前橋市の事業所は新設が少ない|廃業率は全国より低い【2021年】

前橋市の事業所は14,913(2021年)。2016年からの5年間の新設率は20.9%で全国23.3%を2.4ポイント下回り、廃業率26.4%も全国27.4%より低い。事業所数は5年で5.5%減った。県内5市と群馬県・全国の新設率と廃業率を表で比べた。

労働災害の記事で、度数率の調査対象が事業所規模100人以上に限られることを示した。

その100人以上は、前橋にいくつあるのか。

前橋市の事業所14,913のうち、従業者100人以上は188所。全体の1.26%である。

ところがそこで働く人は46,611人で、従業者の28.7%を占める。

規模の分布は全国とほぼ同じだった。違ったのは新陳代謝のほうである。

対象範囲

規模別と新設・廃業は総務省・経済産業省「令和3年経済センサス-活動調査」による。統計表IDは0004005673(従業者規模別)と0004005669(存続・新設・廃業)である。全産業・民営事業所の値で、調査は2021年6月1日時点。

新設と廃業は2016年から2021年までの5年間の累計である。年率ではない。

新設率と廃業率は当サイトが算出した。原典に率の記載がないため、存続+廃業で2016年の事業所数を復元し、それを分母にしている。前橋市は15,786所である。

中小企業白書が公表する開業率・廃業率は雇用保険にもとづく年率で、定義も水準も異なる。並べて比べることはできない。

時系列は総務省「社会・人口統計体系」C経済基盤(統計表ID 0000020103)による。2009年・2014年は経済センサス基礎調査、2011年・2016年・2021年は活動調査にもとづく。この系列に100人以上の区分はない。

事業所の1.26%に、働く人の28.7%

規模別に並べる。

前橋市の従業者規模別の構成比。1〜4人は事業所の57.4%だが従業者は10.9%、100人以上は事業所の1.3%だが従業者は28.7%
従業者規模別の事業所数と従業者数(前橋市、2021年)
1〜4人の事業所 57.4% ただし従業者では10.9%
100人以上の事業所 1.26% 188所。ただし従業者では28.7%
1事業所当たり 248人 100人以上の事業所の平均

従業者1〜4人の事業所は8,555所で、全体の57.4%を占める。半分以上がこの規模である。ところがそこで働く人は従業者の10.9%にすぎない。

逆に100人以上は188所で1.26%。従業者は46,611人で28.7%を占める。1事業所当たり248人である。

この構成は全国とほとんど変わらない。全国は1〜4人が56.2%、100人以上が1.3%。高崎市も56.1%と1.3%である。

従業者で見ると、100人以上の割合は前橋28.7%、高崎27.2%、全国30.0%。前橋は全国をやや下回る。

廃業は全国より少ない。少ないのは新設のほう

5年間の新陳代謝を見る。

県内5市の新設率と廃業率。前橋市は新設20.9%・廃業26.4%で、全国の新設23.3%・廃業27.4%を下回る
5年間の新設率と廃業率(2016〜2021年)

前橋市の廃業率は26.4%。全国27.4%を1.0ポイント下回る。5市すべてが全国より低い。

ところが新設率は20.9%で、全国23.3%を2.4ポイント下回る。下回る幅が廃業側の2倍以上ある。

結果として事業所数は5年で5.5%減。全国は4.1%減である。

桐生市はこの形が極端に出ている。廃業率24.0%は5市で最も低いのに、事業所数は9.1%減って最も大きい。新設率が14.9%で全国を8.4ポイント下回るためである。

県内5市と群馬県・全国の新設率と廃業率を並べる(2016〜2021年の5年間)。

地域事業所数(2021年)新設率廃業率5年の増減率
前橋14,91320.9%26.4%−5.5%
高崎16,49723.0%26.2%−3.2%
伊勢崎8,16416.9%24.5%−7.6%
太田9,44019.7%25.8%−6.1%
桐生5,31914.9%24.0%−9.1%
群馬県85,00318.5%24.6%−6.2%
全国5,156,06323.3%27.4%−4.1%

率は、存続+廃業で復元した2016年の事業所数を分母に当サイトが算出した。5年間の累計で、年率ではない。

いちばん小さい事業所が減っている

12年の推移を見る。

従業者1〜4人の事業所数の推移。前橋市は2009年11,031所から2021年8,555所へ22.4%減、高崎市は11,218所から9,248所へ17.6%減
従業者1〜4人の事業所数(2009〜2021年)

前橋市の1〜4人の事業所は、2009年の11,031所から2021年の8,555所へ。2,476所、22.4%減った。

高崎市も11,218所から9,248所へ17.6%減。減っているのは前橋だけではない。

ただし減り方が違う。前橋のほうが4.9ポイント大きい。2009年時点では前橋のほうが187所少なかったが、2021年には693所の差になった。

この数字をどう読むか

ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。

度数率が見ているのは、働く人の3割

労働災害の記事で、群馬の度数率1.68が全国2.14より低いのに、労災保険の給付件数は11.8%多いことを示した。

度数率の調査対象は100人以上の事業所である。前橋では188所、働く人の28.7%にあたる。

残りの71.3%は、度数率という指標に含まれていない。労災保険は全規模が対象なので、この差が2つの数字のずれを生んでいる可能性がある。

ただし規模別の災害率を直接示すデータは、都道府県別では公表されていない。確かめられない。

減っているのは、なくなるからではない

事業所が5年で5.5%減った。ただし廃業率は全国より低い。

減っているのは新設が少ないからである。新設率20.9%は全国より2.4ポイント低い。

同じ形を他の記事でも見てきた。高齢化率の記事で2050年に39.7%になるのは高齢者が増えるからではなく15〜64歳が減るから、防災の記事で消防費の割合が下がったのは歳出が増えたから。

