前橋の農業産出額は577.1億円で全国8位|主役は鶏卵に【2024年】

前橋は県庁所在地である。上場企業の記事で県内2つの地銀の本店がどちらも前橋にあることを、医療の記事では群馬県の医師の33.4%が集中していることを示した。

その前橋が、農業産出額で全国8位だった(2024年)。

前橋市の農業産出額は577.1億円(2024年)。群馬県内で1位、全国1,709市町村中8位である。

中身は畜産が73.0%。最も多いのは鶏169.6億円で、ほとんどが鶏卵である。豚110.3億円、乳用牛83.4億円と続く。

耕地面積は44年で36.5%減った。ところが産出額は2016年から2024年で41.4%増えている。

対象範囲

農業産出額は農林水産省「市町村別農業産出額(推計)」による。最新は令和6年(2024年)で、2016年から2024年まで毎年公表されている。2021年と2023年・2024年は農林水産省の詳細品目別データ(Excel)から取った。

全国順位は農林水産省が公表している順位を使った。詳細品目別データには全国1,719市町村の産出額と全国順位が載っている。以前の版では2016年の産出額から当サイトが順位を算出し「全国13位」としていたが、2024年の公表順位(8位)に置き換えた。2022年の公表順位は16位である。

耕地面積と農家数は総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」C経済基盤による。合併の影響を除くため廃置分合処理済版(統計表ID 0000020203)を使った。耕地面積は1981年度から2024年度まで44年分が取れる。

構成比、1ヘクタール当たりの値は当サイトが算出した。公表値ではない。全国順位と県内順位は農林水産省の公表値である。

なお前橋市の2024年の数値では、工芸農作物のうち茶と加工農産物が秘匿されている。品目別の合計と全体の合計は一致しない。

全国1,709市町村中8位

2024年の農業産出額で、前橋市は577.1億円。値が公表されている全国1,709市町村のうち8位である。2022年は388.8億円で16位だった。

農業産出額の全国上位10市町村。1位田原市9,336、2位都城市9,207、3位新潟市7,101、8位前橋市5,771(単位千万円、2024年)
農業産出額の全国順位(2024年、単位は千万円)
農業産出額 577.1億円 県内1位。全国1,709市町村中8位
畜産が占める割合 73.0% 鶏169.6・豚110.3・乳用牛83.4億円
44年の耕地面積 −36.5% 産出額は2016年から41.4%増

1位は愛知県田原市933.6億円、2位は宮崎県都城市920.7億円、3位は新潟市710.1億円。上位10のうち県庁所在地は新潟市(3位)、前橋市(8位)、熊本市(9位)の3市である。

前橋の8位は、県庁所在地としては新潟市に次ぐ2番目にあたる。

2024年の577.1億円は群馬県内で1位。2位太田市251.4億円、3位渋川市228.8億円、4位昭和村200.1億円、5位伊勢崎市175.9億円と続く。2022年に2位だった桐生市は111.4億円で10位になった。群馬県全体2,868億円(2024年、全国15位)の20.1%を前橋が占める。

県内35市町村をすべて並べると、次のようになります(2024年、順位は農林水産省の公表値)。

順位市町村農業産出額(億円)
1前橋市577.1
2太田市251.4
3渋川市228.8
4昭和村200.1
5伊勢崎市175.9
6嬬恋村164.0
7高崎市152.5
8東吾妻町133.1
9沼田市123.5
10桐生市111.4
11安中市74.6
12館林市68.9
13板倉町67.0
14長野原町65.5
15みどり市52.5
16富岡市42.3
17藤岡市42.3
18榛東村39.2
19邑楽町39.1
20吉岡町38.5
21片品村30.2
22みなかみ町29.6
23中之条町25.1
24高山村24.6
25千代田町18.3
26玉村町16.5
27川場村16.4
28明和町15.3
29甘楽町14.1
30下仁田町7.5
31大泉町4.4
32南牧村1.2
33上野村0.9
34草津町0.6
35神流町0.2

