前橋市の設備投資は売上比2.06%で最下位【2021年】

前橋市の設備投資は売上比2.06%で県内5市の最下位。ソフトウェア投資は1.30億円で高崎0.31億円の4.23倍だが、金融業と卸売業・小売業で85.6%を占める。5市と全国の設備投資額を表で比べた。

事業所の記事で、前橋の新設率が全国より2.4ポイント低いことを示した。上場企業の記事では、群馬銀行と東和銀行の本店がどちらも前橋にあることも見た。

企業は、何にお金を使っているのか。

前橋のソフトウェアへの設備投資は1.30億円で、高崎0.31億円の4.23倍。

ところが中身は金融業43.1%と卸売業・小売業42.5%で85.6%を占める。94.9%が市外に支所をもつ企業の投資である。

そして設備投資そのものは、売上比2.06%で5市中最下位だった。

対象範囲

すべて総務省・経済産業省「令和3年経済センサス-活動調査」(統計表ID 0004006360)による。2021年の単年の値である。

この表は企業等集計で、本社の所在地に全社分の数値が計上される。前橋に本部を置く企業が他県で行った投資も、前橋市の数字に入る。

設備投資額は有形固定資産(土地を除く)と無形固定資産(ソフトウェアのみ)に分かれる。この記事では前者を「有形の設備投資」、後者を「ソフトウェア投資」と呼び、2つを足したものを「設備投資額」とする。1人当たりの額や売上比は、この合計で算出した。

1人当たりの額、売上比、比率は当サイトが算出した。公表値ではない。

設備投資は年による振れが大きい。大型の設備を導入した年は跳ね上がる。単年の値で地域を比べることには限界がある。

ソフトウェア投資が多く見えるのは、本部があるから

まず目を引く数字がある。

ソフトウェアへの設備投資は前橋1.30億円・高崎0.31億円で4.23倍。ただし前橋の内訳は金融業43.1%・卸売業小売業42.5%で85.6%
ソフトウェアへの設備投資(2021年)
前橋のソフトウェア投資 1.30億円 高崎0.31億円の4.23倍
上位2産業の割合 85.6% 金融43.1% + 卸売小売42.5%
市外に支所をもつ企業 94.9% 前橋市内の活動とは限らない

前橋のソフトウェア投資は1.30億円。高崎0.31億円の4.23倍である。従業者1人当たりでも0.083万円対0.020万円で4.2倍。分母を揃えても差は残る。

ところが中身を見ると、金融業・保険業が43.1%、卸売業・小売業が42.5%。この2産業で85.6%を占める。

高崎は製造業31.3%、建設業18.3%で上位2つが49.6%。分散している。

さらに、前橋のソフトウェア投資の94.9%が、市外に支所をもつ企業に帰属している。経済センサスの企業等集計は、本社の所在地に全社分を計上する。

設備投資そのものは、多くない

設備投資の全体を見る。

1人当たり設備投資額は全国1.06万円・太田0.76・高崎0.69・伊勢崎0.57・前橋0.48・桐生0.37。売上比は太田3.89%・全国3.47%・前橋2.06%で最下位
設備投資額の比較(2021年)

従業者1人当たりの設備投資は前橋0.48万円。太田0.76、高崎0.69、伊勢崎0.57に次ぐ5市中4位である。全国1.06万円の0.45倍にとどまる。

売上に占める割合では、前橋2.06%が5市で最下位。太田3.89%、全国3.47%と比べて低い。

有形とソフトウェアの比率は前橋4.7倍。高崎34.0倍、全国8.7倍と比べるとソフトウェアの比重が高い。ただしこれは有形が少ないことの裏返しでもある。

5市と全国の設備投資額を並べる(2021年)。

地域有形(億円)ソフトウェア(億円)合計(億円)売上比
前橋6.131.307.432.06%
高崎10.430.3110.742.49%
伊勢崎3.690.133.833.21%
太田5.910.316.223.89%
桐生1.530.131.662.26%
全国5,261.50606.245,867.743.47%

