前橋市の情報通信業は全国の半分|求人は3年で30%減【2020年】

前橋市の就業者157,266人(2020年)を全国と比べると、厚いのは農業・林業1.273、教育・学習支援1.220、公務1.178(特化係数)。最も薄い情報通信業は0.532で全国の半分ほどしかなく、その新規求人は3年で30.3%減った。産業大分類20区分の就業者数と特化係数を表で示した。

求人の記事で、前橋は仕事がないのではなく製造業だけが県平均の半分であることを示した。外国人の記事では、その製造業を外国人が支えている構図も見た。

では前橋は、何の仕事で成り立っているのか。

全国と比べて厚いのは農業1.273、教育1.220、公務1.178、医療・福祉1.175。どれも地域に必要とされる仕事である。

最も薄いのは情報通信業の0.532。全国の半分ほどしかない。

しかもその求人は3年で30.3%減った。同じ期間に高崎は6.0%減にとどまる。

対象範囲

就業者数は総務省「令和2年国勢調査」就業状態等基本集計(統計表ID 0003450542)による。産業大分類別で、前橋市の就業者は157,266人である。

特化係数は「前橋の構成比 ÷ 全国の構成比」として当サイトが算出した。1.0なら全国と同じ、1.0より大きければ全国より厚いことを示す。公表値ではない。

時系列は平成22年(2010年)と令和2年(2020年)の国勢調査を比べた。この2時点は同じ産業分類で、市域も同じである。2000年のデータも取得したが、産業分類の改定と市域の拡大があるため接続できない。

求人は群馬労働局「労働市場月報(詳細版)」による。安定所管内の数値で、市の行政区域とは一致しない。前橋公共職業安定所は周辺町村を含む。

厚いのは、地域に必要な仕事

全国と比べて何が厚いか。特化係数で見る。

前橋市の産業別就業者の特化係数。農業・林業1.273、教育・学習支援1.220、公務1.178、医療・福祉1.175に対し、情報通信業は0.532
産業別就業者の特化係数(前橋市、2020年)
農業・林業 1.273 全国の1.27倍
教育・学習支援 1.220 公務1.178、医療・福祉1.175
情報通信業 0.532 全国の53.2%にとどまる

高いのは農業・林業1.273、教育・学習支援1.220、公務1.178、医療・福祉1.175、電気・ガス・水道1.160。どれも地域に必要とされる仕事である。

低いのは情報通信業0.532。不動産・物品賃貸0.761、複合サービス0.788と続く。情報通信業は全国の半分ほどしかない。

構成比で見ると、卸売業・小売業15.88%、医療・福祉15.56%、製造業14.78%が上位3つ。この3つで46.2%を占める。

前橋市の就業者を、産業大分類の20区分すべて並べる(2020年)。

産業就業者(人)構成比特化係数
農業・林業6,3584.04%1.273
漁業150.01%0.042
鉱業・採石業140.01%0.272
建設業12,3727.87%1.084
製造業23,24914.78%0.941
電気・ガス・水道8720.55%1.160
情報通信業2,8371.80%0.532
運輸業・郵便業7,2944.64%0.858
卸売業・小売業24,96715.88%1.039
金融業・保険業4,1632.65%1.126
不動産・物品賃貸2,6021.65%0.761
学術研究・専門技術5,4353.46%0.947
宿泊業・飲食7,3054.64%0.865
生活関連サービス・娯楽5,6223.57%1.041
教育・学習支援9,4175.99%1.220
医療・福祉24,46715.56%1.175
複合サービス事業9500.60%0.788
サービス業(他に分類されない)8,7745.58%0.846
公務6,5294.15%1.178
分類不能4,0242.56%0.847

構成比と特化係数は当サイトが算出した。漁業と鉱業・採石業は前橋にほぼ存在しないため、本文の比較からは除いている。

増えたのは8業種、医療・福祉が突出

10年でどう変わったか。

前橋市の産業別就業者の増減。医療・福祉+4,682人、教育+611人、公務+402人に対し、分類不能-4,801人、卸売業・小売業-3,284人
産業別就業者の増減(前橋市、2010〜2020年)

