前橋にはどれだけの文化財があるのか。国・県・市が指定した文化財の件数を、県内の他の市と比べた。
前橋市にある国・県指定の文化財は60件。群馬県の12市で高崎市の120件に次ぐ2位である。
ところが人口10万人当たりでは18.06件で、12市中8位に下がる。
市が独自に指定した243件のうち、半分は1970年代に指定されている。
対象範囲
県内の比較は群馬県「群馬県統計年鑑」令和7年版の表22-19(令和6年12月末)による。国指定と県指定の件数が市郡別・種類別に載っている。
前橋の内訳と指定の年は、群馬県「群馬の文化財」(令和7年9月26日現在)と前橋市「市指定文化財一覧」(令和8年4月1日現在)の一覧から数えた。
表と一覧は一致している
群馬の文化財の一覧から前橋所在の件数を数えると、国16件・県44件で、統計年鑑の表と種類別にすべて一致した。
このほか、他の市と共有する国の史跡が2件ある。表の市の欄には含まれないので、この記事の60件にも含めていない。
実数では2位、人口当たりでは8位

国・県指定の件数は、高崎市が120件で最も多い。前橋はその半分の60件で2位である。
人口10万人当たりにすると順位が変わる。渋川市63.02件、安中市52.82件、富岡市48.48件と続き、前橋は18.06件で8位になる。
面積100km²当たりでは19.26件で4位である。人口が多い分、1人当たりでは薄くなる。
12市をすべて並べると、次のようになる(合計の多い順)。
| 市 | 国指定 | 県指定 | 合計 | 人口10万人当たり | 面積100km²当たり |
|---|---|---|---|---|---|
| 高崎市 | 30 | 90 | 120 | 32.17 | 26.13 |
| 前橋市 | 16 | 44 | 60 | 18.06 | 19.26 |
| 渋川市 | 7 | 40 | 47 | 63.02 | 19.56 |
| 太田市 | 12 | 23 | 35 | 15.69 | 19.94 |
| 安中市 | 4 | 25 | 29 | 52.82 | 10.50 |
| 桐生市 | 6 | 21 | 27 | 25.37 | 9.84 |
| 富岡市 | 9 | 14 | 23 | 48.48 | 18.72 |
| 伊勢崎市 | 8 | 14 | 22 | 10.38 | 15.78 |
| 沼田市 | 3 | 15 | 18 | 39.70 | 4.06 |
| 藤岡市 | 8 | 9 | 17 | 26.87 | 9.43 |
| 館林市 | 1 | 10 | 11 | 14.61 | 18.04 |
| みどり市 | 2 | 5 | 7 | 14.10 | 3.36 |
前橋の指定文化財は市指定が8割

国指定は16件。重要文化財7件、史跡7件、天然記念物2件である。前橋に国宝はない。
県指定は44件で、重要文化財25件、史跡12件が多い。
市指定は243件。国・県・市を合わせた303件の80.2%を占める。重要文化財が141件、史跡が44件、有形民俗文化財が24件、無形民俗文化財が21件である。
前橋にある国・県指定の60件
国指定16件と県指定44件をすべて並べる。最も古いのは1927年に国の史跡に指定された前二子古墳・中二子古墳・後二子古墳の3件である。
国指定のうち4件は2000年以降の指定で、群馬県行政文書(2010年)、臨江閣(2018年)、塩原家住宅(2019年)、総社古墳群(2024年)である。指定は今も続いている。
それぞれの所在地や公開の有無は、群馬県の群馬の文化財で確認できる。市指定の243件は、前橋市の市指定文化財一覧に載っている。
| 指定 | 種類 | 名称 | 指定年 |
|---|---|---|---|
| 国 | 史跡 | 前二子古墳 | 1927年 |