有形は土地を除く。売上比は設備投資額の合計を売上(収入)金額で割った値である。

設備の目減りに、投資が追いついていない

減価償却費と比べる。

設備投資額÷減価償却費は全国1.38・高崎1.15・太田1.11・前橋0.95・桐生0.80・伊勢崎0.70
設備投資額と減価償却費の比率(2021年)

減価償却費は、設備が1年間に目減りした額を表す。設備投資額がこれを下回れば、設備は全体として古くなっていく。

前橋は0.95。1を下回る。伊勢崎0.70、桐生0.80も同じである。

上回るのは高崎1.15、太田1.11。全国は1.38である。

ただし2021年の単年の値である。新型コロナウイルスの影響が残る時期で、設備投資を控えた企業も多かったと考えられる。この1年だけで傾向を判断することはできない。

従業者数は5市で2番目

同じ調査には、企業等数・事業所数・従業者数もある。前橋市は企業等10,595、事業所14,008、従業者156,319人である。

従業者数では高崎の156,556人が最も多く、前橋は2番目である(当サイトが算出)。

1事業所当たりの従業者は前橋11.2人で、5市の1番目である(当サイトが算出)。

2021年の企業等数・事業所数・従業者数を、5市について並べる。

市企業等数事業所数従業者数1事業所当たり
前橋10,59514,008156,31911.2
高崎11,15815,044156,55610.4
伊勢崎5,7546,91467,1039.7
太田6,4357,92582,07210.4
桐生4,3515,27545,0258.5

単位は企業・事業所・人。1事業所当たりは従業者数÷事業所数で、当サイトが算出した。出典は総務省・経済産業省「令和3年経済センサス-活動調査」。

この数字をどう読むか

ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。

県庁所在地の統計は、膨らんで見える

ソフトウェア投資4.23倍は、前橋の企業が積極的にIT投資をしている証拠にはならない。

上場企業の記事で、前橋に本店を置く上場企業が7社あり、地方銀行2行の本店がどちらも前橋であることを示した。求人の記事では、金融業の求人の53.8%が県内から前橋に集中していた。

前橋の金融業の従業者は7,802人で、高崎2,277人の3.43倍。本部機能が集まっている。

本部の全社的なシステム投資が、前橋市の数字として現れている。これは前橋という場所で起きている経済活動とは別である。

1社なのか、構造なのか

金融業の5,592万円が、特定の1社によるものかは分からない。

前橋市の金融業・保険業の企業等数は120社である。個社の内訳は統計上公表されていない。

ただし2産業で85.6%という集中度と、94.9%が広域展開企業に帰属するという事実は、少数の大きな企業が数字を作っていることを示している。

事業所の記事で、前橋の事業所14,913のうち100人以上が188所・1.26%であることを示した。設備投資でも、少数が全体を動かしている。

新設が少ないことと、投資が少ないこと

売上比2.06%は5市で最下位。設備投資÷減価償却費は0.95で1を下回る。

事業所の記事で、前橋の新設率20.9%が全国23.3%を2.4ポイント下回ることを示した。廃業率は全国より低かった。

新しく始める人が少なく、既存の設備の更新も進んでいない。2つの数字は同じ方向を向いている。

ただし2021年はコロナ禍の影響が残る年である。防災の記事で、前橋市の歳出が2020年度に35.2%跳ねたことも示した。この時期の数字は、平常時とは違う。

統計の定義を確かめる

同じ形の話を、このサイトで何度か扱ってきた。

労働災害の記事では、度数率が100人以上の事業所だけを対象としているため、労災保険の給付件数と逆を向いていた。持ち家の記事では、世帯の区分を変えると順序が入れ替わった。

