前橋の小児科は10年変わらず|分娩の医師は県の41.5%【2024年】

医療の記事で、前橋の医師数が人口10万人当たり497.7人で全国の1.78倍であることを示した(2024年)。ただし病床は1.11倍、診療所は1.22倍で全国並みだった。

診療科で分けると、どうなるのか。

病院の小児科は6か所。10年間まったく変わっていない。全国は8.2%減り、群馬県も40から37になった。

ところが人口10万人当たりでは桐生25.39に対し前橋17.02で2位。

分娩は違う。病院で分娩を担当する医師の41.5%が前橋にいる。人口シェアは17.2%である。

対象範囲

厚生労働省「医療施設調査」による。この統計の診療科目別は、二次医療圏が最小単位である。前橋医療圏は前橋市のみで構成されるため、実質的に市の数字として使える。

ただし比較対象の医療圏はそうではない。高崎・安中医療圏は2市、太田・館林医療圏は7市町で構成される。伊勢崎医療圏と桐生医療圏は1市である。

施設数は標榜する診療科目による重複計上である。1つの病院が小児科と内科を標榜していれば、どちらにも数えられる。

病院は動態調査(毎年)、一般診療所は静態調査(3年ごと)で、最新は病院2024年、診療所2023年。時系列が作れるのは病院だけである。

医師の診療科別は2017年が最新である。7年前の数字で、医療の記事で使った2022年・前橋市単位の医師数とは年次も範囲も違う。

人口10万人当たりの値は当サイトが算出した。二次医療圏の人口は直接公表されていないため、構成市町村の住民基本台帳人口を合計している。

減り続けるなか、前橋だけ動いていない

病院の小児科の推移を見る。

病院の小児科数の推移。前橋医療圏は2015〜2024年すべて6施設で変化なし。群馬県は40から37、全国は2,664から2,446へ減少
病院の小児科数の推移(2015年=100、2015〜2024年)
前橋医療圏の病院の小児科 6か所 2015年から10年間変化なし
群馬県 −7.5% 40か所から37か所へ
全国 −8.2% 2,664か所から2,446か所へ

前橋医療圏の病院の小児科は6か所。2015年から2024年まで、10年間ひとつも増えず、ひとつも減っていない。

同じ期間に全国は2,664か所から2,446か所へ8.2%減った。群馬県も40か所から37か所で7.5%減である。

産婦人科も4か所、産科も1か所で変わっていない。病院総数は20から21になり、また20に戻った。

ただし、これは標榜する診療科目の数である。医師が何人いるか、何人の患者を診ているかは、この数字からは分からない。

人口当たりでは、桐生が上にいる

5つの医療圏を比べる。

人口10万人当たりの施設数。小児科は桐生25.39・前橋17.02・太田館林16.79・高崎安中15.25・伊勢崎14.53。産婦人科は桐生と前橋が3.34で同率1位
人口10万人当たりの施設数(病院+一般診療所)

実数では前橋が多い。病院の小児科6は高崎・安中の8に次ぐ2位、診療所の小児科50は太田・館林63、高崎・安中56に次ぐ3位である。

ところが人口10万人当たりでは順序が変わる。桐生25.39に対し前橋17.02で、桐生の0.67倍。

15歳未満の人口で割ると差はさらに開く。桐生23.93に対し前橋15.23で1.57倍。

産婦人科は桐生と前橋がどちらも3.34で同率1位。伊勢崎2.83、高崎・安中2.38、太田・館林2.00と続く。

分娩を扱う医師の41.5%が前橋にいる

分娩は違う形を示す。

群馬県に占める前橋医療圏の割合。人口17.2%に対し分娩取扱施設21.4%、病院の助産師32.6%、病院の担当医師41.5%
群馬県全体に占める前橋医療圏の割合(2023年)
医療圏病院
(施設/医師/助産師)
診療所
(施設/医師/助産師)
前橋4/37.0/87.52/7.6/16.0
高崎・安中2/14.7/52.73/4.9/14.2
伊勢崎1/5.4/17.03/10.6/15.8
桐生1/5.0/17.02/3.7/5.0
太田・館林1/4.2/20.04/5.4/21.2

