前橋の実質所得は34年前と同じ|地価は半分以下に【2024年度】

前橋市の1人当たり課税対象所得を物価で調整すると、1990年を100として2024年は99.3で、ピークの1995年からは5.9%下がっている。同じ期間に地価は45.9まで下がった。物価・所得・地価の8時点を表で示した。

地価の記事で、前橋の住宅地が1995年のピークから60.8%下がっていることを示した。43年前より安い水準である。

土地が安くなったなら、家は買いやすくなったはずである。実感と合うだろうか。

1人当たりの課税対象所得を物価で調整すると、1990年を100として2024年は99.3。

34年かけて、元の水準に戻っただけだった。ピークの1995年からは5.9%下がっている。

地価は45.9まで下がった。土地は半分以下になったが、所得も増えていない。

対象範囲

所得は総務省「市町村税課税状況等の調」による課税対象所得を、所得割の納税義務者数で割ったものである。社会・人口統計体系を通じて1985年度から2024年度の40年分が取れる。

課税対象所得は年収ではない。給与収入から給与所得控除などを差し引いた後の、課税の対象になる額である。

物価は総務省「消費者物価指数」の前橋市の値。1970年から2025年まで、基準改定をまたいで接続された系列が公表されている。

地価は国土交通省「地価公示」の住宅地の平均価格である。市内の地点数は年によって26から45まで変わる。

実質値は当サイトの算出

この記事の「実質」は、名目の課税対象所得を前橋市の消費者物価指数(総合)で割ったものである。公表値ではない。

3つの指標がそろうのは1990年・1995年・2000年・2005年・2010年・2015年・2020年・2024年の8時点。起点は1990年とした。

地価は各年ではなく、この8時点に近い年の値を使っている。1985年は地価のデータがないため起点にできなかった。

実質では34年間ほとんど増えていない

納税義務者1人当たり課税対象所得の推移。名目は1990年100から2024年118.0へ伸びたが、実質は1995年105.5をピークに2015年93.5まで下がり、2024年は99.3
1人当たり課税対象所得の名目と実質(1990年=100)
実質(2024年) 99.3 1990年=100
ピークは1995年 105.5 そこから5.9%減
底は2015年 93.5 そこから6.2%戻した

名目では1990年の100から2024年の118.0へ。18.0%増えている。

ところが物価で調整すると99.3。34年前とほぼ同じである。

ピークは1995年の105.5。そこから2015年の93.5まで下がり、2024年に99.3まで戻した。

上がって、下がって、元に戻った。34年でその往復をしている。

実額では1990年の350万6,382円が、2024年に348万1,052円。2万5,330円少ない。

地価は半分以下になった

物価・所得・地価の推移。1990年を100として2024年は物価118.8、所得118.0、地価45.9。地価は1995年の118.0をピークに急落した
物価・所得・地価の推移(1990年=100)

3つを並べると形が違う。

物価は118.8、所得(名目)は118.0。ほぼ横並びである。

地価は45.9。1995年の118.0をピークに急落し、2015年以降は横ばいになっている。

土地だけが、大きく安くなった。

物価・所得・地価を、3つがそろう8時点すべて並べる(前橋市、1990年=100)。

年物価所得(名目)所得(実質)地価
1990年100.0100.0100.0100.0
1995年106.9112.8105.5118.0
2000年107.8114.1105.896.3
2005年105.5106.9101.361.6
2010年104.098.594.854.3
2015年107.7100.793.546.2
2020年110.0103.494.046.2
2024年118.8118.099.345.9

所得は納税義務者1人当たり課税対象所得、物価は前橋市の消費者物価指数(総合)、地価は住宅地の平均価格。指数と実質値は当サイトが算出した。

期間を広げると、実質では減っている

期間別の伸び率。直近10年は物価+10.3%・所得名目+17.1%・所得実質+6.1%だが、直近20年では実質-2.0%、1995年からは実質-5.9%
期間別の伸び率(前橋市)

期間の取り方で、見える景色が変わる。

期間物価所得(名目)所得(実質)
直近10年
2015→2024
+10.3%+17.1%+6.1%
直近20年
2005→2024
+12.6%+10.4%−2.0%
ピークから
1995→2024
+11.1%+4.6%−5.9%

