若い人が残れる仕事と学び|20〜24歳の転出超過486人から考える【提言】

この記事の要点

データで分かること(事実)

  • 前橋市の20〜24歳(日本人)は2025年に486人の転出超過。2020〜2025年の6年間、一度もプラスになっていない。
  • 群馬県の高校生が県内の大学に進む割合は34.6%(全国平均43.8%)。前橋市の情報通信業の特化係数は0.532で、有効求人数は高崎が前橋の1.43倍。
  • 奨学金返還支援や移住支援金の国・県の資料には、利用者の数はあっても、若い人が定着したかという効果の数字はほとんどない。

当サイトの提言(意見)の選択肢

  1. 首都圏に出た若い人と、就職の時期につながり続ける
  2. 前橋で働き、住む若い人への奨学金返還支援
  3. 情報通信と事務の仕事の場を増やす
  4. 前橋の大学に来た学生に、前橋の仕事を知ってもらう
  5. 効果を測る仕組みを先に作る

「前橋のこれから」は、当サイトのデータから前橋の課題を選び、ほかの自治体の事例と公表されている効果を確かめたうえで、当サイトの意見を示すシリーズです(一覧)。1〜4は事実と公表資料、5は当サイトの意見、6は反対の見方と限界です。

動画で見る

この記事の内容は、動画『数字で見る前橋|前橋の人口』の7章でも解説しています(YouTube、約6分。再生ボタンを押すと4:41の章の頭から始まります)。

動画「数字で見る前橋|前橋の人口」の表紙 ▶ 4:41から再生

1 データで分かること(事実)

値・年・対象は当サイトの公開中の記事の本文のままである。

前橋市の20〜24歳の転入超過数(日本人)。2020年-310人、2021年-264人、2022年-470人、2023年-436人、2024年-384人、2025年-486人
前橋市の20〜24歳の転入超過数(日本人、2020〜2025年)。出典は人口の記事

前橋市の20〜24歳(日本人)の転入超過数は、2021年の-264人から2025年の-486人へ広がった。同じ年の15〜19歳の転出超過は39人である。2025年の20代の出入りを相手先ごとに差し引くと、高崎市とは+29人でほぼ均衡し、首都圏4都市(東京都特別区部・横浜・さいたま・川崎)へは-481人だった。

学びと仕事の入口。県内の大学に進んだ割合は群馬県34.6%・全国平均43.8%、20〜24歳の非正規比率は前橋市29.3%・全国40.4%、情報通信業の特化係数は前橋市0.532、有効求人数は高崎が前橋の1.43倍
学びと仕事の入口を比べる相手と並べた(各記事の値)
分野事実(記事の値のまま)年記事
学び大学進学時の流出超過は1,903人(県の値)。県外へ出た5,802人の73.7%が首都圏4都県2025年度大学進学
待遇20〜24歳の年収は群馬359.6万円、東京388.2万円で差は年28.6万円2025年賃金
仕事20〜24歳の完全失業率は6.35%で、全国5.92%を0.43ポイント上回る2020年若者の雇用
仕事有効求人倍率は12か月すべてで群馬県の平均を下回った。求職者数は高崎が前橋の1.03倍2025年求人
仕事情報通信業の新規求人は356人から248人へ30.3%減(高崎は6.0%減)2023→2025年産業
仕事事業所の新設率は20.9%で全国23.3%を下回る2016年からの5年間事業所
働き手15〜64歳は193,385人から138,536人へ28.4%減(推計)2020→2050年高齢化率

前橋市内には4つの大学があり、群馬大学は荒牧(共同教育学部・情報学部)と昭和(医学部)が前橋市にある。群馬県内の大学の入学者のうち、県外出身は3,899人で56.0%を占める(2025年度)。

2 そこから読み取れること(解釈)

入口は「学び」と「仕事」の2つ

人口の記事は「前橋市が人を失っているのは、進学のタイミングではなく就職のタイミング」と読む。一方、若者の雇用の記事は、20〜24歳の転出超過には進学で出た人がそのまま戻らなかった分を含むと読む。2つの統計は同じ人として追跡できないため、当サイトは若い人の入口を「学び(進学)」と「仕事(就職)」の2つに分けて考える。

待遇より、仕事の量と種類

非正規比率は全国より低く、東京との年収の差も小さい。若者の雇用の記事は「待遇では説明がつかない」としている。一方、求職者数がほぼ同じ高崎と比べて求人数は少なく、情報通信業も薄い。仕事の「量」と「種類」で、若い人の選べる先が限られている可能性がある。ただし産業の記事は、情報通信業が薄いことと若者の流出の関係は、統計からは確かめられないとしている。