中身は畜産が7割

何を作っているのか。品目別に見る。

前橋市の品目別農業産出額(2024年)。鶏1,696、豚1,103、野菜922、乳用牛834、肉用牛476(単位千万円)。畜産が73.0%
品目別農業産出額(前橋市、2024年、単位は千万円)

最も多いのは鶏の169.6億円で、うち鶏卵が167.8億円。鶏卵は全国の市町村で3位である。次いで豚110.3億円、野菜92.2億円、乳用牛83.4億円、肉用牛47.6億円。2022年は豚84.1億円が最も多く、鶏は66.5億円だった。

畜産の合計421.0億円が全体の73.0%を占める。耕種は156.1億円で27.0%。畜産は耕種の2.70倍である。

米は34.2億円で全体の5.9%にとどまる。前橋は米の産地ではない。

耕地は36.5%減った。産出額は41.4%増

耕地面積は1981年度の12,460ヘクタールから2024年度の7,910ヘクタールへ。

前橋市の耕地面積の推移。1981年度12,460haから2024年度7,910haへ44年で36.5%減少
耕地面積の推移(前橋市、1981〜2024年度)

44年で36.5%減、4,550ヘクタールが失われた。減り方は一貫していて、増えた時期がない。

ところが産出額は減っていない。2016年408.2億円から2024年577.1億円へ、41.4%増である。2022年までは388.8億円と4.8%減だったが、2023年424.8億円、2024年577.1億円と増えた。同じ期間に耕地面積は8,810ヘクタールから7,910ヘクタールへ10.2%減った。

1ヘクタール当たりの産出額は2016年0.463千万円から2024年0.730千万円へ、57.5%上がっている。

販売農家は6割減り、自給的農家は6割増えた

農家の数も動いている。

販売農家は1999年の7,130戸から2019年の2,751戸へ、61.4%減った。一方で自給的農家は1,824戸から2,962戸へ62.4%増えている。

合計では8,954戸から5,713戸へ36.2%減。ただし販売農家の割合は79.6%から48.2%へ下がった。

専業農家は1999年1,316戸から2014年1,268戸でほぼ横ばい。兼業農家は5,814戸から2,433戸へ58.2%減った。

この数字をどう読むか

ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。

畜産は、土地をあまり必要としない

耕地が36.5%減っても産出額が増えているのは、畜産の比重が高いためと考えられる。2024年に増えた額の多くは鶏(鶏卵)と豚である。

県内5市の1ヘクタール当たり産出額を比べる(2024年)。桐生市は0.88千万円で最も高く、畜産比率は71.1%。耕地はわずか1,260ヘクタールしかない。前橋0.73の1.2倍である。2022年は桐生1.77、前橋0.49で3.6倍だった。

伊勢崎市は畜産比率19.3%で、1ヘクタール当たり0.42千万円。太田市は36.9%で0.45、高崎市は39.3%で0.27。畜産比率の高い桐生と前橋が上位にある一方、畜産比率が中位の高崎が最も低く、きれいな比例ではない。

ただしこの統計から因果は確かめられない。畜産の飼料用地が耕地面積にどう計上されるかなど、定義の影響もありうる。

農業をやめたのではなく、規模を縮めた

販売農家が61.4%減る一方で、自給的農家が62.4%増えた。合計の減り方(36.2%)より、内訳の入れ替わりのほうが大きい。

販売農家は経営耕地30アール以上または農産物販売金額50万円以上の農家、自給的農家はそれ未満を指す。販売農家から自給的農家へ移った世帯が相当数あると読める。

高齢化率の記事で、前橋の高齢化率が2050年に39.7%まで上がる見通しを示した。農業従事者の高齢化は全国的な傾向であり、規模を縮めて自家用に切り替える動きは、その帰結として説明できる。

ただし農家数のデータは1999年から2019年の5時点しかなく、最新は農林業センサス2020年である。2025年センサスの結果はまだ公表されていない。

県庁所在地の顔が、もう一つある

これまでの記事で、前橋の県庁所在地としての姿を見てきた。昼夜間人口比率104.0で周辺から人を集め、県の医師の33.4%が集中し、地銀2行の本店がある。

同じ市が、農業産出額で全国8位でもある。上位10のうち県庁所在地は新潟市・前橋市・熊本市の3市で、他は田原市・都城市・別海町といった農業専業に近い自治体である。

学校別の記事で、旧町村部の児童数の減り方が旧市域の2.6倍であることを示した。前橋は2004年と2009年に4つの町村を編入しており、市域が広い。都市機能と農業が同じ市域に共存している。