数字が動いたとき、何を数えているのかを確かめる必要がある。

今回は「どこで起きた投資か」ではなく「どこに本社があるか」で集計されていた。

このデータの限界

  • 1人当たりの額、売上比、比率は当サイトが算出したものである。公表値ではない。
  • 経済センサスの企業等集計は、本社の所在地に全社分を計上する。前橋市の数値には、前橋に本部を置く企業が他県で行った投資が含まれる。
  • 2021年の単年の値である。設備投資は年による振れが大きく、大型設備を導入した年は跳ね上がる。
  • 2021年は新型コロナウイルスの影響が残る時期である。投資を控えた企業も多かったと考えられる。
  • 金融業の投資が特定の1社によるものかは分からない。前橋市の金融業・保険業は120社で、個社の内訳は公表されていない。
  • 設備投資額は有形固定資産(土地を除く)とソフトウェアの合計である。土地の取得は含まれない。
  • 無形固定資産はソフトウェアのみで、特許権などは含まれない。
  • 事業所の自社所有と賃借の別、敷地面積、建物面積は経済センサスにない。
  • 企業のIT環境(インターネット利用、クラウド利用など)は、通信利用動向調査に都道府県別の集計がなく、データベースの収録も2016年で止まっている。
  • 工場立地の統計は都道府県別まで。市町村別はe-Statのデータベースになく、経済産業省の個別のExcelにある。

よくある誤解

「前橋はIT投資が進んでいる」

ソフトウェア投資は高崎の4.23倍ですが、85.6%が金融業と卸売業・小売業の2産業に集中し、94.9%が市外に支所をもつ企業に帰属します。本社所在地に全社分が計上される仕組みによるものです。

「県庁所在地だから経済活動が活発」

設備投資の売上比は2.06%で5市中最下位、1人当たりでも4位です。本部機能が集まることと、その場所で経済活動が活発なことは別です。

「設備投資が減価償却を下回るのは異常」

2021年はコロナ禍の影響が残る年で、伊勢崎0.70、桐生0.80も1を下回っています。単年の値で判断することはできません。

Q&A

企業等集計とは何ですか

事業所ごとではなく企業ごとに集計したものです。本社の所在地に全社分の売上や投資が計上されるため、本部機能が集まる地域の数値は大きく出ます。事業所ごとの集計とは別の表になります。

減価償却費とは何ですか

建物や機械などの設備が、1年間に価値を失った分を費用として計上するものです。設備投資額がこれを下回ると、保有する設備は全体として古くなっていきます。

前橋市内の工場の立地は分かりますか

この記事では扱っていません。工場立地動向調査のe-Statのデータベースは都道府県別までで、市町村別は経済産業省の個別のExcelにあります。群馬県の立地件数は2020年で52件です。

企業のクラウド利用率などは分かりますか

分かりません。通信利用動向調査に都道府県別の集計がなく、あっても地方ブロック単位です。データベースの収録も2016年で止まっています。

次の更新はいつですか

経済センサス活動調査は5年ごとで、最新は令和3年(2021年)です。次回は令和8年(2026年)調査となります。

前橋の企業の設備投資は多いのですか

売上に占める割合は2.06%で、県内5市の最下位です。従業者1人当たりでも0.48万円で5市の4位、全国1.06万円の0.45倍にとどまります。

前橋はIT投資が進んでいるのですか

ソフトウェア投資は1.30億円で高崎0.31億円の4.23倍ですが、中身は金融業・保険業43.1%と卸売業・小売業42.5%で85.6%を占めます。94.9%が市外に支所をもつ企業の投資です。

出典

  • 総務省・経済産業省「令和3年経済センサス-活動調査」企業等に関する集計(統計表ID 0004006360、0004006329)/e-Stat
  • 経済産業省「工場立地動向調査」(統計表ID 0003411426、0003411431)/経済産業省

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64県内5市の設備投資・減価償却・賃借料と工場立地
1995〜2021年
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更新履歴

  • 2026年9月23日 「従業者数は5市で2番目」の節を追加
  • 2026年9月23日 冒頭の段落を追加
  • 2026年9月23日 Q&Aと内部リンク、表を追加
  • 2026年9月13日 公開