相手は首都圏

20代の出入りは高崎市とはほぼ均衡しており、課題は県内の市どうしの取り合いではなく、首都圏との出入りと読める。総人口の減少の主因は自然減だが、若い人の転出を減らすことは、働き手と地域の担い手を保つうえで意味が大きいと当サイトは考える。

3 前橋市・群馬県の計画での扱い

計画指標基準目標実績・判定
前橋市 第2期(2021〜2024年度)15〜24歳の市外への転出超過数411人(2019年)281人(2024年)357人(2024年)、市の判定○
前橋市 第2期移住関連事業を通じて移住した人数47人73人176人、◎
前橋市 第2期創業支援等による創業者数110人137人170人、◎
前橋市 第3期(2025〜2027年度)25〜39歳の転入超過数-−35人(2027年)第3期の実績はまだ公表されていない
群馬県 総合計画ジョブカフェを利用した就職者数(若者)1,072人/年(2019年度)1,280人/年(2025年度)743人/年、後退D
群馬県 総合計画留学生の日本企業等への就職状況(群馬県の構成比率)2.0%(2018年)3.0%(2025年)1.1%(2023年度の値)、後退D
群馬県 デジタル田園都市構想総合戦略他都道府県からの転入超過数−386人(2022年度)0人(2027年度)4節を参照

値は計画シリーズの記事(公開準備中)による:前橋市の計画の目標と実績、群馬県と前橋市の計画の比較、群馬県の「後退D」の8指標。

前橋市の第2期の判定○は、目標値に届いていないが現状値から取組が進んでいるという意味である。第3期の重点施策には「働く意欲と機会の創出」(重点事業2・指標4)と「移住・定住促進」(重点事業3・指標8)がある(前橋市の総合計画の解説)。

県の総合計画のKPI 59件には、人口・合計特殊出生率・転入超過の指標がない。ジョブカフェの就職者数について、県は売り手市場が続き利用者が減ったこと(2024年度の利用者は7,891人)を説明している。転入超過は別の計画「群馬県デジタル田園都市構想総合戦略」の数値目標で、県の移住者数のKPIは目標1,400人/年に対し実績1,560人/年(達成A)である(群馬県の総合計画の解説)。

4 ほかの市の事例と公表されている効果

国・群馬県・ほかの県が自ら公表した資料だけを使い、効果(若い人が定着したか)の数字があるかどうかを事例ごとに示す。資料は2026年9月30日に取得した。

事例資料(公表者)公表されている数字定着・就職の効果の数字
奨学金返還支援(全国)内閣官房地域未来戦略本部事務局47都道府県・876市区町村が実施。令和6年度の支援者総数33,720人効果の数字は公表されていない
奨学金返還助成(秋田県)秋田県の事業評価(令和2年度の資料)認定件数 556件・579件(目標550件)県内大学生等の県内就職率 45.3%・43.6%(目標50%・53%)
移住支援金(全国・群馬県)国(地方創生のウェブサイト)全国累計14,378件・30,557人。群馬県1,152件・2,452人効果の数字は公表されていない
Uターン就職など(群馬県)群馬県の総合戦略の評価検証Uターン就職率28%、ぐんま暮らし支援センター経由の就職767件Uターン就職率は策定時30%から横ばいC
サテライトオフィス(全国)総務省の調査開設数1,348箇所(令和3年度末)効果の数字は公表されていない
地方大学・地域産業創生交付金(国)内閣府の行政事業レビュー(評価のコメント)効果の数字は公表されていない

奨学金返還支援(国の調査)

地元に就職・居住する若者の奨学金の返還を自治体が肩代わりする取り組みである。国の調査(令和7年6月1日時点、令和8年3月公表)では、市区町村の50.3%が実施している(PDF3頁)。令和6年度に返還支援を開始した人数は15,260人、支援実績額は約88.0億円だった(PDF4頁)。経費は特別交付税措置の対象で、措置率0.5、上限1億円である(PDF7頁)。支援を受けた人が地元に定着したかという効果の数字はない。

奨学金返還助成(秋田県の事業評価)

秋田県の令和2年度の事業評価(資料の年度)の評価調書(PDF3頁、中間評価の一覧)では、返還助成の認定件数が目標550件に対し平成30年度556件(達成率101.1%)、令和元年度579件(105.3%)だった。一方、成果の指標「県内大学生等の県内就職率」は、目標50%・53%に対し実績45.3%・43.6%(達成率90.6%・82.3%、秋田労働局調べ)だった。制度を使う人は目標どおり増えたが、県内就職率は目標に届いていない。この就職率は県内の大学生等全体の値で、制度を使った人だけの効果は切り分けられていない。その後の年度の値は確かめていない。