| 国 | 史跡 | 中二子古墳 | 1927年 |
| 国 | 史跡 | 後二子古墳ならびに小古墳 | 1927年 |
| 国 | 史跡 | 二子山古墳 | 1927年 |
| 国 | 史跡 | 八幡山古墳 | 1949年 |
| 国 | 史跡 | 山王廃寺跡 | 1928年 |
| 国 | 史跡 | 総社古墳群 遠見山古墳 二子山古墳 愛宕山古墳 宝塔山古墳 蛇穴山古墳 | 2024年 |
| 国 | 天然記念物 | 岩神の飛石 | 1938年 |
| 国 | 天然記念物 | 横室の大カヤ | 1933年 |
| 国 | 重要文化財(建造物) | 阿久沢家住宅 | 1970年 |
| 国 | 重要文化財(建造物) | 臨江閣 本館 (附 天皇東宮行幸啓関係資料-6冊) 別館 茶室 | 2018年 |
| 国 | 重要文化財(建造物) | 塩原家住宅 主屋 裏蔵 稲荷社 | 2019年 |
| 国 | 重要文化財(彫刻) | 鉄造 阿弥陀如来坐像 | 1928年 |
| 国 | 重要文化財(歴史資料) | 群馬県行政文書 | 2010年 |
| 国 | 重要文化財(考古資料) | 上野国山王廃寺 塔心柱根巻石 | 1953年 |
| 国 | 重要文化財(考古資料) | 土偶 | 1965年 |
| 県 | 史跡(その他の史跡) | 上泉郷蔵(附 上泉古文書) | 1951年 |
| 県 | 史跡(古墳) | 鏡手塚古墳 | 1949年 |
| 県 | 史跡(古墳) | 壇塚古墳 | 1951年 |
| 県 | 史跡(古墳) | 前橋天神山古墳 | 1970年 |
| 県 | 史跡(古墳) | 堀越古墳 | 1973年 |
| 県 | 史跡(古墳) | 荒砥富士山古墳 | 1997年 |
| 県 | 史跡(城館跡等) | 膳城跡 | 1949年 |
| 県 | 史跡(城館跡等) | 大胡城跡 | 1967年 |
| 県 | 史跡(墓所) | 力田遺愛碑 | 1950年 |
| 県 | 史跡(墓所) | 石田玄圭の墓 | 1951年 |
| 県 | 史跡(墓所) | 船津伝次平の墓 | 1951年 |
| 県 | 史跡(遺跡地) | 櫃石 | 1963年 |
| 県 | 名勝(瀑布・渓流) | 滝沢の不動滝 | 2009年 |
| 県 | 天然記念物(植物) | 時沢の夫婦マツ | 1952年 |
| 県 | 天然記念物(植物) | 月田のモチノキ | 1952年 |
| 県 | 天然記念物(植物) | 三夜沢赤城神社のたわらスギ | 1973年 |
| 県 | 重要文化財(古文書) | 飯塚家文書 同 | 2001年 |
| 県 | 重要文化財(工芸品) | 梵鐘 | 1955年 |
| 県 | 重要文化財(工芸品) | 横室の歌舞伎衣裳 | 1961年 |
| 県 | 重要文化財(工芸品) | 刀 銘備前國住長船五郎左右衛門尉清光作 | 1963年 |
| 県 | 重要文化財(工芸品) | 短刀 銘於東都藤枝英義造 | 1963年 |
| 県 | 重要文化財(工芸品) | なぎなた 銘於東武英義作之 | 1963年 |
| 県 | 重要文化財(工芸品) | 総社神社懸仏 | 1974年 |
| 県 | 重要文化財(工芸品) | 雲版 | 1976年 |
| 県 | 重要文化財(建造物) | 横沢の石塔婆 | 1967年 |
| 県 | 重要文化財(建造物) | 上野総社神社本殿 | 1963年 |
| 県 | 重要文化財(建造物) | 三夜沢赤城神社本殿内宮殿 | 1963年 |
| 県 | 重要文化財(建造物) | 三夜沢赤城神社本殿並びに中門 | 1973年 |
| 県 | 重要文化財(建造物) | 赤城神社惣門 | 1978年 |
| 県 | 重要文化財(建造物) | 産泰神社 本殿・幣殿・拝殿・神門及び 境内地 | 1994年 |
