中心部の学校で児童が減っている。郊外に新しい家が建っている。土地が高くて中心部に住めないから、外へ出ているのではないか。
この見立ては、数字で確かめられるだろうか。
市内を15の圏域に分け、地価と人口の増減を並べた。
人口が増えたのは3圏域だけ。いずれも地価が市の平均に近い水準である。
地価が高い圏域も、安い圏域も減っていた。「高い所から安い所へ」という形にはなっていない。
対象範囲
人口は前橋市「町別人口」による。住民基本台帳をもとに毎月公表されており、平成18年8月末まで遡れる。
この記事では平成28年(2016年)8月末と令和8年(2026年)8月末を比べた。月末を8月で揃えている。
圏域は前橋市が介護保険の計画で定める15の日常生活圏域である。町丁ごとの人口を、この区分に集約した。
地価は国土交通省「地価公示」の2026年の住宅地43地点。各地点の所在地から圏域を判定し、平均を求めた。
扱えないもの
城南圏域には地価公示の地点がない。そのため地価との比較からは除いた(人口は15,058人、2016→2026年で−5.4%)。
富田町は2つの圏域に分割されており、番地がないと判定できない。集計から除いている(2026年で2,467人)。
2006年のデータは外国人を含まない。住民基本台帳法の改正で2012年7月から外国人住民が含まれるようになったためである。この記事で20年の比較を出していないのはそのためである。
富士見村の合併は2009年。2006年の町別人口には富士見町の13町が存在しない。
増えたのは3圏域だけ

15圏域のうち、人口が増えたのは東+0.4%、元総社・総社・清里+1.8%、永明+1.6%の3つだけである。
この3圏域の住宅地の平均地価は55,050円、52,544円、52,400円。市全体の平均51,537円に近い水準である。
最も減ったのは宮城−14.5%。地価は17,600円で、市内で最も安い部類である。
次いで芳賀−11.6%(31,900円)、粕川−10.5%(15,650円)。いずれも地価の安い圏域である。
高い所も安い所も減った

地価で3つの帯に分けると、形がはっきりする。
| 帯 | 圏域数 | 2016年 | 2026年 | 増減 |
|---|---|---|---|---|
| 高い(69,000円以上) | 3 | 59,112人 | 55,619人 | −5.9% |
| 中位(40,000〜56,000円) | 6 | 191,653人 | 188,668人 | −1.6% |
| 安い(32,000円未満) | 5 | 70,187人 | 64,264人 | −8.4% |
高い帯は−5.9%、安い帯は−8.4%。どちらも減っている。
中位の帯は−1.6%で、最も減りが小さい。人口が増えた3圏域は、すべてこの帯にある。
安い帯が最も減っている。「土地が安いから人が移った」という形にはなっていない。
なお帯の区分は当サイトが便宜的に設けたもので、公的な区分ではない。
圏域ごとに見る

