退職金がある企業は74.9%|規模別で20pt差【2023年版】

退職金がいくらもらえるか、という話ではない。そもそも退職金の制度がある会社とない会社がある、という話である。

厚生労働省の就労条件総合調査は、5年に一度、企業の退職給付制度を調べている。最新は令和5年調査で、次回は令和10年になる。この調査には都道府県別の数値がない。全国と企業規模別の集計だけである。だからこの記事は、前橋の退職金がいくらかを示すことはできない。示せるのは、制度そのものが企業の規模によってどう違うか、そして額が何によって決まるかである。

前橋の事業所の大半は中小企業である。そのことと、この全国データの規模別の差を重ねると、前橋で働くことの意味が一つ増える。

退職給付(一時金・年金)制度がある企業は74.9%。5年前の平成30年調査は80.5%で、5.6ポイント下がった。逆に言えば、25.1%の企業には制度がない。

企業規模別では、1,000人以上が90.1%、30〜99人が70.1%。規模の上下で20.0ポイントの差がある。

定年退職者の給付額は勤続20〜24年で1,021万円、勤続35年以上で2,037万円(大学・大学院卒、管理・事務・技術職)。額は勤続年数でほぼ2倍に開く。

対象範囲

厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」による。調査対象は全国の、常用労働者30人以上を雇用する民営企業である。産業は16大産業。約6,400社を抽出し、有効回答は3,768社、有効回答率58.7%。母集団に復元して集計している。

制度の有無は令和5年1月1日現在の状況。退職者数と退職給付額は令和4年(または令和3会計年度)1年間の実績である。集計の対象になるのは、期間を定めずに雇われている労働者(パートタイム労働者を除く)に限られる。

この調査に都道府県別の数値はない。以下の数値はすべて全国のものである。前橋・群馬に絞り込んだ数値ではないことを、読む前に確認しておいてほしい。

退職金がある企業は74.9%。規模で20ポイントの差

退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合は74.9%である(厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」第16表、令和5年1月1日現在)。裏を返せば、30人以上の企業でも4社に1社には退職金の制度がない。

公的年金については別の記事で扱った。退職給付は、その上に積む部分である。

5年前の平成30年調査では80.5%だった。5.6ポイント下がっている。

企業規模別に見ると、1,000人以上が90.1%、300〜999人が88.8%、100〜299人が84.7%、30〜99人が70.1%となる。規模が下がるほど制度がある企業は減り、最上位と最下位で20.0ポイントの差がつく。

企業規模別の退職給付制度がある企業割合。1,000人以上90.1%、300〜999人88.8%、100〜299人84.7%、30〜99人70.1%、全体74.9%
企業規模別の退職給付制度がある企業割合(令和5年)
退職給付制度がある企業 74.9% 5年前の80.5%から5.6pt低下
規模による差 20.0pt 1,000人以上90.1%/30〜99人70.1%
勤続35年以上の給付額 2,037万円 勤続20〜24年は1,021万円

制度がある企業について、その形態を見ると、退職一時金制度のみが69.0%、退職年金制度のみが9.6%、両制度併用が21.4%である(同第16表)。ここにも規模の差が出る。1,000人以上では一時金のみが25.9%で両制度併用が47.1%なのに対し、30〜99人では一時金のみが77.2%、両制度併用は16.2%にとどまる。

産業別では、複合サービス事業が97.9%と最も高く、鉱業,採石業,砂利採取業が97.6%、電気・ガス・熱供給・水道業が96.4%と続く。低いほうは宿泊業,飲食サービス業が42.2%、サービス業(他に分類されないもの)が54.4%、生活関連サービス業,娯楽業が68.5%である。製造業は85.6%、医療,福祉は75.5%、運輸業,郵便業は69.9%だった。

額は勤続年数で決まる

令和4年1年間に、勤続20年以上かつ45歳以上で定年退職した人の1人平均退職給付額は、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で1,896万円、高校卒(管理・事務・技術職)で1,682万円、高校卒(現業職)で1,183万円である(同第22表)。

この額を勤続年数別に分けると、決まっているのが学歴よりも勤続年数であることがはっきりする。大学・大学院卒(管理・事務・技術職)では、勤続20〜24年が1,021万円、25〜29年が1,559万円、30〜34年が1,891万円、35年以上が2,037万円となる(同第23表)。20〜24年と35年以上で1,016万円、率にして2.0倍の開きがある。

勤続年数別・学歴別の定年退職者1人平均退職給付額。大学・大学院卒は勤続20〜24年1,021万円から35年以上2,037万円まで増加する
勤続年数別の定年退職者1人平均退職給付額(令和4年1年間)

高校卒ではこの傾きがさらに急である。高校卒(管理・事務・技術職)は勤続20〜24年が557万円、35年以上が1,909万円で3.4倍。高校卒(現業職)は406万円から1,471万円で3.6倍になる。