前橋医療圏で分娩を扱うのは病院4か所、診療所2か所の計6か所。群馬県全体28か所の21.4%である。

ところが医師の数では割合が上がる。病院で分娩を担当する医師は37.0人(常勤換算)で、群馬県89.2人の41.5%。

助産師は87.5人で32.6%。人口シェア17.2%と比べると、医師は2.4倍、助産師は1.9倍の集中である。

分娩取扱施設1か所当たりの人口を見ると、桐生49,885人、前橋54,853人。最も多いのは高崎・安中の83,952人で、前橋の1.53倍である。

なお院内助産所は群馬県内に1か所もない。全国では病院154か所、診療所40か所である。

この数字をどう読むか

ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。

「変わっていない」ことの読み方

病院の小児科が10年間6か所のまま。これは維持とも、動いていないとも読める。

小学校の記事で、児童数が42年で50.1%減ったのに学校は3校しか減らなかったことを示した。同じ形が医療にもある。

ただし学校と病院では、維持する主体が違う。市立小学校は市が設置するが、病院の多くは民間である。この統計から、なぜ変わらなかったのかは分からない。

桐生が上にいること

小児科も産婦人科も、人口当たりでは桐生が前橋を上回る。

介護の記事で、桐生の要介護認定率21.59%が県内5市で最も高いことを示した。高校の記事では、桐生が高校生を最も集めていた(中学生の2.30倍)。

桐生は人口が減っている市である。分母が小さくなれば、人口当たりの数値は上がる。施設が増えたのではなく、人が減った結果である可能性もある。

この統計から、どちらなのかは分からない。施設数の時系列は病院だけで、診療所は3時点しかない。

施設の数と、医師の数は違う

この記事で最も差が出たのは、施設の数ではなく医師の数だった。

分娩取扱施設は県全体の21.4%なのに、担当する医師は41.5%。1施設当たりの医師数が多い。

医療の記事で、群馬大学医学部附属病院の病床731床が前橋の病院病床4,365床の16.7%を占めることを示した。大学病院のような大きな施設があれば、1施設当たりの医師数は増える。

ただしこの統計に、施設ごとの内訳はない。

子育ての環境として

子育ての記事で、前橋の合計特殊出生率1.41が全国1.33・群馬1.38を上回ることを示した。待機児童は0人である。

分娩を扱う医師が集まっていることは、産む場所としての条件にはなる。

ただし小児科は人口当たりで2位。15歳未満で割ると桐生の0.64倍である。

産む条件と、育てる条件は別の数字で表れる。

このデータの限界

  • 人口10万人当たりの値と割合は当サイトが算出した。公表値ではない。
  • 二次医療圏の人口は直接公表されていないため、構成市町村の住民基本台帳人口を合計している。総人口は2024年、15歳未満人口は2020年国勢調査で、分母の年次が揃っていない。
  • 施設数は標榜する診療科目による重複計上である。1つの施設が複数の科を標榜していれば、それぞれに数えられる。
  • 前橋医療圏は前橋市のみだが、高崎・安中医療圏は2市、太田・館林医療圏は7市町で構成される。市どうしの比較ではない。
  • 医師の診療科別は2017年が最新で、7年前の数字である。医療の記事で使った2022年・前橋市単位の医師数とは年次も範囲も違う。
  • 病院は毎年、一般診療所は3年ごとの調査で、更新の頻度が違う。時系列が作れるのは病院だけである。
  • 施設の数は、診療の量や質を示すものではない。何人の患者を診ているかは、この統計からは分からない。
  • 産科の医師数は、伊勢崎・桐生・太田・館林の各医療圏で公表されていない(「-」表記)。
  • 小児の外来の受療状況は、二次医療圏別では公表されていない。入院と退院のみ取得できる。

よくある誤解

「前橋は小児科が充実している」

実数では県内で多いほうですが、人口10万人当たりでは桐生25.39に対し前橋17.02で2位です。15歳未満人口で割ると桐生23.93、前橋15.23で1.57倍の差があります。

「医師が多いから、どの科も多い」

科によって形が違います。分娩を担当する医師は県全体の41.5%が前橋にいますが、小児科の施設数は人口当たりで2位です。

「施設数が変わらないのは良いことだ」

この統計からは判断できません。10年間6か所のままですが、維持されたのか、それとも増える動きがなかったのかは分かりません。

Q&A

二次医療圏とは何ですか

入院医療を提供する体制を整える単位として、都道府県が定める区域です。群馬県には10の医療圏があります。前橋医療圏は前橋市のみで構成されるため、実質的に市の数字として使えます。

標榜する診療科目とは何ですか

医療機関が看板や広告に掲げる診療科です。1つの施設が複数を標榜できるため、この記事の施設数は重複計上になります。実際に何人の医師がいるかとは別の数字です。

具体的な病院やクリニックを知りたい

当サイトでは扱っていません。医療機関の検索は、国の医療情報ネット(ナビイ)で行えます。群馬県の案内ページから利用できます。

小児科医の数は分かりますか

2017年の数値なら取れます。前橋医療圏の病院の小児科医は52.2人(常勤換算)で、うち女性が27.6人と過半数でした。ただし7年前の数字で、それ以降の診療科別の医師数は二次医療圏別では公表されていません。

次の更新はいつですか

病院の診療科目別は医療施設動態調査で毎年公表されます。一般診療所は3年ごとで、次回は2026年調査です。

出典

  • 厚生労働省「医療施設動態調査」2015〜2024年(統計表ID 0004048439ほか)/「医療施設静態調査」2023年(統計表ID 0004024933、0004024958、0004024959)/2017年(統計表ID 0003300514)/e-Stat
  • 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」2024年/「令和2年国勢調査」
  • 群馬県「保健医療計画」(二次医療圏の構成市町村)

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69群馬県5医療圏の小児科・産婦人科の施設数と分娩
2015〜2024年
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更新履歴

  • 2026年9月16日 公開