地価の高い順に並べると、増減は単調ではない。
最も高い文京・南部(80,100円)は−2.2%。意外に減っていない。
次の北部・中部(77,150円)は−7.7%、若宮・城東・中川(69,067円)は−8.7%。ここが中心部の減少にあたる。
中ほどで増加に転じ、安い帯に入るとまた減る。
旧町村部の減り方
旧市域と旧町村部で比べると、旧市域−3.1%、旧町村部−7.9%。
小学校の記事で示した「旧町村部の児童の減り方は旧市域の2.6倍」と、方向は一致している。
旧町村部の住宅地の平均地価は19,686円。旧市域57,731円の約3分の1である(2.93分の1)。
土地は3分の1の値段だが、人は減っている。
この数字をどう読むか
ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。
ドーナツ化とは形が違う
ドーナツ化は、中心が空洞になり周縁が膨らむ形を指す。
前橋の数字は違う。中心も減り、周縁はもっと減っている。膨らんでいるのは中間だけである。
増えた3圏域は、市街地の縁にあたる位置にある。中心部からも、旧町村部からも離れた場所ではない。
都市計画の記事で、前橋の人口集中地区が47.56km²で5市最大だったことを示した。広い市街地の、内側でも外側でもない場所に人が集まっている。
安い土地が選ばれていない
「土地が高くて買えないから安い所へ」という見立てなら、安い帯の人口が増えるはずである。
実際は安い帯が最も減っている。−8.4%で、高い帯の−5.9%を下回る。
土地の値段以外の条件が効いている可能性がある。通勤、買い物、学校、医療。ただしこの統計から、どの条件が効いたかは分からない。
公共交通の記事で、通勤・通学の76.4%が自家用車であることを示した。車を前提とすれば、多少の距離は問題にならない。それでも安い帯は選ばれていない。
確かめられないこと
この記事で示したのは結果としての分布である。
市内のどの町からどの町へ移ったかは公表されていない。住民基本台帳人口移動報告は市区町村が最小の単位である。
どこに住みたかったかも分からない。意向は統計に表れない。
実質所得の記事で、物価で調整した所得が34年前とほぼ同じ水準であることを示した。払える額が増えていないことは確かである。ただしそれがどう住む場所に効いたかは、この統計では確かめられない。
このデータの限界
- 圏域別の集計と増減率、地価の平均はすべて当サイトが算出した。公表値ではない。
- 地価の3つの帯(高い・中位・安い)は当サイトが便宜的に設けた区分で、公的なものではない。区分の線を変えれば結論も変わりうる。
- 城南圏域には地価公示の地点がないため、地価との比較から除いた(人口15,058人、−5.4%)。富田町は2つの圏域に分割されており判定できないため除いた(2,467人)。
- 地価公示の地点は市内で住宅地43地点にとどまる。圏域によっては1地点しかなく(芳賀・宮城)、平均としての安定性は高くない。
- 2006年の町別人口は外国人を含まないため、20年の比較はこの記事では扱っていない。
- 圏域は介護保険の計画による区分で、住宅市場の区分ではない。
- 市内のどの町からどの町へ移動したかは公表されていない。増減は転入・転出・出生・死亡の合計であり、移動の向きは分からない。
- 住み替えの意向、住宅の価格、世帯の所得は圏域別には取れない。地価が人の移動に与えた影響は、この統計からは確かめられない。
- 新築住宅がどこに建ったかも市区町村別までしか公表されていない。
よくある誤解
「中心部から郊外へ人が流れている」
中心部(地価の高い帯)は−5.9%で減っていますが、郊外にあたる安い帯は−8.4%でもっと減っています。増えたのは中間の3圏域だけです。
「土地が安ければ人が集まる」
市内で最も地価が安い部類の宮城(17,600円)は−14.5%、粕川(15,650円)は−10.5%で、いずれも大きく減っています。安さだけでは人は集まっていません。
「地価が人の移動を決めている」
この記事は地価と人口増減を並べただけで、因果を示すものではありません。市内の移動の向きも公表されておらず、どの条件が効いたかは確かめられません。
Q&A
日常生活圏域とは何ですか
前橋市が介護保険事業計画で定める市内の区分で、現在は15あります。地域包括ケアの単位として設定されたもので、住宅市場の区分ではありません。
自分の町の人口を知りたい
前橋市が町別人口を毎月公表しています。過去分も平成18年8月末まで遡って掲載されています。
なぜ安い所ほど減るのですか
この統計からは分かりません。地価の安い圏域は旧町村部と重なり、もともと高齢化が進んでいる地域でもあります。要因を分解するデータがありません。
次の更新はいつですか
町別人口は毎月、地価公示は毎年3月に公表されます。
出典
- 前橋市「町別人口」平成28年8月末・令和8年8月末/前橋市
- 国土交通省「地価公示」2026年/国土数値情報 L01
- 前橋市「第9期まえばしスマイルプラン」日常生活圏域別町名一覧
データダウンロード
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| No | データ名 | 出典 | ダウンロード |
|---|---|---|---|
| 77 | 前橋市の圏域別人口と住宅地の地価 2006・2016・2026年 | 前橋市「町別人口」、国土交通省「地価公示」 | CSVを保存 |
更新履歴
- 2026年9月17日 公開