退職事由でも額は変わる。定年退職の1,896万円(大学・大学院卒、管理・事務・技術職)に対し、自己都合退職は1,441万円である(同第22表)。同じ勤続20年以上かつ45歳以上の退職者どうしの比較で、455万円の差がつく。

定年退職者1人平均退職給付額を、学歴・職種と勤続年数ですべて並べる(令和4年1年間、退職給付制度計)。

勤続年数大学・大学院卒(管理・事務・技術)高校卒(管理・事務・技術)高校卒(現業)
20〜24年1,021557406
25〜29年1,559618555
30〜34年1,8911,094800
35年以上2,0371,9091,471
20年以上(計)1,8961,6821,183

単位は万円。勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者について、退職給付制度がある企業だけを集計した平均である。

原資の持ち方も規模で分かれる

制度があるかどうかだけでなく、退職金の原資をどう用意しているかにも規模の差がある。

退職一時金制度がある企業の支払準備形態を見ると、全体では社内準備が56.5%、中小企業退職金共済制度(中退共)が42.0%、特定退職金共済制度が9.9%である(複数回答。厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」第17表)。

これが1,000人以上では社内準備91.6%、中退共は該当なしとなる。一方、30〜99人では社内準備49.6%に対して中退共が48.5%で、ほぼ並ぶ。大企業は自社で積み、小さい企業は外部の共済に預けている。

退職年金制度がある企業では、確定拠出年金(企業型)が50.3%、確定給付企業年金が44.3%、厚生年金基金(上乗せ給付)が19.3%である(複数回答、同第18表)。ここでも30〜99人は確定拠出年金45.8%、確定給付企業年金36.2%と全体より低く、厚生年金基金が26.5%と高い。

なお、退職給付制度がある企業のうち、令和4年1年間に勤続20年以上かつ45歳以上の退職者がいた企業は29.2%にとどまる。30〜99人では18.6%である(同第21表)。制度はあっても、それが実際に支払われる場面は毎年訪れるわけではない。

この数字をどう読むか

ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下は前橋の文脈に置いたときに何が言えるかという話になる。

賃金の差は、退職の時点でもう一度開く

前橋・群馬の賃金の記事で、群馬と東京の年収差は20〜24歳では月2.4万円しかないが、年齢とともに開き、50〜54歳で月14.6万円が最大になることを示した(2025年)。

退職金はこの差の上に乗る。第22表によれば、定年退職者の退職給付額は退職時の所定内賃金の36.0月分(大学・大学院卒、管理・事務・技術職)である。額そのものが勤続年数で決まり、その勤続年数に退職時点の賃金が掛かる。賃金の差が最も大きく開いた年齢で、その差にさらに約36を掛けた金額が一度に支払われることになる。

毎月の給与だけを見て地域差を測ると、この最後の一回分が抜け落ちる。逆に言えば、若いうちの月2.4万円という差の小ささを根拠に地域間の待遇差を語るのは、比較の期間が短すぎるということでもある。

前橋の事業所構成を重ねると、74.9%はまだ高い側の数字である

前橋の事業所数の記事で見たとおり、前橋の民営事業所は14,913で、その大半は中小企業である。

この調査の対象は常用労働者30人以上の企業に限られる。つまり30人未満の企業は、制度がある企業としてもない企業としても、74.9%という数字にまったく反映されていない。そして調査の中でも規模が下がるほど制度がある割合は下がり、30〜99人で70.1%まで落ちる。

この傾きがさらに小さい規模でも続くと考えるなら、前橋で働く人が実際に退職金の制度がある職場にいる割合は、74.9%よりも低い可能性が高い。これは推測であって、この調査で確かめられることではない。ただし、規模別に一貫した傾きが出ている以上、74.9%を「全国平均だから前橋もだいたいこのくらい」と読むのは誤りである。

所得の統計に、退職金は映らない

前橋の課税対象所得の記事では、前橋の課税対象所得が375万円で、全国1,742市区町村中234位、上位14%にあたることを示した。

ただし退職金は、税制上は退職所得として給与所得とは別に扱われる。市町村民税の課税対象所得の統計には現れない。つまり、前橋の所得水準が県内2位・全国上位14%であることと、前橋で働く人の退職後の資産がどれだけ厚いかは、別の話である。

老後の資産形成を見るなら、所得の統計とは別の軸が要る。群馬県のiDeCo加入の記事で見た自助努力の側と、この記事で見た勤め先の制度の側と、両方を並べて初めて全体が見えることになる。

