車と交通費の記事で、前橋と東京の交通費の差の98.7%が自動車関係であることを示した。通勤・通学で自家用車を使う人は76.4%、鉄道は5.6%、乗合バスは1.3%だった。
この裏返しを見る。
前橋市の鉄道利用は1990年5.7%、2020年5.6%。30年でほとんど変わっていない。
減ったのは乗合バスだった。3.3%から1.3%へ、6割減である。
同じ期間に自家用車は61.0%から76.4%へ15.4ポイント増えた。
対象範囲
利用交通手段は総務省「国勢調査」による。1990年(統計表ID 0000031739)、2000年(0000033364)、2010年(0003063776)、2020年(0003454514)を使った。常住地による15歳以上の通勤・通学者の数値である。
複数回答のため、合計は100%を超える。電車とバスを乗り継ぐ人は両方に数えられる。
2015年の調査に利用交通手段の集計はない。この項目は10年ごとに調べられる。1990年は鉄道がJRとJR以外に分かれているため、合算した。
輸送人員は総務省「社会・人口統計体系」都道府県データ(統計表ID 0000010103)による。市区町村別は存在せず、群馬県の値である。
駅別の乗車人員は、この記事では扱わない。鉄道統計年報はe-Statにデータベース表がなく、JR東日本の公表ページは自動取得ができなかった。上毛電気鉄道の年度別輸送人員も、一次資料を確認できていない。
減ったのはバスだけ
鉄道とバスの30年を並べる。

鉄道は1990年5.7%、2000年5.7%、2010年5.4%、2020年5.6%。30年でほとんど動いていない。
乗合バスは3.3%から1.3%へ。6割減っている。1990年から2000年の10年で3.3%から2.0%へ落ち、その後も下がり続けた。
「公共交通が減った」という言い方をよく聞く。ただし前橋で減ったのはバスであって、鉄道ではない。
自家用車は30年で15.4ポイント増えた
増えた側を見る。

前橋市は61.0%から76.4%へ。全国は39.0%から49.5%へ。どちらも増えているが、前橋のほうが速い。
全国との差は1990年の22.0ポイントから2020年の26.9ポイントへ広がった。
県内5市を比べると、前橋76.4%は伊勢崎79.8%、桐生79.0%、太田77.2%より低く、高崎72.8%より高い。5市中4位である。
バスの利用率は前橋1.3%、高崎1.6%で、他の3市はいずれも0.6%。前橋は伊勢崎・太田・桐生の2.17倍にあたる。
県全体では、民鉄の差が最も大きい
輸送人員を人口で割って、全国と比べる。

