前橋市の通勤先|東京へ通う人は0.9%だけ【2020年】

前橋から東京へ通っている人は、何人いるか。

答えは1,234人である。前橋に住む通勤者13万7千人のうち、0.9%にあたる。100人に1人もいない。

この記事では、国勢調査の市区町村間の通勤流動を使って、前橋がどこと結びついているかを見る。既存の通勤流動の記事では昼夜間人口比率と出入りの総量を扱った。ここではその内訳に入る。

前橋に住む通勤者のうち、前橋市内で働く人が66.6%、群馬県内の他市町村へ通う人が30.5%、県外へ通う人は2.9%。

県外の内訳は埼玉1,701人、東京1,234人。東京へ通う人は全体の0.9%にとどまる。

周辺自治体とはすべて受け入れ超過で、高崎市とは前橋が3,003人多く受け入れている。逆転するのは太田市だけ。

対象範囲

総務省統計局「令和2年国勢調査」従業地・通学地による人口・就業状態等集計による。2020年10月1日現在である。国勢調査は5年ごとで、次回の令和7年調査の従業地・通学地集計は2027年ごろの公表が見込まれる。

前橋から出ていく側は表6-2(従業・通学市区町村,男女別通勤者数)、前橋に入ってくる側は表4(男女,就業・通学,常住地別就業者・通学者数)から取った。前者は15歳以上の通勤者数、後者は15歳以上の就業者数である。

通勤者数には通学者を含まない。また、入ってくる側の数値は他市区町村に常住する人に限っており、前橋市内で自宅従業している15,693人は含まれない。

前橋の通勤圏は、群馬県内で閉じている

前橋市に常住する15歳以上の通勤者は141,573人。このうち従業地が判明しているのは137,163人である(総務省統計局「令和2年国勢調査」従業地・通学地集計 表6-2)。

その内訳は、前橋市内が91,290人(66.6%)、群馬県内の他市町村が41,898人(30.5%)、県外が3,975人(2.9%)である。

前橋市に住む通勤者137,163人の従業地内訳。前橋市内91,290人66.6%、群馬県内の他市町村41,898人30.5%、県外3,975人2.9%
前橋市に常住する通勤者の従業地内訳(2020年)
市内で働く 66.6% 県内の他市町村へは30.5%
県外へ通う 2.9% 東京へは0.9%(1,234人)
高崎市との差 +3,003人 前橋が多く受け入れている

県外3,975人の内訳は、埼玉県1,701人、東京都1,234人、栃木県362人、神奈川県180人と続く。東京都へ通う1,234人は、通勤者全体の0.9%である。そのうち特別区部が1,120人だった。

逆方向も見ておく。前橋市で従業する人のうち、県外に常住するのは3,498人。埼玉2,171人、栃木498人、東京304人である。東京から前橋へ通う人が304人いる。

前橋は東京通勤圏ではない。97%の通勤者が群馬県内で働いている。

周辺自治体とは、すべて受け入れ超過

県内の相手先を見ると、最大は高崎市の16,443人。次いで伊勢崎市9,364人、渋川市3,922人、太田市2,352人、玉村町2,082人と続く。

ただし、これは出ていく側だけの数字である。入ってくる側と並べると、様相が変わる。

前橋市と周辺自治体の双方向通勤流動。高崎市は流入19,446人・流出16,443人、太田市のみ流出2,352人が流入1,753人を上回る
前橋市と主要自治体の通勤流動(2020年)

高崎市からは19,446人が前橋へ通っており、前橋から高崎へ通う16,443人を上回る。差は3,003人の受け入れ超過である。

吉岡町は流入3,087人に対して流出1,107人で1,980人の受け入れ超過。渋川市は1,711人、榛東村は921人、玉村町は779人、伊勢崎市は742人の受け入れ超過だった。

主要な相手先で逆転しているのは太田市だけである。前橋から2,352人が通い、太田から1,753人が来ている。599人の送り出し超過になる。

この数字をどう読むか

ここから先は解釈である。事実は上に書いたとおりで、以下はこの数字を前橋の他のデータと重ねたときに何が言えるかという話になる。

東京の仕事を得るには、通うのではなく移るしかない

前橋から東京へ通っているのは1,234人、0.9%。通勤という選択肢は事実上存在しない。

これを人口社会増減の記事と重ねると、20代の転出の意味が変わる。前橋が失っているのは20〜24歳だけで、その最大の転出先は東京都特別区部だった。東京の仕事に就こうとすれば、前橋を出るしかない。通えないからである。

首都圏の周辺県ならこの選択は起きにくい。労働時間の記事で見たように、埼玉・千葉・神奈川は県内事業所での労働時間が短い。東京に通う人が多いためである。住む場所と働く場所を分けられる県と、分けられない県がある。前橋は後者にいる。