移住支援金(国の交付実績)

東京23区に住む・通勤する人が東京圏の外へ移住して就業・起業した場合の支援金で、国のページによると世帯の場合は100万円以内、単身の場合は60万円以内。申請から5年以内に転出した場合などは返還の対象になる。交付実績(R8.3月末時点)で、群馬県は累計1,152件・2,452人と、静岡県の1,465件に次いで2番目に多い(当サイトが表から数えた。令和6年度新設の地方就職学生支援事業を含む)。移住した人がその後も住み続けているかという効果の数字はない。

群馬県の総合戦略の評価検証

群馬県の総合戦略の指標。県内出身大学生等のUターン就職率は策定時30%、実績28%、目標36%(横ばいC)。他都道府県からの転入超過数は策定時-386人、実績-975人、目標0人(後退D)。地域おこし協力隊員の定住率は策定時59.7%、実績65.1%、目標70.0%(前進B)
群馬県「群馬県デジタル田園都市構想総合戦略 令和6年度評価検証結果」4頁の指標(策定時・実績2024年度・目標2027年度)

ぐんま暮らし支援センターでの就職相談は3,635件、うち767件が就職に結びついた(9頁)。IT人材育成事業では109名が受講し、41名が就労につながった(14頁)。相談や講座を経た就職の件数は示されているが、県全体のUターン就職率は策定時の30%から28%で、横ばいの評価だった。

サテライトオフィスの誘致(総務省の調査)

総務省の調査(令和4年10月26日公表)では、自治体が誘致・関与したサテライトオフィスは令和3年度末に1,348箇所。令和3年度に505箇所が開設、73箇所が減少した。自治体の課題には「早期撤退企業が多いため、定着への取り組み」「地元のデジタル人材の不足」、企業の要請には「現地での安定的な仕事供給」がある。地元の雇用の効果の数字は公表されていない。

地方大学・地域産業創生交付金(国の行政事業レビュー)

地方大学の振興と若者の雇用機会の創出を目的とする国の交付金について、内閣府は令和6年6月28日に「公開プロセス」を行った(議事録)。評価結果は「事業の全体的状況について、エビデンスの把握を試みるべきで、費用対効果などの分析も試みる必要がある。」としている。

前橋データラボ

利用者の数や就職の件数は公表されていても、「その人が何年後も地元にいるか」という数字はほとんど見つかりませんでした。

5 当サイトの提言

ここから先は当サイトの意見です。どれも効果が確かめられたものではなく、費用と前提の検討が必要です。現在の市や県の取り組みを否定するものではありません。

選択肢1 首都圏に出た若い人と、就職の時期につながり続ける

20代の差し引きは首都圏4都市へ-481人で、高崎市とはほぼ均衡している。県は「Gターン倶楽部」やぐんま暮らし支援センターで首都圏からの就職を支援している。前橋出身の学生に、前橋の求人やインターンシップを、県の窓口と組み合わせて届けることを検討してはどうか。

  • 費用:主に人の手間と情報発信の費用。前提:県の窓口との役割分担、出ていく人の選択を尊重すること。
  • 効果:県のUターン就職率は横ばいで、情報を届けるだけで数字が動くかは分からない。

選択肢2 前橋で働き、住む若い人への奨学金返還支援

全国では47都道府県・876市区町村が実施し、経費は特別交付税措置の対象になる。前橋で働き・住むことを条件にした返還支援(県や企業の制度との組み合わせを含む)を検討してはどうか。

  • 費用:支援の人数×金額×年数。前提:対象の業種・金額・期間の設計と、財源の確保。
  • 効果:国の調査に定着の効果の数字はなく、秋田県でも県内就職率は目標に届かなかった。利用した人が何年後に市内にいるかを記録できる設計が考えられる。

選択肢3 情報通信と事務の仕事の場を増やす

情報通信業の特化係数は0.532で、新規求人は2年で30.3%減った。一方、市内には群馬大学の情報学部(荒牧)がある。IT企業やサテライトオフィスの誘致と、学生のインターンシップ・地元企業のデジタル化の仕事を組み合わせることが考えられる。

  • 費用:誘致の補助、オフィスの用意、人材育成の講座。前提:「早期撤退企業が多い」「地元のデジタル人材の不足」という課題への備え。
  • 効果:サテライトオフィスの雇用の効果の数字は公表されていない。県のIT人材育成事業では41名が就労した。