群馬県はJR17.5回、民鉄7.4回、乗合バス6.3回。全国は66.7回、114.0回、32.3回である。
最も差が大きいのは民鉄で、群馬は全国の6.5%。JRは26.3%、バスは19.4%にとどまる。
全国の民鉄114.0回という数字は、首都圏と関西の私鉄網が押し上げている。群馬県内の民鉄は上毛電鉄、上信電鉄、わたらせ渓谷鉄道、東武鉄道などで、路線の密度が違う。
この数字をどう読むか
ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。
鉄道が減らなかったのはなぜか
30年で自家用車が15.4ポイント増えたのに、鉄道は0.1ポイントしか減っていない。
考えられるのは、鉄道を使う人と使わない人が、もともと分かれているということである。通勤先の記事で、前橋から東京へ通う人が1,234人・通勤者の0.9%であることを示した。県外へ通う人は2.9%にとどまる。
遠距離の通勤者は鉄道を使い、市内の移動は車を使う。この2つは代替関係にない。
ただしこの統計に通勤距離は含まれない。確かめられない。
バスが減ったことの意味
バスは3.3%から1.3%へ6割減った。鉄道と違って、車に置き換わりやすい。
バスは市内の近距離移動を担う。同じ区間を車で行けるなら、車のほうが速く、時間も選べる。
車と交通費の記事で、群馬の1世帯当たり自家用乗用車が1.558台で全国4位であることを示した。車が増えれば、バスの客は減る。
客が減れば便数が減り、便数が減ればさらに使われなくなる。ただしこの統計に便数や路線数は含まれない。因果の向きは確かめられない。
前橋のバス利用は、県内では高いほう
前橋のバス利用1.3%は、伊勢崎・太田・桐生の0.6%の2.17倍である。高崎1.6%に次いで2位。
前橋市はマイタクという乗合タクシーの制度を持つ。ただしその利用実績は市の公式サイトで数値表として公表されておらず、この記事では扱えなかった。
通勤流動の記事で、前橋の昼夜間人口比率104.0を示した。通勤で入ってくる人が多い市ほど、バス路線も維持されやすいと考えられる。ただし確かめてはいない。
高齢化とのつながり
高齢化率の記事で、2050年に39.7%になる推計を示した。高齢者の就業の記事では、70〜74歳の男性の44.0%が働いていることも見た。
運転できる人は車を使う。運転できなくなったとき、選択肢はバスかタクシーになる。
そのバスが30年で6割減った。この2つは同じ方向を向いていない。
ただし国勢調査の利用交通手段は通勤・通学者だけを対象にしている。通勤していない高齢者の移動は、この数字に含まれない。
このデータの限界
- 構成比、増減率、1人当たりの回数は当サイトが算出したものである。公表値ではない。
- 利用交通手段は複数回答のため、合計は100%を超える。
- 国勢調査の利用交通手段は通勤・通学者のみを対象としている。通勤していない人の移動は含まれない。
- 2015年の調査に利用交通手段の集計はない。この項目は10年ごとに調べられる。
- 1990年は鉄道がJRとJR以外に分かれているため合算した。2010年は16区分の表と9区分の表があり、他の年と比較できる9区分の表を使った。
- 輸送人員の市区町村別は存在しない。この記事の回数は群馬県の値で、県内で完結しない移動も含む。
- バスの輸送人員は2014年度からしか取れず、途中の年に前後と大きく異なる値があるため、増減の判断には使っていない。
- 駅別の乗車人員は扱っていない。鉄道統計年報はe-Statにデータベース表がなく、JR東日本の公表ページは自動取得ができなかった。
- マイタク(乗合タクシー)の利用実績は、市の公式サイトで数値表として公表されていない。
- バスの路線数、便数、廃止された路線は、この記事では扱っていない。
よくある誤解
「前橋は公共交通が減った」
減ったのはバスです。通勤・通学での利用率は3.3%から1.3%へ6割減りました。鉄道は5.7%から5.6%でほとんど変わっていません。
「群馬は車社会だから昔から鉄道を使わない」
1990年の時点で自家用車は61.0%で、全国39.0%を22.0ポイント上回っていました。ただしその後も増え続け、2020年には差が26.9ポイントに広がっています。
「前橋はバスが使われていない」
県内では高いほうです。前橋1.3%は高崎1.6%に次ぐ2位で、伊勢崎・太田・桐生の0.6%の2.17倍にあたります。
Q&A
前橋市内に駅はいくつありますか
19駅です。JR両毛線が新前橋・前橋・前橋大島・駒形、JR上越線が新前橋・群馬総社(新前橋は両線が停車)、上毛電鉄上毛線が中央前橋から膳まで14駅あります。駅数では上毛電鉄が全体の7割を占めます。
前橋駅の乗車人員は分かりますか
この記事では扱っていません。鉄道統計年報はe-Statにデータベース表がなく、JR東日本の公表ページは自動取得ができませんでした。最新の数値はJR東日本の各駅の乗車人員でご確認ください。
マイタクの利用実績は分かりますか
年度別の数値表は、市の公式サイトでは公表が確認できませんでした。制度の内容は前橋市のマイタクのページをご覧ください。
なぜ合計が100%を超えるのですか
国勢調査の利用交通手段は複数回答だからです。駅まで自転車で行き、電車に乗り、降りてから徒歩という人は3つに数えられます。
次の更新はいつですか
国勢調査の利用交通手段は10年ごとで、次回は令和12年(2030年)調査となります。輸送人員は毎年更新されます。
出典
- 総務省「国勢調査」1990年・2000年・2010年・2020年 利用交通手段(統計表ID 0000031739、0000033364、0003063776、0003454514)/e-Stat
- 総務省「社会・人口統計体系」C経済基盤 都道府県データ(統計表ID 0000010103)/e-Stat 地域統計
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| No | データ名 | 出典 | ダウンロード |
|---|---|---|---|
| 57 | 県内5市の利用交通手段と群馬県の輸送人員 1990〜2023年 | 総務省「国勢調査」「社会・人口統計体系」 | CSVを保存 |
更新履歴
- 2026年9月13日 公開
