前橋市の下水道は料金で賄えない|経費回収率76.4%【2024年度】

ごみの記事で、前橋のリサイクル率16.54%が県内5市で2位(1位は太田19.15%)であることを示した。財政の記事では、将来負担比率55.5%が県内5市で最も高いことも見た。

毎日使う上下水道は、どうなっているのか。

前橋市の水道は料金回収率103.9%。料金で費用を賄えている。

ところが下水道の経費回収率は76.4%で県内5市の最下位。5年前の83.3%から下がり続けている。

そして水道管の更新率は0.63%。全部を入れ替えるのに159年かかる計算になる。

対象範囲

総務省「経営比較分析表」令和6年度決算による。市町村ごとの水道事業・下水道事業の経営指標が公表されている。令和2年度から令和6年度までの5年分を使った。

太田市に市営の水道はない。群馬東部水道企業団が給水しているため、水道の比較では企業団の値を使っている。伊勢崎市には市営水道がある。

下水道は公共下水道事業の値である。農業集落排水や浄化槽は含まれない。

料金は総務省「小売物価統計調査」(統計表ID 0003420453)による。調査対象は都道府県庁所在市と人口15万以上の市の95市で、群馬県は前橋市のみである。県内5市の料金は比較できない。

普及率は都道府県版の統計しかない。市区町村別の下水道普及率は、社会・人口統計体系には収録されていない。

更新に何年かかるかは、100÷更新率で当サイトが算出した。更新率が毎年同じなら何年かかるかを示す目安で、実際の計画ではない。

水道は足りている。下水道は足りていない

料金で費用を賄えているかを見る。

水道の料金回収率は伊勢崎115.9%・前橋103.9%など100%超が多いが、下水道の経費回収率は高崎119.0%を除き100%未満で前橋76.4%が最下位
料金回収率と経費回収率(2024年度決算)
水道の料金回収率 103.9% 100%を超えている
下水道の経費回収率 76.4% 県内5市で最下位
高崎市の下水道 119.0% 前橋との差は42.6ポイント

水道の料金回収率は前橋103.9%。伊勢崎115.9%、群馬東部水道企業団114.1%、高崎103.6%と、桐生90.8%を除いて100%を超えている。

下水道は違う。前橋76.4%、伊勢崎77.6%、太田78.7%、桐生93.8%。100%を超えるのは高崎119.0%だけである。

100%を下回るということは、使用料で費用を賄えていないということである。足りない分は一般会計からの繰入などで補われる。

同じ市のなかで、水道103.9%と下水道76.4%。27.5ポイントの差がある。

回収率は下がり、老朽化は進む

5年の推移を見る。

前橋市の下水道の経費回収率は2020年度83.3%から2024年度76.4%へ低下、水道管の経年化率は16.5%から23.2%へ上昇
経費回収率と経年化率の推移(前橋市、2020〜2024年度)

下水道の経費回収率は2020年度83.3%から2024年度76.4%へ。5年で6.9ポイント下がった。

同じ期間に、水道管の経年化率は16.5%から23.2%へ上がっている。法定耐用年数の40年を超えた管が、4本に1本に近づいている。

下水道料金は2020年以降2,156円で据え置かれている。費用が上がるなかで料金が変わらなければ、回収率は下がる。

全部入れ替えるのに159年

更新のペースを見る。

いまのペースで全管路を更新するのにかかる年数。群馬東部水道企業団108年、桐生市112年、伊勢崎市123年、前橋市159年、高崎市263年
管路の更新にかかる年数(2024年度の更新率で計算)

前橋市の水道管の更新率は0.63%。1年に0.63%ずつ入れ替えると、全部で159年かかる。

水道管の法定耐用年数は40年である。159年かけて一巡する間に、最初に替えた管がまた古くなる。

県内では群馬東部水道企業団0.93%で108年、桐生0.89%で112年、伊勢崎0.81%で123年。高崎は0.38%で263年である。

下水道管はさらに進まない。前橋の管渠改善率は0.13%で、計算上は769年かかる。太田0.34%で294年、高崎0.11%で909年である。

この数字をどう読むか

ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。

水道と下水道で差がつく理由

同じ市で、水道103.9%・下水道76.4%。この差は前橋だけのものではない。5市すべてで、下水道のほうが回収率が低い。

下水道は面的に管を敷く必要があり、人口密度が低いほど1人当たりの費用が上がる。群馬県の下水道処理人口普及率は56.7%で、全国81.4%を24.7ポイント下回る。

将来人口の記事で、2050年に人口が18%減る推計を示した。使う人が減れば、1人当たりの負担は増える。

ただし市区町村別の普及率は公表されていない。前橋市の普及率がどうかは、この統計からは分からない。

159年という数字の意味

159年は計算上の目安であって、計画ではない。更新率は年によって変わる。

実際、前橋の更新率は2020年度0.34%から2024年度0.63%へ上がっている。ペースは速まっている。

それでも経年化率は16.5%から23.2%へ上がった。更新が老朽化に追いついていない。

建築物の記事で、前橋の着工床面積が15年で27.2%減ったことを示した。新しく作る量が減り、既存のものを維持する負担が残る。この構図は建物とインフラで共通している。