ただしこの統計から、農業がどの地区で行われているかは分からない。

このデータの限界

  • 構成比、1ヘクタール当たりの値は当サイトが算出したものである。公表値ではない。全国順位と県内順位は農林水産省の公表値である。
  • 以前の版の「全国13位」は2016年の産出額から当サイトが算出した順位だった。2024年の公表順位(8位)に置き換えた。
  • 前橋市の2024年の数値では、工芸農作物のうち茶と加工農産物が秘匿されている。品目別の合計と全体の合計は一致しない。群馬県全体では2016〜2024年の9年分で649件の秘匿がある。
  • 農業産出額は推計値である。市町村別の実測ではない。
  • 農家数は1999年から2019年の5時点のみで、最新は農林業センサス2020年である。2025年センサスの結果はまだ公表されていない。
  • 耕地放棄面積は2009年と2014年の2時点しかない(前橋市は1,211haと1,175ha)。
  • 1ヘクタール当たりの産出額は、産出額(2024年)と耕地面積(2024年度)で暦年と年度の違いがある。
  • 市内のどの地区で農業が行われているかは、この統計からは分からない。

よくある誤解

「前橋は米どころ」

米は34.2億円で全体の5.9%です(2024年)。最も多いのは鶏の169.6億円で、畜産全体では73.0%を占めます。野菜92.2億円も米の2.7倍あります。

「耕地が減っているから農業が衰退している」

耕地は44年で36.5%減りましたが、産出額は2016年から2024年で41.4%増えています。1ヘクタール当たりの産出額は57.5%上がっています。畜産の比重が高いことが関係していると考えられます。

「農家が6割減った」

61.4%減ったのは販売農家です。自給的農家は62.4%増えており、合計では36.2%減にとどまります。規模を縮めて自家用に切り替えた世帯が相当数あると読めます。

Q&A

販売農家と自給的農家の違いは

経営耕地面積30アール以上、または農産物販売金額50万円以上の農家が販売農家です。それ未満が自給的農家になります。農林業センサスの定義です。

毎年のデータはありますか

あります。市町村別農業産出額(推計)は2014年分から毎年公表されています。e-Statのデータベースには2021年と2023年・2024年がありませんが、農林水産省の詳細品目別データ(Excel)で取れます。当サイトのCSVには2016〜2024年の9年分を収めています。

市内のどこで農業が盛んですか

この統計では分かりません。農林業センサスには旧市町村単位の内訳があるため、大胡・宮城・粕川・富士見の区分で見られる可能性があります。稿を改めて扱えるか検討します。

農業産出額と農業所得は違いますか

違います。産出額は生産された農産物の販売額にあたり、そこから飼料費や肥料費などの経費を引いたものが所得になります。畜産は飼料費の比重が大きいため、産出額が高くても所得の割合は下がります。

次の更新はいつですか

市町村別農業産出額は毎年公表されます。次回は令和7年(2025年)分となります。農林業センサスは5年ごとで、2025年調査の結果が公表され次第、農家数を更新します。

出典

  • 農林水産省「市町村別農業産出額(推計)」令和6年・令和4年ほか 詳細品目別データ(全国順位を含む)/農林水産省、平成28年〜令和4年(政府統計コード 00500249)/e-Stat
  • 農林水産省「生産農業所得統計」令和6年(県全体の産出額と順位)
  • 総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」C経済基盤 廃置分合処理済(統計表ID 0000020203)/e-Stat 地域統計
  • 群馬県「令和7年度 群馬の農業」/群馬県

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耕地面積は1981〜2024年度
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更新履歴

  • 2026年9月24日 最新の統計に更新(結論を見直し)
  • 2026年9月21日 県内35市町村の一覧表を追加
  • 2026年9月8日 公開