選択肢4 前橋の大学に来た学生に、前橋の仕事を知ってもらう

群馬県内の大学の入学者の56.0%は県外出身で、前橋市内には4つの大学がある。市内の大学・企業と組んで、在学中に前橋の企業で働く機会(長期のインターンシップや授業での協働)を増やすことを検討してはどうか。県外から来た学生が残れば、進学時の流出の一部を埋められる。

  • 費用:大学・企業との調整と運営の費用。前提:大学の教育の方針、企業の受け入れの余力。
  • 効果:国の行政事業レビューは同じ目的の交付金に事業全体のエビデンスの把握を求めており、効果は確かめにくい。

選択肢5 効果を測る仕組みを先に作る

市の指標は第2期の「15〜24歳の転出超過数」から、第3期の「25〜39歳の転入超過数」に変わった。どの施策を選ぶ場合も、事業ごとに「支援を受けた人が数年後に市内で働き、住んでいるか」を追う指標を置くことを検討してはどうか。

  • 費用:比較的小さい(申請時の同意と、数年後の確認の手間)。前提:個人情報の扱いと本人の同意。
  • 効果:それ自体は若い人を増やさないが、選択肢1〜4の効果を後から確かめられるようになる。

選択肢の比較

選択肢効果の根拠前橋市・群馬県の計画での扱い
1 首都圏に出た若い人とつながり続ける一部
県の窓口を経た就職の件数は公表されている。県全体のUターン就職率は横ばい
県の総合戦略がUターン就職率を評価している(横ばい)。県のジョブカフェの就職者数は後退D
2 前橋で働き、住む若い人への奨学金返還支援一部
秋田県は認定件数が目標を上回ったが、県内就職率は目標に届かなかった。国の調査に定着の効果の数字はない
3節で見た市・県の指標にはない
3 情報通信と事務の仕事の場を増やす一部
県のIT人材育成事業で41名が就労した。サテライトオフィスの雇用の効果の数字は公表されていない
3節で見た市・県の指標にはない
4 前橋の大学に来た学生に、前橋の仕事を知ってもらうなし
国の行政事業レビューは、同じ目的の交付金に事業全体のエビデンスの把握を求めている
近い指標として、県の総合計画の留学生の日本企業等への就職状況(後退D)
5 効果を測る仕組みを先に作る測るための選択肢
若い人を増やすものではない。選択肢1〜4の効果を後から確かめる備え
市の指標は第2期の「15〜24歳の転出超過数」から、第3期の「25〜39歳の転入超過数」に変わった

効果の根拠の見方:公表あり=ほかの市などで、目的の数字の結果(目標を上回った・動かなかったなど)が公表されている(施策だけの効果ではない)。一部=利用の件数や施設の実感、推計・見込みなど、途中の数字だけが公表されている、または結果が分かれている。なし=確かめた資料に効果の数字がない。測るための選択肢=効果を後から確かめるための選択肢。費用は当サイトが見積もったものではなく、この表には入れていない。

6 反対の見方・費用・限界

  • 若い人が出ていくのは本人の選択である。首都圏での学びや仕事が本人によい選択であることも多い。2025年には東京都特別区部から前橋市へ325人の20代が転入しており、出入りは一方向ではない。
  • 人口の減少は主に自然減による。若い人の転出を減らしても、人口の減少は止まらない。
  • 子育ての世代を重視する考え方もある。第3期の指標は25〜39歳の転入超過数で、2025年の前橋市は全体では96人の転入超過だった。
  • 同じ制度を持つ自治体は多い。奨学金返還支援を足すだけでは、前橋を選ぶ理由になりにくい可能性がある。
  • 費用:市が新たな制度を持つ場合は、特別交付税措置などを差し引いた市の負担と、ほかの施策との優先順位を比べる必要がある。
  • 限界:原因は統計から特定できない。県内進学率・Uターン就職率・移住支援金の件数は群馬県の値で、求人は安定所管内の値である。4の事例はこの記事のために取得した資料に限り、件数は利用や開設の数で定着を示すものではない。

出典

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120若い人の進学・就職・仕事の事実と、計画の指標・ほかの自治体の事例の数字(前橋市・群馬県・全国)当サイトの記事、国・群馬県・秋田県の公表資料CSVを保存

更新履歴

  • 2026年10月1日 「当サイトの提言」の節の表を、選択肢の比較の表(効果の根拠・計画での扱い)に改めた(費用の大きさの目安の列は外した)
  • 2026年9月30日 公開