| 県 | 重要文化財(建造物) | 産泰神社 神楽殿及び 境内社金刀比羅宮拝殿 (附 棟札-8枚7組、工匠札-1枚) | 2023年 |
| 県 | 重要文化財(建造物) | 旧アメリカンボード宣教師館 | 1978年 |
| 県 | 重要文化財(建造物) | 旧蚕糸試験場事務棟 | 1981年 |
| 県 | 重要文化財(彫刻) | 十一面観世音像 | 1951年 |
| 県 | 重要文化財(彫刻) | 納曾利面 | 1969年 |
| 県 | 重要文化財(彫刻) | 木造十一面観音立像 | 2003年 |
| 県 | 重要文化財(書跡) | 三夜沢赤城神社の古文書 | 1973年 |
| 県 | 重要文化財(書跡) | 総社本上野国神名帳 | 1974年 |
| 県 | 重要文化財(書跡) | 前橋藩松平大和守家記録 | 2012年 |
| 県 | 重要文化財(歴史資料) | 元禄上野国絵図 | 2009年 |
| 県 | 重要文化財(考古資料) | 山王廃寺出土塑像群 (附 塑像群残欠一括3箱) | 2017年 |
| 県 | 重要無形民俗文化財(民俗芸能) | 下長磯あやつり式三番(附 人形-3個) | 1983年 |
| 県 | 重要無形民俗文化財(民俗芸能) | 春日神社太々神楽の蚕の舞 | 2024年 |
| 県 | 重要無形民俗文化財(風俗習慣) | 月田近戸神社の獅子舞 | 2002年 |
名称は群馬県「群馬の文化財」の表記による。「追加指定」などの注記は省いた。このほか、他の市と共有する国の史跡として上野国分寺跡(1926年)と女堀(1983年)がある。
市指定の半分は1970年代

市指定の243件を指定の年で分けると、1970年代が121件で49.8%にあたる。1980年代が49件、1990年代が35件と続き、2000年代以降は合わせて21件である。
国・県指定の62件(共有を含む)は、1950年代から1970年代にそれぞれ10〜11件ずつ指定されている。1920年代にも7件ある。
新しく指定される件数は、どちらも近年は少ない。
国・県指定の種類で最も多いのは重要文化財
県内12市の国・県指定を種類別に見ると、最も多いのは重要文化財で179件である。前橋市はそのうち25件を占める。
前橋市の60件を種類別に分けると、重要文化財が25件、史跡が19件である。
12市の合計に占める前橋の割合は14.4%である(当サイトが算出)。
県内12市の国・県指定文化財を、種類別にすべて並べる。
| 種類 | 前橋市 | 12市計 | 前橋の割合 |
|---|---|---|---|
| 重要文化財 | 25 | 179 | 14.0% |
| 史跡 | 19 | 114 | 16.7% |
| 天然記念物 | 5 | 57 | 8.8% |
| 重要文化財(国宝) | 7 | 48 | 14.6% |
| 重要無形民俗文化財 | 3 | 9 | 33.3% |
| 重要有形民俗文化財 | 0 | 5 | 0.0% |
| 名勝 | 1 | 4 | 25.0% |
| 重要無形文化財 | 0 | 0 | – |
単位は件。前橋の割合は前橋市÷12市計で、当サイトが算出した。出典は群馬県「群馬県統計年鑑」令和7年版 表22-19(令和6年12月末)。
この数字をどう読むか
ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。
件数は文化財の大きさを表さない
文化財の件数は、1件の規模や価値を表さない。古墳群を1件と数えることもあれば、仏像1体を1件と数えることもある。
件数の順位は、文化財が「豊かかどうか」ではなく「指定がいくつあるか」の比較である。
人口当たりが低いのは、県庁所在地だから
