群馬は日照時間が長い、とよく言われる。その条件は、屋根の上に活かされているのか。
前橋の年間日照時間は2,153.7時間。47都道府県の代表地点で3位だった。
ところが太陽光発電機器のある住宅は6.55%で、県内5市の4番目である。
太田9.09%、伊勢崎8.08%、高崎7.08%が上にいる。条件は良いが、順位は高くない。
対象範囲
住宅の数は総務省「令和5年住宅・土地統計調査」による。社会・人口統計体系の市区町村データを通じて取得した。
項目の正式な名称は「太陽光を利用した発電機器のある住宅数」である。2008年・2013年・2018年・2023年の4時点が取れる。
日照時間は気象庁「地上気象観測 平年値(1991〜2020年)」による。順位は当サイトが47都道府県の代表地点を並べ替えて算出した。
代表地点は気象官署である。埼玉は熊谷、滋賀は彦根、山口は下関など、県庁所在地と一致しない県もある。
扱えないもの
住宅・土地統計では持ち家と借家の別が市区町村では公表されていない。この記事の「持ち家に対する割合」は、住宅数を持ち家数で割ったものである。
借家に設置されている分も分子に含まれるため、実際の持ち家の設置率とは異なる。
給湯・暖房・断熱などの設備は、市区町村別の項目が存在しない。太陽熱を利用した温水機器と、二重サッシ・複層ガラスの窓は取得できる。
前橋の日照時間は全国3位

前橋の年間日照時間は2,153.7時間。甲府2,225.8時間、高知2,159.7時間に次ぐ3位である。
4位の静岡は2,151.5時間。前橋との差は2.2時間しかない。
最も短いのは秋田の1,527.4時間。前橋はその1.41倍である。
「群馬は日照時間が長い」という通説は、この数字で裏づけられる。
設置率は5市で4番目

前橋市で太陽光発電機器のある住宅は11,110戸。総住宅169,580に対し6.55%である。
5市では太田9.09%、伊勢崎8.08%、高崎7.08%が上にいる。前橋は4番目である。
全国4.15%は1.58倍上回る。ただし群馬県7.23%は下回る。
持ち家98,080に対する割合で見ても順序は変わらない。太田15.58%、伊勢崎13.97%、高崎12.45%、前橋11.33%。
群馬県は都道府県では総住宅数に対する割合で47都道府県中7位。1位は佐賀9.19%、2位は長野7.74%である。
15年で5.3倍

