119.1%ですが、群馬県の58,090円は下回ります。

出典

  • 総務省統計局「令和6年全国家計構造調査」家計収支に関する結果 表1-0(経済圏・15万以上市別)、表1-1(全国・都道府県別)、表18-0(現住居の所有関係別)/統計局

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㉜県内4市・県・全国の家計収支
(2024年10月・11月)
総務省統計局「令和6年全国家計構造調査」家計収支に関する結果 表1-0・表1-1CSVを保存

更新履歴

  • 2026年9月24日 2025年の小売物価統計調査に更新
  • 2026年9月24日 冒頭の段落を追加
  • 2026年9月24日 Q&Aと内部リンク、表を追加
  • 2026年9月4日 公開