前橋は人口が多いので、人口当たりにすると件数が薄まる。人口の少ない渋川市や安中市が上位に来る。
観光の記事でも、入込客は実数で県内1位だが、人口当たりでは桐生に及ばなかった。人口の多さが1人当たりを薄める構図は、文化財も観光も同じである。
1970年代に何があったか
市指定が1970年代に集中している理由は、この一覧からは分からない。指定の制度や調査の進め方によって、ある時期にまとめて指定されることはある。
このデータの限界
- 人口10万人当たり・面積100km²当たりの件数と順位、割合は当サイトが算出した。公表値ではない。
- 県内の比較は統計年鑑の表22-19による。この表は市郡別で、町村ごとの値は取れないため、比較は12市に限った。
- 時点がそろっていない。表は令和6年12月末、国・県の一覧は令和7年9月26日現在、市の一覧は令和8年4月1日現在である。
- 統計年鑑の版によって順位が変わる。令和5年12月末の版では、前橋の国指定は19件、面積当たりの順位は2位だった。古墳がまとめて指定し直されたことなどによるとみられるが、表からは確定できない。
- 他の市と共有する国の史跡2件は、表の市の欄に含まれないため60件に入れていない。
- 文化財の件数は、1件の規模や価値を表さない。
- 国の登録有形文化財など、指定ではない「登録」の文化財は含めていない。
- 市指定が1970年代に集中している理由は、一覧からは分からない。
よくある誤解
「前橋は文化財が多い街だ」
国・県指定の件数は12市中2位ですが、人口10万人当たりでは8位です。人口が多いぶん、1人当たりでは少なく見えます。
「件数が多いほど文化財が豊かだ」
件数は指定の数であって、文化財の規模や価値を比べたものではありません。古墳群のように広い範囲を1件と数えるものもあります。
「前橋には国宝がある」
統計年鑑の表では、前橋の国宝は0件です。国の重要文化財は7件あります。
Q&A
文化財の一覧はどこで見られますか
国・県指定は群馬県の群馬の文化財、市指定は前橋市の市指定文化財一覧で見られます。本文の表に、前橋にある国・県指定の60件を載せています。
登録文化財は含まれていますか
含まれていません。この記事は国・県・市が「指定」した文化財だけを数えています。
次の更新はいつですか
群馬県統計年鑑は毎年発行されます。新しい版が出たら更新します。
前橋市の指定文化財は何件ありますか
国・県が指定した文化財が60件、市が指定した文化財が243件で、合わせて303件です。国・県指定の60件は群馬県の12市で2位ですが、人口10万人当たりでは18.06件で8位です。
前橋市に国宝はありますか
ありません。国指定の16件は、重要文化財7件、史跡7件、天然記念物2件です。県指定は44件で、重要文化財25件と史跡12件が多くなっています。
出典
- 群馬県「群馬県統計年鑑」令和7年版 表22-19 国・県指定文化財件数(令和6年12月末)
- 群馬県「群馬の文化財」国指定・県指定の一覧(令和7年9月26日現在)/群馬県
- 前橋市「市指定文化財一覧」(令和8年4月1日現在)/前橋市
- 総務省「国勢調査」令和2年(人口10万人当たりの分母)
データダウンロード
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| No | データ名 | 出典 | ダウンロード |
|---|---|---|---|
| 89 | 群馬県12市の国・県指定文化財と前橋市所在の文化財一覧 | 群馬県「群馬県統計年鑑」「群馬の文化財」、前橋市「市指定文化財一覧」 | CSVを保存 |
更新履歴
- 2026年9月23日 「国・県指定の種類で最も多いのは重要文化財」の節を追加
- 2026年9月23日 Q&Aと内部リンクを追加
- 2026年9月22日 公開