就業者の総数は164,055人から157,266人へ、6,789人減った。4.1%減である。

そのなかで医療・福祉は4,682人増えた。総数が減るなかでの増加である。

他に増えたのは教育・学習支援611人、公務402人、不動産・物品賃貸309人、学術研究・専門技術213人、運輸・郵便212人、サービス業(他)160人、複合サービス133人。増加はこの8つだけで、医療・福祉が突出している。

減ったのは卸売業・小売業3,284人、宿泊業・飲食1,173人、生活関連サービス・娯楽1,074人、建設業1,047人。分類不能が4,801人減っているが、これは回答の記入状況によるもので実態とは限らない。

情報通信業は高崎に集まっていく

最も薄い情報通信業について、求人の動きを見る。

情報通信業の新規求人。前橋は2023年356人から2025年248人へ30.3%減、高崎は464人から436人へ6.0%減
情報通信業の新規求人(2023〜2025年)

前橋は2023年356人から2025年248人へ、30.3%減。同じ期間に高崎は464人から436人で6.0%減にとどまる。

県計も1,234人から928人へ24.8%減っているが、前橋の減り方はそれより大きい。

結果として差が開いた。高崎÷前橋は2023年1.30倍から2025年1.76倍へ。県計に占める高崎の割合は37.6%から47.0%に上がり、前橋は28.8%から26.7%に下がった。

この数字をどう読むか

ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。

県庁所在地の産業構造

特化係数が高いのは教育1.220、公務1.178、医療・福祉1.175。いずれも公的な性格の強い仕事である。

医療の記事で、群馬県の医師の33.4%が前橋に集中していることを示した。求人の記事では金融53.8%・教育38.0%・公務30.3%が県内から前橋に集まっていた。

就業者数で見ても同じ構図が出る。県庁、県立の施設、大学病院。前橋は県の機能が集まる場所である。

農業1.273が最も高いのは、農業の記事で示したとおり農業産出額が全国8位(2024年)であることと整合する。

医療・福祉の増加は、需要の裏返し

10年で医療・福祉が4,682人増えた。就業者総数が6,789人減るなかでの増加である。

高齢化率の記事で、2050年に39.7%になる推計を示した。介護の記事では要介護認定率18.49%、認定者1人当たり給付費が全国を10.1%上回ることも見た。

需要が増えれば、働く人も増える。ただしこの統計から、需要に対して足りているかは分からない。

情報通信業という空白

特化係数0.532は、実質的に最も低い。漁業と鉱業は前橋に産業として存在しないため、比較の対象にならない。

そして求人は3年で30.3%減った。高崎の6.0%減と比べて差が大きい。

大学の記事で、群馬の高校生の県内進学率が34.6%にとどまり、県外に出た人の73.7%が首都圏に向かうことを示した。人口の記事では20〜24歳だけが転出超過だった。