直近10年だけを見れば、実質でも6.1%増えている。物価の伸びを上回った。

ところが20年で見ると実質−2.0%。1995年からは−5.9%である。

底が2015年だったので、そこからの10年は伸びて見える。

直近の伸びの半分は1年分

直近10年の名目+17.1%には、内訳がある。

2024年度の1年だけで+8.1%伸びている。10年分の約半分が、この1年に集中している。

これは前橋だけの動きではない。群馬県+7.3%、全国+7.4%。全国で同時に起きている。

原因はこの統計からは分からない。

この数字をどう読むか

ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。

安くなったのに、安く感じない

地価は1990年の100から45.9へ。半分以下になった。

同じ期間に、所得は実質で99.3。ほぼ変わっていない。

計算上は、土地は買いやすくなったはずである。ただし土地代は家の費用の一部にすぎない。

建物の工事費は2019年までしか市区町村別で取れない。敷地面積も前橋市では公表されていない。この記事では家の総額を組み立てられなかった。

どこに住むかで調整している可能性

小学校の記事で、旧町村部の児童の減り方が旧市域の2.6倍であることを示した。都市計画の記事では、市街地の人口密度が全国の62%だった。

人がどこに住むかは、払える額で決まる部分がある。所得が実質で増えていなければ、選べる場所は広がらない。

ただしこの統計からは、どこに住みたかったかは分からない。市内のどの町からどの町へ移ったかも公表されていない。

持ち家の記事では、前橋の持ち家率が15年で5.9ポイント上がっていた。全国が微減するなかでの上昇である。家は建っている。

課税対象所得という指標の限界

この記事の所得は、給与所得控除などを引いた後の額である。控除の制度が変われば、実際の収入が同じでも数字は動く。

2020年分から給与所得控除が一律10万円引き下げられ、同時に基礎控除が10万円引き上げられた。

この改正は2021年度の課税対象所得に表れる。前橋+2.6%、群馬+2.3%、全国+2.1%で、他の年と比べて突出した動きは見られない。

ただし課税対象所得が所得控除の前か後かを、公表資料で確認できなかった。定義によっては影響がありうる。

このデータの限界

  • 実質値と指数、伸び率はすべて当サイトが算出した。公表値ではない。2015→2024年の実質の伸びは、実額から計算すると6.1%、指数(小数第1位)から計算すると6.2%になる。丸めによる差である。
  • 課税対象所得は年収ではない。給与収入から給与所得控除などを差し引いた後の額で、年収より小さい。
  • 課税対象所得が所得控除の前の額か後の額かを、総務省の公表資料で確認できなかった。2020年分の給与所得控除の改正(一律10万円引き下げ)が数字を押し上げている可能性を排除できない。
  • 納税義務者は所得割を課される人である。所得が低く課税されない人は含まれない。
  • 物価は前橋市の消費者物価指数(総合)を使った。持ち家の帰属家賃を含む系列である。
  • 地価は市内の住宅地の平均価格で、地点数が年によって26から45まで変わる。地点の入れ替えもあるため、同一地点の推移ではない。
  • 建物の工事費は市区町村別が2019年までしか取れない。敷地面積も前橋市では公表されていない。そのため家の取得費や年収倍率を算出できなかった。
  • 市内のどの町からどの町へ移動したかは公表されていない。住民基本台帳人口移動報告は市区町村が最小単位である。
  • 町丁字別の人口は取得できるが、この記事では扱っていない。
  • 所得が実質で増えていないことと、人がどこに住むかの関係は、この統計からは確かめられない。

よくある誤解

「所得は増えている」

名目では1990年から18.0%増えています。ただし物価で調整すると1990年=100に対し2024年は99.3で、34年前とほぼ同じ水準です。

「物価に負けている」

直近10年(2015→2024年)では所得の名目+17.1%が物価+10.3%を上回り、実質でも6.1%増えています。ただし20年で見ると実質−2.0%、1995年からは−5.9%です。期間の取り方で結論が変わります。

「地価が下がったから家は買いやすい」

地価は1990年の半分以下になりました。ただし土地代は家の費用の一部です。建物の工事費は市区町村別が2019年までしか取れず、敷地面積も公表されていないため、家の総額はこの記事では算出できていません。

Q&A

課税対象所得と年収の違いは何ですか

年収は税や社会保険料を引く前の収入額です。課税対象所得は、そこから給与所得控除などを差し引いた、課税の対象になる額です。年収より小さくなります。

実質とはどういう意味ですか

物価の変動を除いた値です。名目の金額を消費者物価指数で割って求めます。同じ10万円でも、物価が上がっていれば買えるものは減ります。実質はその分を調整した値です。

なぜ2024年度に大きく伸びたのですか

この統計からは分かりません。前橋+8.1%、群馬+7.3%、全国+7.4%で全国的に同時に起きているため、前橋固有の要因ではないと考えられます。

家はいくらで買えますか

この記事では算出していません。建物の工事費が市区町村別で2019年までしか取れず、敷地面積も前橋市では公表されていないためです。地点ごとの地価公示の価格は、国土交通省の不動産情報ライブラリで地図から調べられます。

次の更新はいつですか

市町村税課税状況等の調は毎年度、消費者物価指数は毎月、地価公示は毎年3月に公表されます。

前橋の実質所得は34年前と比べてどうですか

1990年を100とすると2024年は99.3で、ほぼ同じ水準です。実額では1990年の350万6,382円に対し、2024年は348万1,052円です。

前橋の地価は1990年からどれくらい下がりましたか

住宅地の平均価格は、1990年を100とすると2024年は45.9で、半分以下です。1995年の118.0がピークでした。同じ期間に物価は118.8、所得(名目)は118.0です。

出典

  • 総務省「社会・人口統計体系」市区町村データ(統計表ID 0000020203)/もとの調査は「市町村税課税状況等の調」/e-Stat
  • 総務省「消費者物価指数」2020年基準(統計表ID 0003427113)前橋市
  • 国土交通省「地価公示」/国土数値情報 L01
  • 国税庁「令和2年度 所得税の改正のあらまし」(給与所得控除の改正)

データダウンロード

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76前橋市の物価・課税対象所得・地価
1970〜2026年
総務省「消費者物価指数」「社会・人口統計体系」、国土交通省「地価公示」CSVを保存

更新履歴

  • 2026年9月24日 冒頭の段落を追加
  • 2026年9月24日 Q&Aと内部リンク、表を追加
  • 2026年9月17日 公開