料金は上がってきた

前橋の水道料は2000年の2,238円から2025年の2,812円へ。25.6%上がった。下水道料は1,843円から2,156円で17.0%増である。

2025年の水道料2,812円は東京都区部2,160円の1.30倍。ただし調査対象95市の平均2,838円とはほぼ同じである。

下水道料2,156円は、調査対象市の平均2,557円の0.84倍。前橋の下水道料は、他市と比べて安いほうにある。

家計収支の記事で、前橋の消費支出が325,546円で全国301,797円を上回ることを示した。上下水道料はその一部である。

財政とのつながり

経費回収率が100%を下回る分は、一般会計から繰り入れられる。下水道の76.4%という数字は、市の財政にも関わる。

財政の記事で、前橋市の将来負担比率55.5%が県内5市で最も高いことを示した(2024年度。高崎41.0・伊勢崎7.9・太田25.6)。

下水道の経費回収率でも、前橋76.4%は高崎119.0%を42.6ポイント下回る。2つの数字は同じ方向を向いている。

ただし将来負担比率に下水道事業がどれだけ含まれるかは、この記事では確かめていない。2つを直接つなげることはできない。

このデータの限界

  • 更新にかかる年数は100÷更新率で当サイトが算出した目安である。更新率が毎年同じなら何年かかるかを示すもので、実際の計画ではない。
  • 太田市に市営の水道はなく、群馬東部水道企業団が給水している。水道の比較では企業団の値を使っている。
  • 下水道は公共下水道事業の値で、農業集落排水や浄化槽は含まれない。
  • 伊勢崎市の下水道管渠の老朽化率と改善率がいずれも0.00%と記録されている。実態か、該当なしの扱いかを確認できていない。
  • 桐生市・伊勢崎市・太田市の汚水処理原価が2024年度にいずれも150.00円/㎥ちょうどである。繰出基準の上限値と一致する可能性があり、実際の原価とは異なるおそれがある。
  • 料金の調査対象は都道府県庁所在市と人口15万以上の市の95市で、群馬県は前橋市のみである。県内5市の料金は比較できない。
  • 市区町村別の下水道普及率は、社会・人口統計体系には収録されていない。この記事の普及率は群馬県と全国の値である。
  • 職員数は経営比較分析表のこのファイルには収録されていない。
  • 管路の耐震適合率は、この記事では扱っていない。国土交通省が別途公表しているが、指標の定義が従来と変わっている。
  • 経費回収率が低いことが、ただちに問題であるとは限らない。普及の途上にある事業や、地形の条件によっても変わる。

よくある誤解

「水道料金は高い」

前橋の水道料2,812円は東京都区部2,160円の1.30倍ですが、調査対象95市の平均2,838円とはほぼ同じです。下水道料2,156円は市平均2,557円の0.84倍で、安いほうに入ります。

「上下水道は黒字のはず」

水道は料金回収率103.9%で賄えていますが、下水道は経費回収率76.4%です。県内5市で100%を超えるのは高崎119.0%だけで、下水道は多くの市で料金だけでは足りていません。

「更新は進んでいない」

前橋の水道管の更新率は2020年度0.34%から2024年度0.63%へ上がっています。ペースは速まっていますが、経年化率も16.5%から23.2%へ上がっており、追いついてはいません。

Q&A

経費回収率とは何ですか

使用料収入が、汚水処理にかかる費用(公費で負担すべき分を除く)をどれだけ賄えているかを示す割合です。100%を下回ると、本来は使用料で賄うべき費用を一般会計からの繰入などで補っていることになります。水道では「料金回収率」と呼びます。前橋市の料金と計算方法は、水道料金・下水道使用料についてのページで確認できます。

経年化率とは何ですか

法定耐用年数(水道管は40年)を超えた管路が、全体に占める割合です。前橋市は23.2%で、およそ4本に1本が耐用年数を超えています。

前橋市の下水道普及率は分かりますか

この統計では分かりません。社会・人口統計体系に市区町村別の下水道普及率は収録されていません。群馬県は56.7%で全国81.4%を下回ります。国土交通省が市町村別の汚水処理人口普及率をPDFで公表しています。

太田市の水道はどこが運営していますか

群馬東部水道企業団です。太田市・館林市・みどり市などが共同で設立した企業団で、太田市営の水道事業はありません。この記事の水道の数値は企業団のものです。

次の更新はいつですか

経営比較分析表は毎年度の決算をもとに公表されます。最新は令和6年度決算です。小売物価統計調査の料金は毎年公表されます。

出典

  • 総務省「経営比較分析表」令和2〜6年度決算/総務省
  • 総務省「小売物価統計調査」(統計表ID 0003420453)/e-Stat
  • 総務省「社会・人口統計体系」都道府県データ(統計表ID 0000010208)

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67県内5市の上下水道の経営指標と料金
2000〜2024年度
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更新履歴

  • 2026年9月22日 公式窓口へのリンクを追加
  • 2026年9月14日 公開