情報通信業は、若い世代が就きたいと考える仕事の一つである。それが薄いことと、若者が出ていくことに関係があるかは、この統計からは確かめられない。

高崎との違いが、また出た

情報通信業の求人は、県計に占める高崎の割合が37.6%から47.0%に上がった。県の半分近くが高崎に集まっている。

事業所の記事で、事業所数の差は高崎の1.1倍なのに求人は1.4倍であることを示した。通勤の記事では昼夜間人口比率が前橋104.0で、流入は高崎と同じだった。

前橋と高崎は人口規模が近い。それでも産業によって、どちらに集まるかが分かれている。

ただし求人数は安定所管内の数値で、市の行政区域とは一致しない。高崎公共職業安定所は安中市を含む。

このデータの限界

  • 特化係数、構成比、増減率は当サイトが算出したものである。公表値ではない。
  • 就業者数は2020年の国勢調査、求人は2023〜2025年で年次が異なる。
  • 2000年のデータは産業分類の改定と市域の拡大があるため、2010年・2020年と接続できない。この記事では2010年以降を扱った。
  • 分類不能が2010年から2020年で4,801人減っている。これは回答の記入状況によるもので、実際の産業の動きとは限らない。
  • 求人は安定所管内の数値で、市の行政区域とは一致しない。前橋公共職業安定所は周辺町村を、高崎公共職業安定所は安中市を含む。
  • 求人は新規求人の年計で、実際の就職者数ではない。
  • 漁業0.042と鉱業0.272は前橋にほぼ存在しない産業のため、特化係数の比較からは除いた。
  • 情報通信業が薄いことと若者の流出の関係は、この統計からは確かめられない。
  • 事業所の規模別や、企業の本社・支社の別は扱っていない。

よくある誤解

「前橋は製造業の街」

製造業の構成比は14.78%で3番目です。卸売業・小売業15.88%、医療・福祉15.56%のほうが多くなっています。特化係数も製造業は全国並みです。

「就業者が減っているから仕事がない」

総数は10年で6,789人減りましたが、医療・福祉は4,682人増えています。産業によって動きが逆です。

「IT企業は東京に集まるから地方にはない」

県内で見ると高崎に集まっています。情報通信業の新規求人は2025年に高崎436人・前橋248人で、県計の47.0%が高崎です。地方かどうかではなく、県内のどこかという問題でもあります。

Q&A

特化係数とは何ですか

ある地域の産業構成比を、全国の構成比で割った値です。1.0なら全国と同じ、1.0より大きければその産業が全国より厚いことを示します。地域の産業の偏りを見るときに使われます。

分類不能とは何ですか

国勢調査で産業を特定できなかった回答です。記入が不十分だった場合などが該当します。2010年から2020年で4,801人減っていますが、これは調査の記入状況による変動で、産業の実態を示すものではありません。

情報通信業には何が含まれますか

通信業、放送業、情報サービス業(ソフトウェア開発など)、インターネット附随サービス業、映像・音声・文字情報制作業です。いわゆるIT企業の多くはこの分類に入ります。

事業所数でも同じ傾向ですか

この記事では就業者数を中心に扱いました。経済センサスでは前橋市の民営事業所は14,913(令和3年)です。産業別の事業所数はCSVに収録しています。市内の事業者向けの補助制度は、前橋市の産業関係補助金制度のページで確認できます。

次の更新はいつですか

国勢調査は5年ごとで、令和7年(2025年)調査の就業関係の集計はまだ公表されていません。求人は毎月公表されます。

前橋市で働く人が最も多い産業は何ですか

2020年の国勢調査では卸売業・小売業が15.88%で最も多く、医療・福祉15.56%、製造業14.78%が続きます。この3つで46.2%を占めます。

前橋市の情報通信業の求人は増えていますか

減っています。新規求人は2023年の356人から2025年は248人へ、30.3%減りました。同じ期間に高崎は464人から436人で、6.0%減にとどまります。

出典

  • 総務省「令和2年国勢調査」「平成22年国勢調査」就業状態等基本集計(統計表ID 0003450542、0003067223)/e-Stat
  • 群馬労働局「労働市場月報(詳細版)」産業別・規模別一般新規求人状況/群馬労働局
  • 総務省・経済産業省「令和3年経済センサス-活動調査」(統計表ID 0004005655)

データダウンロード

本記事で使用したデータは、CSVでご自由にダウンロードいただけます。ライセンスはCC BY 4.0です。

Noデータ名出典ダウンロード
54県内5市の産業別就業者数と特化係数、情報通信業の求人推移
2000〜2025年
総務省「国勢調査」「経済センサス」/群馬労働局「労働市場月報」CSVを保存

更新履歴

  • 2026年9月24日 増加した業種の数を修正
  • 2026年9月24日 冒頭の段落を追加
  • 2026年9月24日 Q&Aと内部リンク、表を追加
  • 2026年9月11日 公開