このデータの限界

  • 都道府県別の集計がない。全国と企業規模別・産業別の数値のみで、前橋や群馬に絞り込むことはできない。
  • 調査対象は常用労働者30人以上の民営企業である。30人未満の企業は一切含まれない。
  • 退職給付額の平均は、退職給付制度がある企業だけを集計したものである。制度がない企業の0円は平均に含まれていない。
  • 退職給付額の集計対象は、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者に限られる。短い勤続で辞めた人の額は分からない。
  • 標本調査である。調査客体数6,421に対して有効回答数3,768、有効回答率58.7%。数値は母集団に復元した推計値であり、標本誤差がある。
  • この調査は5年ごとで、退職給付に関する項目は令和5年調査が最新である。次回は令和10年になる。
  • 集計対象の労働者は、期間を定めずに雇われている労働者からパートタイム労働者を除いたものである。

よくある誤解

「退職金は法律で払うことになっている」

退職給付制度を設けること自体は、法律上の義務ではない。就業規則等で制度として定めた場合に支払い義務が生じる。実際、30人以上の企業でも制度があるのは74.9%で、平成30年調査の80.5%から下がっている。

「大卒なら退職金は2,000万円もらえる」

2,037万円という数字は、退職給付制度がある企業で、勤続35年以上、45歳以上で定年退職した大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の平均である。条件を一つ外すと額は大きく変わる。同じ大学・大学院卒でも勤続20〜24年なら1,021万円、自己都合退職なら1,441万円である。

「中小企業に退職金はない」

30〜99人の企業でも70.1%に制度がある。ただし形態は偏っていて、退職一時金制度のみが77.2%、両制度併用は16.2%にとどまる。原資も社内準備49.6%に対して中退共48.5%と、外部の共済に預ける比率が高い。「ない」のではなく「薄い」というのが数字に近い。

Q&A

なぜ前橋の数字が出てこないのですか

就労条件総合調査に都道府県別の集計がないためです。この調査は全国を対象に企業規模別・産業別で集計しており、地域別の内訳は公表されていません。前橋に引きつけて読むには、前橋の事業所の規模構成や産業構成を別の統計から持ってきて重ねるしかありません。この記事の後半でやっているのがそれです。

30人未満の会社の退職金は分からないのですか

この調査からは分かりません。調査対象が常用労働者30人以上の企業に限られているためです。規模が下がるほど制度がある割合が下がるという傾きは30〜99人まで確認できますが、それより小さい規模でどうなっているかは、この調査の外側の話になります。

中小企業退職金共済制度とは何ですか

中小企業退職金共済法に基づき、企業が勤労者退職金共済機構と契約を結んで、退職金の原資の積立て事務を委託する制度です。退職一時金制度がある30〜99人の企業では48.5%が利用しています。原資が社外にあるため、勤め先の経営状況から切り離されるという性格があります。加入できる企業の条件は、厚生労働省の中小企業退職金共済制度の加入条件のページで確認できます。

転職すると退職金は減りますか

この調査は個人を追跡していないため、転職した人としなかった人を比較することはできません。分かるのは、同じ企業での勤続年数が長いほど退職給付額が大きいという事実だけです。大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の定年退職者で、勤続20〜24年が1,021万円、35年以上が2,037万円でした。この差をどう解釈するかは、この記事の範囲を超えます。

次の調査はいつですか

退職給付制度に関する項目は5年ごとの調査です。最新が令和5年調査なので、次回は令和10年になります。それまでこの数値が最新のまま使われます。

大卒の退職金の平均はいくらですか

勤続20年以上かつ45歳以上で定年退職した大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の平均は1,896万円です。勤続20〜24年では1,021万円、勤続35年以上では2,037万円です。退職給付制度がある企業だけの平均で、令和4年1年間の実績です。

退職金制度がない会社はどれくらいありますか

常用労働者30人以上の企業のうち、退職給付制度がない企業は25.1%です。30〜99人の企業で制度があるのは70.1%で、1,000人以上の90.1%より20.0ポイント低くなっています。

出典

  • 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」第16表(退職給付制度の有無、形態別企業割合)、第17表(退職一時金制度の支払準備形態別企業割合)、第18表(退職年金制度の支払準備形態別企業割合)、第21表(退職者のいた企業割合、退職事由別退職者割合)、第22表(退職者1人平均退職給付額)、第23表(退職給付制度の形態別定年退職者1人平均退職給付額)/概況PDF
  • 厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」(前回調査との比較部分)

データダウンロード

この記事で使用した数値をCSVにまとめました。ライセンスはCC BY 4.0です。出典を明記すれば自由に利用できます。

  • taishoku-seido-2023.csv(退職給付制度の有無と形態。企業規模別4区分・産業別16区分・平成30年調査計を収録)
  • taishoku-kingaku-2023.csv(定年退職者1人平均退職給付額。学歴・職種3区分×勤続年数4区分×制度形態別を収録)

更新履歴

  • 2026年9月24日 Q&Aと内部リンク、表を追加
  • 2026年8月31日 公開