前橋は県内の受け皿であって、送り出し役ではない

周辺自治体とはすべて受け入れ超過だった。県庁所在地として、通勤先になっている。

通勤流動の記事で、前橋の昼夜間人口比率が104.0で、流入は高崎と同じだが流出が違うと示した。その中身がこれである。前橋は集めている。ただし集めている範囲が県内に限られている。

事業所数の記事で、前橋の民営事業所は高崎の1.1倍なのに求人は1.4倍だと示した。仕事の受け皿としての機能は数字に出ている。問題は、その受け皿が県内にしか届いていないことである。

太田市だけが逆転している

主要な相手先で唯一、前橋から出るほうが多いのが太田市である。599人の送り出し超過だった。

太田は県内最大の製造業集積地である。前橋と太田は約30キロ離れており、通勤圏としては遠い部類に入る。それでも2,352人が通っている。

有効求人倍率の記事で、前橋の新規求人に占める製造業が県平均の半分しかないことを示した。この2つを重ねると、製造業で働きたい人が前橋を出て太田へ向かう構図が見える。ただしこの調査に産業別の内訳はないため、太田へ通う2,352人が製造業に就いているかどうかは確認できない。

働き方の記事で、前橋のテレワーク実施率が11.4%で全国18.9%の0.60倍であることを示した。どこで働くかと、どう働くかは別の問題である。

このデータの限界

  • 2020年10月1日現在の数値である。新型コロナウイルスの流行下で実施された調査であり、在宅勤務が一時的に増えていた可能性がある。
  • 従業地・通学地が不詳の人が4,410人いる。この記事の割合は、判明している137,163人を分母としている。
  • 出ていく側(表6-2)は通勤者数、入ってくる側(表4)は就業者数で、集計の定義が異なる。厳密に同一の指標を比べているわけではない。
  • 入ってくる側の数値は他市区町村に常住する人に限っており、前橋市内で自宅従業する15,693人を含まない。
  • 産業別・職業別の内訳はない。どこへ通っているかは分かるが、何の仕事に就いているかは分からない。
  • 年齢別の内訳もない。20代がどこへ通っているかは、この表からは分からない。
  • 国勢調査は5年ごとである。次回の令和7年調査で同じ集計が出るのは2027年ごろになる。

よくある誤解

「前橋から新幹線で東京へ通う人が増えている」

2020年時点で東京都へ通勤しているのは1,234人、通勤者全体の0.9%である。高崎経由で新幹線通勤は可能だが、実際に選んでいる人はごく少数にとどまる。

「前橋は高崎に人を取られている」

通勤で見るかぎり逆である。高崎から前橋へ19,446人、前橋から高崎へ16,443人で、前橋が3,003人多く受け入れている。ただしこれは通勤の話であり、居住地の移動とは別である。

「通勤圏が狭いのは前橋の弱点だ」

弱点かどうかは評価による。通勤距離が短いことは時間の面では利点になる。ここで示したのは、東京の仕事に就くという選択肢が通勤では成立しない、という事実である。それをどう評価するかは別の話になる。

Q&A

通学者は含まれていますか

含まれていません。この記事で使ったのは15歳以上の通勤者と就業者の数値です。国勢調査には通学者だけを集計した表(表6-3)もありますが、今回は使っていません。

なぜ出ていく側と入ってくる側で表が違うのですか

国勢調査の従業地・通学地集計は、常住地を基準にした表と従業地を基準にした表が別々に用意されているためです。前橋に住む人の通勤先は表6-2、前橋で働く人の常住地は表4から取っています。定義が完全には一致しないため、この記事の「限界」の節に明記しました。

自宅で働いている人はどう扱われていますか

前橋市内で自宅従業している人は15,693人います。この記事の「入ってくる側」の数値には含めていません。「出ていく側」の前橋市内91,290人には、自宅従業者と自宅外で市内従業する人の両方が含まれます。

コロナの影響はどれくらいありますか

この調査だけでは切り分けられません。2020年10月は流行の第2波と第3波の間にあたり、在宅勤務が一定程度普及していた時期です。通勤先の回答が平常時と異なった可能性はありますが、その大きさを測る手段がありません。前回の平成27年調査と比べることで傾向は見えますが、それは別の記事で扱う予定です。

次の更新はいつですか

国勢調査は5年ごとです。令和7年(2025年)調査の従業地・通学地集計は、2027年ごろの公表が見込まれます。

出典

  • 総務省統計局「令和2年国勢調査」従業地・通学地による人口・就業状態等集計 表6-2(従業・通学市区町村,男女別通勤者数)、表4(男女,就業・通学,常住地別就業者・通学者数)/調査の結果

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(2020年)
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更新履歴

  • 2026年9月2日 公開