前橋は2008年の2,090戸から2023年の11,110戸へ。15年で5.3倍になった。
全国は520,500戸から2,699,900戸で5.2倍。前橋はほぼ同じ水準で増えている。
ただし群馬県は11,700戸から69,900戸で6.0倍。県全体のほうが速い。
5市では高崎8.1倍、伊勢崎6.5倍、太田6.0倍。前橋5.3倍は桐生と並んで最も小さい。
FITのデータでは16,101件
別の統計もある。固定価格買取制度(FIT)の認定・導入情報である。
| 市 | 導入件数 | 導入容量 | 100世帯当たり |
|---|---|---|---|
| 高崎市 | 17,461件 | 81,873.6kW | 10.9件 |
| 前橋市 | 16,101件 | 76,733.3kW | 11.3件 |
| 太田市 | 14,002件 | 66,533.1kW | 15.1件 |
| 伊勢崎市 | 11,403件 | 56,117.9kW | 12.9件 |
| 桐生市 | 3,749件 | 18,140.2kW | 8.8件 |
2026年3月末時点で、前橋の住宅用太陽光(10kW未満)は16,101件・76,733.3kW。1件当たり4.77kWである。
実数では高崎17,461件が上にいる。100世帯当たりでは太田15.1件、伊勢崎12.9件、前橋11.3件、高崎10.9件。
順序は住宅・土地統計とほぼ同じである。
ただし2つの統計は一致しない。住宅・土地統計の11,110戸に対し、FITは16,101件で1.45倍。時点が3年違い、FITは設備の件数、住宅・土地統計は住宅の数である。
再エネ設備の記事で、前橋の導入容量が2026年3月末で36.3万kWと県内5市の2位、人口1,000人当たりでは5市で最も少ないことを示した。
この数字をどう読むか
ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。
条件と結果が一致しない
日照時間は全国3位。ところが設置率は5市で4番目。
日照時間は市ごとの違いが小さい。5市はいずれも関東平野の北部にあり、条件はほぼ同じである。
つまり設置率の差は、日照以外の要因で生じている。
可住地の記事で、前橋の可住地面積が238.67km²で総面積の76.6%、全国33.0%の2.3倍であることを示した。
持ち家率では説明がつかない
持ち家の記事で、前橋の持ち家率68.6%が全国60.9%を上回ることを示した。屋根を持つ世帯は多い。
住まいの記事では、持ち家が1住宅当たり124.97㎡で全国118.25㎡を上回っていた。屋根の面積も広いはずである。
それでも設置率は5市で4番目。持ち家率と広さだけでは説明がつかない。
太田・伊勢崎は製造業が厚く、建築物の記事で見たとおり新設住宅の構成も違う。ただしこの統計から因果は確かめられない。
伸びも速くない
15年で5.3倍は、全国5.2倍とほぼ同じ。ただし群馬県6.0倍、高崎8.1倍より遅い。
2008年の時点で前橋は2,090戸、高崎は1,630戸だった。出発点は前橋のほうが多かった。
15年後には高崎13,180戸、前橋11,110戸で逆転している。追い越された形である。
このデータの限界
- 割合と倍率は当サイトが算出した。公表値ではない。日照時間の順位も、気象庁の平年値47地点を並べ替えて自前で算出したものである。
- 日照時間の代表地点は気象官署で、県庁所在地と一致しない県がある(埼玉は熊谷、滋賀は彦根、山口は下関など)。
- 住宅・土地統計では、太陽光発電機器のある住宅の持ち家・借家別が市区町村では公表されていない。この記事の「持ち家に対する割合」は分子に借家分を含むため、実際の持ち家の設置率とは異なる。
- 住宅・土地統計は標本調査である。市区町村別の値には標本誤差がある。
- FITの導入件数は設備の数であり、住宅の数ではない。同一住宅に複数の設備がある場合や、事業用に転用された場合も含まれうる。住宅・土地統計とは一致しない。
- FITの認定件数は新規認定分のみの公表で、移行認定分の表がない。導入件数(新規+移行)とは基準が違うため、この記事では認定件数を扱っていない。
- FITの時点は2026年3月末、住宅・土地統計は2023年10月で3年ずれる。
- 100世帯当たりの件数は、住宅・土地統計2023年の「居住世帯あり住宅数」を分母とした。FITの時点とは3年ずれる。
- 給湯・暖房・断熱などの設備は市区町村別の項目が存在しない。蓄電池の有無も扱えない。
- 設置費用、発電量、売電収入はこの統計では分からない。
よくある誤解
「日照が長いから太陽光が多い」
前橋の日照時間は全国3位ですが、設置率は県内5市で4番目です。5市の日照条件はほぼ同じなので、設置率の差は日照以外の要因によるものです。
「持ち家が多いから設置しやすい」
前橋の持ち家率68.6%は全国60.9%を上回り、1住宅当たりの広さも全国以上です。それでも設置率は5市で4番目でした。持ち家率だけでは説明がつきません。
「住宅の数とFITの件数は同じ」
別の統計です。住宅・土地統計の11,110戸(2023年)に対し、FITは16,101件(2026年3月末)で1.45倍。時点が違うほか、FITは設備の件数で住宅の数ではありません。
Q&A
前橋は太陽光発電に向いていますか
日照時間は47都道府県の代表地点で3位(2,153.7時間)です。ただし実際の発電量は屋根の向きや角度、周囲の影などにも左右されるため、この統計だけでは判断できません。
設置費用はいくらですか
この記事では扱っていません。設置費用や売電収入に関するデータは、この統計には含まれていません。
前橋市に補助金はありますか
制度の内容は年度によって変わるため、前橋市の公式サイトでご確認ください。当サイトでは個別の制度の解説は行っていません。
なぜ太田の設置率が高いのですか
この統計からは分かりません。日照条件は5市でほぼ同じなので、住宅の構成や事業者の営業、自治体の施策など複数の要因が考えられますが、確かめられていません。
次の更新はいつですか
住宅・土地統計調査は5年ごとで、次回は2028年調査です。FITの情報公表は四半期ごとに更新されます。
出典
- 総務省「住宅・土地統計調査」2008・2013・2018・2023年/社会・人口統計体系 市区町村データ(統計表ID 0000020208)/e-Stat
- 気象庁「地上気象観測 平年値(1991〜2020年)」/過去の気象データ検索
- 資源エネルギー庁「FIT・FIP制度 情報公表用ウェブサイト」2026年3月末時点/事業計画認定情報 公表用ウェブサイト
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| No | データ名 | 出典 | ダウンロード |
|---|---|---|---|
| 75 | 県内5市の太陽光発電機器のある住宅と日照時間 2008〜2023年 | 総務省「住宅・土地統計調査」、気象庁、資源エネルギー庁 | CSVを保存 |
更新履歴
- 2026年9月23日 関連する記事への内部リンクを追加
- 2026年9月17日 公開
