医療の記事で、前橋の医師数が人口10万人当たり497.7人で全国279.7人の1.78倍であることを示した(2024年)。
その医師の多さは、寿命に表れているのか。
前橋市の平均余命(0歳)は男81.70年、女87.60年。県内5市で最も長い。
ところが全国と比べると男は0.14年長いだけで、女は0.11年短い。
医師は1.78倍いても、寿命はほとんど変わらなかった。
対象範囲
総務省「社会・人口統計体系」の市区町村データによる。もとの調査は厚生労働省「市区町村別生命表」である。
市区町村別で取れるのは0歳の平均余命だけである。20歳・40歳・60歳・65歳は都道府県版でしか公表されていない。
年次は2010年・2015年・2020年の3時点。群馬県と全国は1975年からの10時点が取れる。
医師数は2024年、平均余命は2020年である。4年ずれる。同じ年で比べられるのは2020年どうしになる。
扱えないもの
死亡率(粗死亡率・年齢調整死亡率)は市区町村別では公表されていない。標準化死亡比も都道府県までである。
主要死因別の死亡数も都道府県版のみ。特定健診の受診率は、どの統計表にも見当たらなかった。
なぜ前橋の平均余命が長いのか、短いのかを分解することはできない。この記事で示せるのは、結果としての年数だけである。
医師が多くても、寿命は変わらない

前橋市の平均余命は男81.70年、女87.60年。全国は男81.56年、女87.71年である。
差は男で0.14年、女で−0.11年。どちらも1年に満たない。
医師数は1.78倍の開きがある。その差が、寿命には表れていない。
医療の記事で示したとおり、病床は全国の1.11倍、診療所は1.22倍で全国並みだった。突出しているのは医師だけである。
県内5市では、前橋が最も長い

男は前橋81.70年が5市で最も長い。高崎81.20、伊勢崎80.90、太田80.80、桐生80.50と続く。
女は前橋と高崎がどちらも87.60年で並ぶ。伊勢崎87.00、太田・桐生86.70。
前橋と桐生の差は男で1.20年。全国を上回るのは男の前橋だけである。
男女差が最も小さい
前橋の男女差は5.90年。太田と並んで5市で最小である。
高崎6.40、桐生6.20、伊勢崎6.10。全国は6.15年、群馬県は6.05年。
男女差が小さいのは、男が長いからである。女は全国を下回っている。
全国との差は縮んでいる

前橋の男は2010年の80.00年から2020年の81.70年へ。10年で1.70年伸びた。
ところが全国は79.55年から81.56年へ2.01年伸びている。前橋より0.31年多い。
結果として差は縮んだ。2010年の+0.45年から、2015年+0.35年、2020年+0.14年へ。
桐生・伊勢崎・太田はいずれも+2.00年で全国並みに伸びている。高崎は+0.90年で最も伸びが小さい。
2010年に男で1位だったのは高崎だった。2020年には前橋が1位になっている。
この数字をどう読むか
ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。
医師の数と寿命は、直接つながらない
医師が1.78倍いても、平均余命の差は1年に満たない。これは意外ではない。
医師数はその市に勤務する医師の数であり、その市の人が診てもらう医師の数ではない。前橋には群馬大学医学部附属病院があり、県全体から患者が来る。
医療の記事で、群馬県の医師の33.4%が前橋にいることを示した。人口シェアは17.2%である。
寿命は生活習慣や環境にも左右される。医療の量だけで決まるものではない。
差が縮んでいることの読み方
前橋の男の平均余命は伸びている。10年で1.70年。
ただし全国はそれ以上に伸びた。差が縮んだのは、前橋が悪くなったからではなく、他が追いついたからである。
桐生は2010年に78.50年で5市の最下位だったが、2020年には80.50年へ。2.00年伸びている。前橋との差は1.50年から1.20年に縮まった。
3時点しかないので、この先どうなるかは分からない。
介護の数字との対比
介護の記事で、前橋の要介護認定率18.49%が全国19.74%を下回ることを示した。ただし要介護4・5の重い人が23.8%で全国20.4%を上回っていた。
桐生の要介護認定率21.59%は5市で最も高い。平均余命も5市で最も短い。
この2つは同じ方向を向いている。ただし高齢化率の違いが両方に効いている可能性もある。年齢構成を調整した数字は、市区町村別では取れない。
このデータの限界
- 市区町村別で取れるのは0歳の平均余命だけである。20歳・40歳・60歳・65歳は都道府県版でしか公表されていない。
- 年次は2010年・2015年・2020年の3時点しかない。傾向を読むには少ない。
- 医師数は2024年、平均余命は2020年で4年ずれる。
- 死亡率、年齢調整死亡率、標準化死亡比、主要死因別の死亡数は、いずれも市区町村別では公表されていない。特定健診の受診率も見当たらなかった。
- そのため、平均余命の長短を要因に分解することはできない。この記事で示せるのは結果としての年数だけである。
- 平均余命は年齢構成の影響を受けない指標だが、地域の医療体制、生活習慣、就業構造など複数の要因が関わる。医師数との関係を因果として示すものではない。
- 市町村合併の影響を調整していない。前橋市は2004年以降に旧勢多郡の町村と合併している。
- 国民健康保険の医療費は市区町村別で取れるが、最新が2014年と古いためこの記事では扱っていない。
よくある誤解
「医師が多いから前橋は長生きできる」
医師数は全国の1.78倍ですが、平均余命の差は男で0.14年、女で−0.11年です。県内5市では最も長いものの、全国と比べるとほぼ同じ水準になります。
「前橋の寿命は伸びていない」
男は10年で1.70年伸びています。ただし全国は2.01年伸びたため、差が縮みました。前橋が短くなったのではなく、他が追いついた形です。
「男女差が小さいのは女が短いから」
両方の要素があります。前橋の男女差5.90年は5市で最小ですが、これは男が全国を0.14年上回り、女が0.11年下回っているためです。
Q&A
平均余命と平均寿命は違うのですか
0歳の平均余命が平均寿命です。この記事の数値は0歳の平均余命なので、平均寿命と同じものを指しています。
65歳の平均余命は分かりますか
市区町村別では分かりません。20歳・40歳・60歳・65歳の平均余命は都道府県版でのみ公表されています。
健康寿命は分かりますか
この統計では扱っていません。健康寿命は国民生活基礎調査などをもとに算出され、市区町村別の公表は限られます。前橋市のがん検診の受け方は、がん検診を受けましょうのページで確認できます。
なぜ前橋の男は全国より長いのですか
この統計からは分かりません。差は0.14年と小さく、要因を分解するデータ(死亡率や死因別の死亡数)が市区町村別では公表されていません。
次の更新はいつですか
市区町村別生命表は5年ごとに作成されます。最新は2020年で、次回は2025年のものになります。
出典
- 総務省「社会・人口統計体系」市区町村データ(統計表ID 0000020209)/もとの調査は厚生労働省「市区町村別生命表」/e-Stat
- 総務省「社会・人口統計体系」都道府県データ(統計表ID 0000010109、群馬県・全国の値)
- 厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」2024年(医師数、市区町村別の表)
データダウンロード
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| No | データ名 | 出典 | ダウンロード |
|---|---|---|---|
| 73 | 県内5市の平均余命 2010・2015・2020年 | 総務省「社会・人口統計体系」(市区町村別生命表による) | CSVを保存 |
更新履歴
- 2026年9月24日 医師数を2024年の値に更新
- 2026年9月22日 公式窓口へのリンクを追加
- 2026年9月17日 公開