数字が動いたとき、どちら側が動いたかを確かめる必要がある。

新しく始める人が少ないこと

新設率が低いことは、何を意味するのか。

人口の記事で、前橋が失っているのは20〜24歳だけであることを示した。若年層の記事では、転職率が15〜24歳で全国より3.0ポイント低かった。

動きが少ない。転職も、開業も。

ただし新設事業所を誰が作ったかは、この統計からは分からない。個人の独立か、既存企業の支店開設かの区別もできない。

規模の分布に特徴がないこと

1〜4人が57.4%、100人以上が1.3%。前橋も高崎も全国も、ほぼ同じである。

これは意外な結果だった。産業構造の記事で、前橋の特化係数が農業1.273、教育1.220、公務1.178で高いことを示した。産業の構成には特徴があるのに、規模の構成にはない。

事業所の規模の分布は、地域より産業の性質で決まるのかもしれない。ただし産業別×規模別のクロスは、この記事では扱っていない。

このデータの限界

  • 構成比、新設率、廃業率は当サイトが算出したものである。公表値ではない。
  • 新設率・廃業率の分母は、存続+廃業で復元した2016年の事業所数である。原典に率の記載がないためである。
  • 新設と廃業は2016年から2021年の5年間の累計で、年率ではない。中小企業白書が公表する雇用保険にもとづく開業率・廃業率とは定義も水準も異なる。
  • 時系列は2009年・2014年が経済センサス基礎調査、2011年・2016年・2021年が活動調査で、調査が異なる。
  • 時系列の規模別に100人以上の区分はない。50〜99人までである。
  • 新設事業所を誰が作ったかは分からない。個人の独立と既存企業の支店開設は区別されない。
  • 産業別と規模別のクロス集計は、この記事では扱っていない。
  • 規模別の労働災害の発生率は、都道府県別では公表されていない。
  • 売上金額は単独事業所のみ取得でき、本所・支所は公表対象外である。
  • 経済センサスの調査は5年ごとで、最新は令和3年(2021年)である。次回は令和8年(2026年)調査となる。

よくある誤解

「前橋は小さい会社が多い」

従業者1〜4人の事業所は57.4%ですが、全国も56.2%、高崎市も56.1%でほぼ同じです。規模の分布に地域差はほとんどありません。

「事業所が減っているのは廃業が多いから」

廃業率26.4%は全国27.4%より低くなっています。減っているのは新設率が20.9%で、全国23.3%を2.4ポイント下回るためです。

「大企業が少ないから雇用が弱い」

100人以上の事業所は1.26%ですが、そこで働く人は従業者の28.7%です。全国は1.28%と30.0%で、大きな差はありません。

Q&A

事業所と企業はどう違いますか

事業所は工場や店舗など、場所ごとの単位です。1つの企業が複数の事業所を持つことがあります。この記事の数値はすべて事業所の単位です。

新設事業所とは何ですか

前回の調査(2016年)のあとに開設された事業所です。新しく起業したものだけでなく、既存企業が支店を出した場合も含まれます。前橋市で起業するときの相談や支援制度は、前橋市の創業・起業したい方へのページにまとまっています。

開業率3.9%という数字を見たのですが

中小企業白書が公表する雇用保険にもとづく年率です。この記事の新設率20.9%は5年間の累計で、定義も期間も異なります。並べて比べることはできません。

産業別の規模は分かりますか

統計表には産業小分類769区分×規模8区分のクロスがありますが、この記事では全産業計のみを扱いました。

次の更新はいつですか

経済センサス活動調査は5年ごとで、最新は令和3年(2021年)です。次回は令和8年(2026年)調査となります。

前橋市の事業所数はいくつですか

2021年の経済センサスで14,913です。2016年からの5年間で5.5%減りました。全国は4.1%減で、前橋のほうが減り方が大きくなっています。

前橋市に従業者100人以上の事業所はいくつありますか

188所で、全体の1.26%です。ただしそこで働く人は46,611人で、従業者の28.7%を占めます。1事業所当たりでは248人です。

出典

  • 総務省・経済産業省「令和3年経済センサス-活動調査」(統計表ID 0004005673、0004005669、0004006324)/e-Stat
  • 総務省「社会・人口統計体系」C経済基盤 市区町村データ(統計表ID 0000020103)/e-Stat 地域統計

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61県内5市の事業所の規模別構成と新設・廃業
2009〜2021年
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更新履歴

  • 2026年9月24日 冒頭の段落を追加
  • 2026年9月24日 Q&Aと内部リンク、表を追加
  • 2026年9月13日 公開